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卒業式の日に退学になってゴミ捨て場に投げ飛ばされちゃった。

「ザップ! 貴様は退学クビだ!」



烈火の如く怒り狂った校長先生が僕の顔に指を突き付けて叫ぶ。

思わず周囲に助けを求めるが、司祭様も教頭先生も担任も冷酷な目で僕を見下ろしていた。



「伝統ある我が学園がこんな低レベルな卒業生を出すわけには行かない!」

「こんなゴミ生徒を育てたなんて思われたら来季の文部省の補助金が降りなくなる!」

「この恥さらしが!」

「隣のクラスから出たゴミだけでも手に余るのに!」

「オマエはこの学園に最初から在籍していなかったことになる。」

「余計な事を喋るなよ!」

「2人もゴミが出るなんて、今年は外れ年だな!」

「危うく卒業名簿にこんなゴミを載せてしまうところだった。」



それどころか今まで仲良くしていたクラスメート達も僕をゴミでも見るような目で見下ろしていた。



「あーあ、同期にゴミが居たら俺の評価下がっちゃうよな」

「迷惑なのよねー、クラスの足引っ張る人って」

「俺、騎士団の試験受けるんだぜ? アイツの所為で減点されるかも!」

「私、あんな子と同じクラスだなんて恥ずかし過ぎるわ」



卒業式の日。

僕は長年通った学園を退学処分となった。

理由は簡単である。

卒業式で学園生が受ける【スキル授与の儀式】で僕が授かったスキルが最低のものだったからだ。



【5割引き】



それが僕が授かったスキルの名前。

司祭様に尋ねても、「そんなスキル名は聞いた事が無い」の一点張り。

図書館司書がスキル辞書を調べてくれたが、記録なし。



だが、前例が無くとも、このスキルが最悪のゴミスキルである事は誰の目にも明らかだった。

何故ならスキルの効果は。



【常時全ステータスが50%に半減するデバフが掛かる】



だからである。

聖なる大水晶にそう表示されているのだから間違いない。

遅れてステータスも表示されたが、それが酷いものであった。



---------------------------------------------


【ステータス】


名前:「ザコプット・ザグトベルト・ザレガノアス」


レベル1


HP  5 (10)

MP  3 (6)

腕力 3 (6)

魔力 2 (4) 

器用 5 (10)

知性 5 (10)

速度 4 (8)

幸運 6 (12)



スキル:5割引き


効果:常時全ステータスが50%に半減するデバフが掛かる

  このデバフは取得経験値や成長率、社会的評価にも適応される。


---------------------------------------------



()の中が本来の僕のステータスだ。

決して褒められた数字ではないが、中の下くらいの数値ではある。

僕の住む国、神聖コンキスタ王国の学校制度では卒業年齢は15歳。

卒業式の日に執り行われる、この【スキル授与の儀式】を受ける事により成人となる。


平均的な卒業生のステータスは10が目安。

全パラメーターが「10」だと、ザ・普通の人である。

卒業時に何かのパラメーターが「20」に達していると就職に有利だ。


腕力が高いと力仕事系の求人で優遇されるし、格式の高い職人工房では弟子入り条件が器用さ「20」以上であったりもする。

上の学校に進学したければ知性のパラメーターが最重要視される。



僕の現在のデバフ後パラメーターというのは、10歳くらいの低学年児童のパラメーターだ。

正直、社会人としての就業はほぼ不可能であろう。




「ザップ! 

最低のスキル!

最低のステータス!

貴様は我が校始まって以来の最低ゴミ生徒だ!


いや、生徒とすら認めん!

貴様は退学!

それも入学時から遡って退学だ!


貴様のようなクズの存在を文部省に知られてしまったら

我が校への補助金がそれこそ【5割引き】では済まないくらいに削減されてしまう!


貴様はクビ!!!

クビクビクビクビ!!!


出て行けー、この最低ゴミ無能が!!!」




『ちょ! ちょっと待ってくださいよ校長先生!

僕、イオルマートに就職が内定してるんです!

卒業証書が無いと内定が取り消されてしまうんですよ!』



「うるさーーーい!!

貴様みたいなゴミを送り出したら

来年から就職枠を減らされてしまうわ!!


体育教師!!

早くこのゴミをつまみ出せ!」



校長先生が叫ぶと、体育教師のゴリ先生に持ち上げられて学校の敷地から文字通り放り出されてしまった。



『ぐえ!』




級友達の冷淡な目線に晒されながら、僕は校門から投げ出されて、勢い余って土手から滑り落ち、転がり落ちてゴミ捨て場に頭から滑り込んだ。

今日がたまたま粗大ゴミの日で、たまたまソファーが捨てられていなければ、僕は確実に死んでいただろう。

現にHPが2しか残ってない。



「ザップ!

状況と特性を活かす事だけを考えて生き延びろ!

オマエの使い道を見い出してくれる仲間を見つけるんだ!」




ゴリ先生はそれだけ叫ぶと竹刀を持って校門の中に消えた。



状況を整理する。

僕はよりにもよって卒業式の日に退学処分を受けた。

恐らくイオルマートへの内定は取り消されるだろう。

何よりこの呪いの様なゴミスキル【5割引き】の効果で、ステータスが低学年児童程度まで低下してしまっている。

誰かに頼ろうにも唯一の肉親であった母さんは昨年過労死(勿論イオルマート勤務だった)している。

母さんの分の人頭税はまだ滞納中である。




最低だな。

考え得る最低の状況に陥ってしまった。



カネなし、職無し、親無し、能無し、学歴無し。



『人生詰んだ…』



この時はそう思っていたのだ。



まさかこのスキルが、悪質な呪いの様なこのスキルが。

最強のチートスキルだなんて思いもしないじゃないか…

【ステータス】


名前:「ザップ」(本名:ザコプット・ザグトベルト・ザレガノアス)


レベル1


HP  5 (10)

MP  3 (6)

腕力 3 (6)

魔力 2 (4) 

器用 5 (10)

知性 5 (10)

速度 4 (8)

幸運 6 (12)


スキル:5割引き


効果:常時全ステータスが50%に半減するデバフが掛かる

  このデバフは取得経験値や成長率、社会的評価にも適応される。



所持金:4000ウェン  

   亡母の人頭税を20万ウェン滞納中。



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