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40.指輪の打診

「美味しい!」


 レイモンドの私室のバルコニーで、もぐもぐと昼食を頬張る。疲れているだろうし、ここで食べようと誘われて広々とした庭園や青空を眺めながらのくつろぎランチだ。


 メニューはサンドイッチ。疲れた私のためにレイモンドがそうしてくれと頼んだらしい。いつもとは違って、レイモンドと完全に二人きりのご飯なのでマナーもあまり気にしない。


 野菜も美味しい!

 お肉も美味しい!

 しかも、フルーツと生クリームが挟んであるサンドイッチまである!


「こっちにもあるんだね〜、フルーツサンド!」

「ないよ、君の世界を覗き見して俺が頼んだ。アリス、美味しそうに食べていたもんね」

「……そうなんだ」


 覗き見しすぎでしょと言いたいけど、もう知っているのが当たり前って気分になってきた。


「ね、こっちでもサンドイッチはサンドイッチ伯爵さんが作ったの?」

「そうなんだよ。実はそこだけ変換もなくサンドイッチって名前なんだ。たまたまこっちの世界にもサンドイッチ伯爵が現れたから、神が天啓でも与えたんじゃない? よぉし天啓だ天啓だーって」

「どんな神だ……」

「きっと暇だったんだよ」


 最初に持ってきてもらったフルーツジュースがなくなると、違うグラスにレイモンドが水と氷を魔法で入れた。


「蜂蜜とレモンも入れる?」

「うん」


 蜂蜜を瓶からトロトロと入れて、レモンも絞って……。


 なんか……尽くされすぎてない?


「だんだんと、すごく甘やかされている気になってきたんだけど」

「そりゃそうだよね。俺、甘やかすためにアリスをこの世界に喚んだし」

「……だから全然突っ込んでくれないんだ。そんなの自分でやれよって言いたくなること、めちゃくちゃ私言ってる自覚はあるんだけど」

「ええ……? そんなこと思ったことがないな。自覚なんて持たなくていいよ」

「でも、このままだと私、全然成長できないんじゃ……」

「ここに来て三日で何言ってるんだよ。もう少し遊んでからでいいじゃん。これからのことを考えるのなんてさ」


 あー……本当に甘やかされている。

 でも今日は色々あって疲れたし、食べたら眠くなってきたなぁ。


「ねぇ……考えてほしいことがあるんだ」

「う、うん」


 いきなり少し、レイモンドが真面目そうな顔つきになった。


「王立魔法学園に行くとなれば、ここからは通えない。どうしてもあっちの寮に入ることになる」

「そ……うだよね」

「気軽に部屋にも行けない」

「うん」


 そう考えると、今から不安だな。


「お願いをすれば、相手の位置を光で教えてくれる指輪があるんだ。声も届けられる。声だけの召喚みたいなものだ。使うと魔力を込め直さないといけないから気軽には使えないけど。ああ……魔力って言っても神への手順を踏んだ依頼みたいなものだけどね」


 召喚って禁忌なんじゃ……。あ、それは異世界からか。そういえば王宮にも年に数回召喚されるんだっけ。


「助けがほしい時に呼んでくれれば、いつでも行ける。そんな時なんてないと思うけど……君は可愛いから、他の男に襲われることがないとは言えないし……」


 ないでしょ。

 そもそも私が魔法の扱いを覚えれば私に勝てる人、いなくなるんじゃないの?


 でも……レイモンドの位置を知ろうと思えば知れるだけで心強いかな……。いや、光でってことは、探していることが周りの人にモロバレじゃない?


 ただ、あるにはあった方がよさそうな指輪ではあるかな。


「ただ……それをつけると婚約しているも同然だと周りに思われる」


 ……今も思われていると思うけど。


「で、値段は屋敷一軒分くらい」

「絶対いらない。重い。怖い」

「もしくは、タダ」

「どっちなの!」

「技術も時間も希少な材料も必要だから高価でね……。俺の母親が学園の卒業制作でつくったんだよ。失敗した場合に備えて二セットね。両親は今もはめている。結婚指輪との重ねづけ」

「ああ〜」

「もう一セットは大事にとってあって、それを婚約指輪として俺にいい人ができたらあげたいなーっていうのが、あの人の夢」

「……ああ〜……」

「はめている間は人体の一部みたいになるから指のサイズも問題ないし、心から願えば普通に外れる」

「じ、人体の一部……こわ」

「イメージとしては指に根を張る感じかな。見た目はただの指輪だよ」


 根って……大地の魔法あたりが絡んでいるのかな。


「俺は君につけてもらって、少しでも安心したい。でも……無理にとは言わないよ。入学までに考えておいてくれるかな。在学中にその気になったらでもいい」

「……分かった」


 受け入れたら結婚は既定路線だよね……母親のだもんね……しかも普通に買うなら屋敷一軒分……よっぽどじゃないと、もらえないな。


 入学直前までは忘れようと決めて、残りのフルーツサンドを平らげた。

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X(旧Twitter)∶ @harukaze_yuri
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