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8.白薔薇邸

 我ながら無意味な会話をした……。

 軽く後悔をしながら再度門を通り、建物の入口に立つ衛兵さんにも挨拶をした。


 ここは離れの邸宅だ。白薔薇邸と呼ばれているらしい。敷地内には本館である城以外にも騎士館や監視塔など多くの建物があるとか。プライベートを別にするために離れに居住スペースを設けているとのことだ。

 

 移動は空を飛べば楽だというのもあるみたいだけど……敷地が広大すぎて胸焼けがする。


 建物の中に入るとズラリと使用人の人たちが並んでいる。


 なんで……? ビビるんだけど。

 帰ったこと、分かっていたのかな。魔法の世界だしね。


「お帰りなさいませ、レイモンド様」

「ああ、変わりはない?」

「はい、そちらが……」

「アリス・バーネットだ。メイリア、ソフィ、よろしく頼む」

「はい。本日よりアリス様の身の回りのお世話をさせていただく、メイリアと申します」

「同じくソフィです。よろしくお願いします」

「あ、はい。お願いします」


 二人はメイドさんといった装いだけれど見た目はまるで違う。

 メイリアさんはお母さんと同じくらいの年齢に見える。紺色の髪を後ろで留めて落ち着いた雰囲気だ。ソフィさんは若くて可愛い。髪は薄い桃色で、ツインテールなので幼さを感じる。

 

 お母さんのような存在と友達のような存在を私につけておこうと思ってくれたのかもしれない。


 ……レイモンドが徳川十五代将軍を覚えてくれたせいで、彼の株が上がってしまった気がする。お願いしなきゃよかったなぁ。


「アリス、あとで一緒にご飯を食べようね」


 彼はにっこりと笑うと、スタスタといなくなってしまった。


 行っちゃうんだ……すごく不安なのに。


「それでは、アリス様。お部屋にご案内いたします」

「あ、はい。ありがとうございます、メイリアさん」

「あら、さんはいりませんよ。私たちは使用人ですから。呼び捨てにしてください」

「わ、分かりました。メ……メイリア?」

「はい」


 温かい笑顔で応じてもらって、少し安心する。


「ソ……ソフィ?」

「はい、ソフィです! 名前を呼んでもらえて嬉しいです」

「う、うん。ありがとう」


 話し方が難しいな……。

 えっと、使用人には普通で? でも友達みたいには駄目だよね。レイモンドはどうしていたかな……なんか偉そうだった気も……。


 階段を上り、アーチ状になった天井が続いていく廊下を歩いていく。

 やっぱりどこもかしこもリッチだ……。


「あの、私は話し方とかどうしたらいいんでしょうか」

「私たちより上の立場ですから、楽にお話しください」

「う……うん……」


 くすりと二人が笑う。


「いずれレイモンド様の奥方となるのでしょうし、そのような話し方を意識されてもよろしいかもしれませんね」

「ど、どんな感じかな」

「そうですね……このような時は『ええ、そうさせていただくわ』といったふうでしょうか」


 どこの貴族だ!

 いや……貴族だけど……。

 奥方かぁー。そう思われているんだ、やっぱり。突然来た女の子をそんな扱いするのって、嫌じゃないのかな。


「頑張って意識する……けど、たまに練習に付き合ってほしいかな」

「ええ、もちろんです。いつでもおっしゃってください。ただ、私たちの前で無理はされなくても結構ですよ」


 ひとまずここで暮らすのなら慣れなくては仕方がない……けど、そう言ってくれるなら、二人の前では無理しなくてもいっか。


 話しているうちに部屋へ着いたようだ。二人が止まったので私も足を止める。


「こちらが、アリス様の部屋となります」


 そうして、私はやっとこの世界での帰る場所……自分の部屋へと足を踏み入れた。

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(2023.10.27より)

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