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69.王子様たちと1

「それでは、ごゆっくりお過ごしください」

「ああ、ありがとう」


 緊張しながら、レイモンドと一緒に応接室に入る。


 こ、これが王子様……!

 聞いていた通り三人……!

 と、あれ?

 女性もいる?


 レイモンドが慣れた様子で彼らに話しかける。

 

「久しぶり、元気そうだね。ジェニファー様もお久しぶりです。まずは彼女を紹介させてもらうよ。アリス・バーネット、僕の大事な人だ」


 あ、一人称が僕になった。


「本日はお招きいただき、ありがとうございます。お目にかかれて光栄ですわ」


 ドレスの裾を持ち、腰を落として礼をする。

 うん……ここまでキラキラした場所だと、あんまりこの口調も違和感がないな。

 

「よく来てくれた。私はダニエル・ロマニカ。誕生日だと聞いている。そのような日に呼んですまないが……共に祝えることを感謝したい。贈り物も用意してある。あとで受け取ってほしい」

「ありがとうございます。とても嬉しいですわ」


 ガタイがいい……!

 同い年だよね?

 前の世界でいう中二だよね?

 深い緑の髪と瞳で、テンパだ。少し髪がうねっている。どちらかといえば……第二王子の方が王子様っぽいなぁ。


「僕はフランシスだよ。兄上、そんなに畏まっていては彼女も緊張してしまうよ。いつもは本当に軽く雑談しているだけなんだ。気楽に話して?」

「……お気遣いありがとうございます」

「誕生日おめでとう。記念すべき日にお会いできて嬉しいよ。今日は楽しんでいってね」


 金髪碧眼の第二王子が側に寄ってくる。


 めちゃくちゃ美男子だな……レイモンドとは少し種類が違う。華奢だけど優美で麗しいって感じ。


 二つ年下って話だから、もしかしたら学園でも後輩として入って会うのかもしれない。

 今は私たちより背が低いけど、その頃にはどうだろう。レイモンドと同じ金髪でサラサラしているし、後ろからだと見分けがつくかな。フランシス様の方がやや長いし、今の髪型をせめて両者には維持していただきたい。


「あれ? もしかしてお兄様に見惚れちゃってる? どうするの、レイモンド。アリス嬢、とられちゃうんじゃない?」


 あー……えっと、第三王子は第二王子の三つ下だから……前の世界の小学三年生……うん、王子といえど、ガキだよね。

 仕方ない仕方ない。ウザいけど。


「王子が珍しいだけでしょ。うるさいよ、エド」


 あれ、不機嫌な声……見惚れていたなんて思っていないよね、レイモンド。確かにフランシス様の顔は綺麗だけど、お子様でしょ。

 

「そうかなぁ。僕はエドワルドだ、よろしくね」

「はい、よろしくお願いしますわ」

「十四歳になるって聞いたよ。結婚できる年齢だね。意識はするの?」

「どうでしょう。レイモンド様が十六歳になられましたら、意識するかもしれませんわね」


 ガキ相手は疲れる……。

 帰りたい……。


 ダニエル様が咳払いをして、私を真っ直ぐに見る。威圧感がすごいな……あっちの世界なら運動部の部長とかやってそう。


「今日は私の婚約者も連れてきた。話したいと言っていたからな」


 第一王子と微妙な関係の婚約者だったのか!

 もう会うとは!


 鮮やかなコバルトブルーの長い髪を揺らし、美しくも勝ち気そうなご令嬢が私の前へとやってきた。


「ダニエル様の婚約者、ジェニファー・メイシスですわ。学園でお会いするのならと、無理を言って私もご挨拶にまいりましたの」

「お会いできて光栄です。同じ学園で学べるよう、努力いたしますわ」

「努力……ね。不躾で申し訳ないけれど、こちらに手をかざしていただける? 私、目の前で見ないことには信じられませんの」


 ううん……話し方がほんまもんのご令嬢だ! 私の付け焼刃とは段違いだ。レイモンドが公爵令嬢だって前に言っていたけど、同い年にはとても思えないな……。というか名前くらい聞いておけばよかった。


「では……失礼しますわ」


 彼女の左手の薬指にあるのは婚約指輪なのかなと思いながら、両手の中に置かれた魔道具らしきものに手をかざす。五芒星の各先端に魔石のようなものが嵌め込まれている。

 たぶんこれも……神の加護を測る何かなんだよね。


 当然のように、五色の色が部屋中に眩く光る。

 

 うん……二回目だから予想していた。


 彼女がすぐに蓋を閉じ、光が消滅する。

 まだ近くにいたフランシス様に手をとられた。


「すごい……アリス嬢、君は神に愛されているんだね」


 優美な男子……見惚れる女子もワンサカいるんだろうな。そんなことが多いから、エドワルド様がチャチャを入れてきたのかもしれない。

 エドワルド様は髪の色もくせっ毛なところもダニエル様に似ているけれど、性格は百八十度違いそうだ。


「自分では……分かりませんわ」

「フラン、僕のアリスに触らないでくれる?」


 あー、レイモンドが不機嫌だー。


「強い神のご加護……記憶喪失で魔女様に拾われたとお聞きしましたわ。たったこれだけの期間でレイモンド様をお好きになるのかしら。まだ婚約者の決まっていないフランシス様に惹かれてはいませんこと? 魔女様に拾われてその才能……貴族でなくとも、誰に文句も言われませんものね」


 知らんがな!

 それに、こんなガキに一瞬で惚れないでしょ!


 ……違うか。

 これは趣味の悪い挑発だ。


 私の性格を探られているに違いない。不愉快なことを言われた時に苛立ちを表に出すのか、おろおろして固まってしまうのか、レイモンドに助けを求めるのか。

 ああ……レイモンドとの仲も探られているのかな。助けを求めるのなら、どう私が振る舞うのか。


 気付くのが少し遅かったな……。


 仕方ない。弟を思い出すようなエドワルド様のお陰で、緊張も多少ほぐれてきた。


 レイモンドのご両親もここにたびたび召喚される……つまり私は、学園を卒業した後もこの人たちと長い付き合いになるってことだ。狼狽えるところなんて絶対に見せたくない。

 

 うん……自分からドツボにはまるとしましょうか!

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(2023.10.27より)

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