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61.カフェ

 数段の階段を上って、レンガ造りのオシャレなカフェの中に入る。


 適当にどこかで食べようと言ったわりには、真っ直ぐここに向かっていたよね……。

 たぶん、お店は決めていたんだと思う。私が「ここ、いいなー」なんて他の店に対して言ったら、そっちにする気だったに違いない。


 中にはお客さんが何人かいて、貸し切っていなかったことにほっとする。


「いらっしゃいませ。二階へお上がりくださいませ」

「ありがとう」


 いや……席の予約はしていたのかな……そんな雰囲気だ。寄らなかったら、お金だけあとで多めに渡そうと思っていたのかもしれない。これからは、寄り道したい時には予約している場所がないか確認することにしよう……。


「奥にしよっか」

「う、うん」


 全部、横の通路はつながっているけれど個室だ。絶対下見までしていると思う。

 でも、予約済みとかは書かれていないなぁ。店員さんが把握していて、一箇所は空けておく予定だったのかな。

 分かんないなぁ……。


「ま、待って、レイモンド」

「何?」

「なんで私の横に座ったの。普通は真向かいだよね」

「近い方がいいじゃん」

「店の人、変な二人って思うんじゃない?」

「どうでもいいよ、そんなの。メニューも一緒に見やすいし。どれがいい?」


 あーもう、近い!


 この世界に来て一ヶ月が近づいているわけだし、もうすぐキスされるのかなっていうのもあってドキドキするんだよね。……個室だし。


 適当に話をして意識を散らそう。


「ここって、全体的にヨーロッパっぽいよね」

「はは、そうだよね。なんでだろうね。俺としては和も入れたいんだけどなー」


 ……だから五平餅?


 私の目の前にメニュー表を置いて、次のページをめくるのを待っているレイモンドに、なんだかくすぐったい気持ちになる。


 家族で外食に行く時は、まずは光樹が食べられるものをお母さんが探すのが常だった。

 一番最初に選べるなんて……すごく大事な女の子扱いされている感じ。


「メニューの内容はなんとなく分かって安心した」


 ……言葉は変換されているんだろうけど。


「冒険してもいいよ。食べられなかったら、またすぐに頼めばいいよ」


 う〜ん……正体不明の単語もある。イナゴみたいな昆虫系だと嫌だし、やめよう。どうせ全部美味しいしと、出される料理の食材について意識はしてこなかった。これからは分からない食材が食卓に出たら聞いてみよう。


「んー……と、夏野菜のボロネーゼにする」

「はは、無難なのに決めたね。俺はキッシュにしようかな。キノコなら食べたことないのでも冒険しやすいよね。五種のキノコのキッシュにする? 他に食べてみたいのはある?」


 取り分け前提だ……。レイモンドが食べたいのにすればいいのに。

 男の子とデートなんてしたことがないし、女の子扱いされると、むずむずする!


 私ばっかり世話を焼かれているよね。レイモンドは世話を焼く必要なんてないくらいにしっかりしているし……。

 

 さっきの土偶レイモンドくらいに小さかったら、私も多少は世話を焼く側にもなれそうなのに。いや……小さいだけなら、いつものレイモンドか。ただの便利アイテムになっちゃいそう。手乗りレイモンドとか……ややウザそうだけど、ものすごく便利だよね。


「アリス? あれ、アリス?」


 小さかったら、ドキドキしないで魔法の家庭教師もしてもらえそうだし。魔法世界なんだから、いっそ分裂できればいいのに。


「アリスー、おーい」

「あ、ごめん。うん、キノコも食べてみたい」

「じゃ、そうするよ。先にデザートも決めておこう。どれがいい?」

「うーんと……」


 デザートも多いなぁ……。

 ペラペラとページをめくる。


「ね、さっきは何を考えていたの。トリップしていたよね」

「んー? 小さくなったレイモンドについて考えてた。手乗りできるくらいの」

「なんで!?」

「土偶レイモンドを作ったからじゃない?」


 適当に返しながら、デザートの一覧に驚く。


 ラハニノス名物デザートとして、五平餅やらおはぎやら、みたらし団子やらがある……! これ、絶対にレイモンドのせいだ!


 オルザベル家によるメニュー開発……所有する飲食店「オリンピアーノ」による監修って書いてあるし……レイモンド、十分に和を入れてるじゃん!


「手乗りアリス……すごくいい響きだよね」


 あれ。レイモンドが妄想を始めてる。

 小さくなった私……それ、男子的にはエロ妄想になるんじゃ!?


「ち……小さい私をどうするの……?」


 恐る恐る聞いてみる。


「実際に小さくはできないからね。手乗りアリス人形に可愛い服を着せて飾っておきたいよね」


 ………………。

 思考がそっち寄りだ。


「デザートはお腹いっぱいになって食べられないと困るし、さらっとレモンプティングタルトにする」

「そうだね、足りなかったら追加しよう。俺はフルーツの盛り合わせにするよ。好きなフルーツがあったら、食卓に多く出してもらうようにするから教えてね。まだ食べたことがないのもあるかもしれないし。じゃ、呼ぶね」


 本当に私のことばっかりだな……。


 せめて、レイモンドがいない時にちゃんと立ち振る舞えるように観察はしておこう。


 店員さんには飲み物を頼むかも聞かれたので、全てをレイモンドに任せた。

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(2023.10.27より)

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