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悪戯令嬢、溺愛してくる怪物王弟と宝探しに夢中です  作者: 平坂 はるか
第二章 ロンダン王国
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10話 永久機関


砂漠と太陽の国、ロンダン王国。

そこには世にも奇妙な見た目の甘い果物や動物達が混在しているという。


そんなロンダン王国の王子から夜会の招待状が届いた理由は三か月前に遡る。




「あ~、行きたいなぁ」


子供の様に足をパタパタさせて私、シンディーは机に突っ伏した。

レイにロンダン王国の話をしたら、あえなく却下されてしまった。


ただ彼は三か月は帰って来ないわけで、その間に出国してしまえばと思っていたのだが……。


ちらりと後ろを見ると、キクチヨはと目が合った。


「何か入用でしょうか?」

「ナニモナイヨ」


レイの侍従、キクチヨは色々と凄まじい。

私がトイレや風呂を装って王宮脱出を目論んでもいつの間にか後ろに居て、平然と話しかけてくる。


さっきなどカーテンに掴まって窓から飛び降りようとしたら、いつの間にかロープで壁を降りてきたキクチヨに腰にロープを巻き付けられ、安全に降ろされてしまった。


「どんな育ち方をしたらそんな風になれるの?」

「…………あまり知らない方がいいかと存じます。私はこの国でいう暗殺家業の人間です、まともな育ち方はしていないので」


キクチヨはそれ以上話してくれないし、あまり人の聞かれたくない話を根掘り葉掘り聞く趣味も無いため私も適当に相槌を打って返す。


私はじっと賢王ローレンスの日記を見つめた。


「答えはロンダン王国にあるのに行けないなんて……」

「よければレイモンド様が戻られましたら私が彼の国へ行きます。私ならそうそう死ぬことはありませんし」


確かにそうかもしれない。


「でも自分の目で見て、体験したいの」

「そうですか」


キクチヨは私の命とレイに関すること以外感情が見えない。

私の命に関してもただ単にレイが私を……その…………好き、だから大事にしてくれるわけで……。


頭の中で昨日の夜、囁かれた言葉が蘇った。


『シンディー愛してる』


カァッと顔が熱くなり、私は思わず両手で顔を覆った。

あれは間違いなく友人に接する感じではない。

どう考えてもレイは私のことを本気で好きらしい。


ただ、私は……。


「レイの力って思ったよりも厄介ね」


もう妻なのだからレイの気持ちにも応えてあげたい。

でも嘘を吐けば瞬時にばれてしまうだろう。

それが嫌で私はレイに思ったことをそのまま口にしている。


独り言や妙な行動をしてもキクチヨは黙って後ろで待機していた。

そのことが急に恥ずかしくなり、私は立ち上がった。


「どこへ行かれるのですか?」

「…………レイには黙っていて欲しいんだけど……ハワード殿下の所に……」

「お供します、それとレイモンド様には包み隠さず全てをお伝えするのであしからず」

「……はい」




部屋に入るなり、ハワード殿下は私を睨みつけた。


「シンディー!願いを叶えたら僕に協力すると言っただろう⁉」

「あ!そうでした‼殿下、本を出版してはどうでしょうか?」

「ハァ⁉」


呆ける殿下を他所に私は暖炉に近づき、薪をくべた。

炎が一段と強くなり、私の炎を照らしていく。


「殿下、人の噂とはこの火の様な物です。一度着火された火に殿下逃げ隠れして弱みという薪をくべれば燃え盛るのは確実。ならば手段は二つ、鎮火するまで待つか、その炎を有効利用するか」


「???言っている意味がよく分からない。本を出版しようとそれは弱みを晒しているのと大差無いのではないか?」


私はゆっくりと首を振った。


「まったく違います。人に暴かれれば恥、己でさらけ出せばそれを人は特徴と捉えます。


殿下が本を出版し、そこに悔いていること、これからの展望などを記し、収益は全て孤児院などに寄付すればこれ以上殿下を笑い者にする者こそ指さされることになります。


人は頑張って前を向いている人間を応援したくなるものです。出来れば冒険活劇などを書いている作家に聞きながら書いた方がいいかもしれません」


「……そんなにうまくいくだろうか?」


「ふふ、それは殿下の文才と情報統制の仕方、民に紛れ込ませた密偵達の手腕にかかっていると思いますよ?例え始めは批判的であっても一度殿下を肯定する流れさえつかんでしまえばこっちのものです」


「……シンディー、君を手放したことを今深く後悔しているよ」

「お褒めにあずかり光栄です」


私はハワード殿下に恭しくカーテシーをして、じっと暖炉の炎を見つめた。


「それはそうと殿下、またあの脱出口を見せてもらえませんか?」

「??まぁ、かまわないが……」


私は殿下の許可を得て、もう一度本棚の横にある箇所を押し、下に降りた。

そこには一面見事な星空が広がっていた。

触れてみると確かに石の天井があるだけなのに、吸い込まれそうなほどに美しい星々が煌めいている。


「やっぱりこれ、魔法で出来ている……」


約200年前、魔法は終えたといわれている。

その理由は魔力を持つものが居なくなったから。

魔法も暖炉の火と同様に、燃料となる魔力が必要なのだ。


魔力を持つものは生まれにくく、そのため徐々に減少し、200年前に最後の魔導士が亡くなったと記載があった。


この天井の魔法が例え、最後の魔導士がかけた物だったとしても200年間は発動し続けていることになる。


そんなこと、ありえるの??

200年間誰の手も借りずに発動し続ける魔法。

いわばそれは一昔前の人間達が夢見た永久機関ともいえる。


キクチヨからランプを受け取り、私は隈なく天井を探していった。

すると天井の端のところに刻まれ青白く光る魔法陣を見つけた。

1000年前の治癒の力を探すに当たって、私は魔法陣の勉強もかなりしている。


だからこそ、分かる。


「すごい……‼」

「何がすごいのでしょうか?」

「ひゃぁあ‼」


思わず独り言を漏らすと、隣にはキクチヨがピッタリとくっついてきていた。

相変わらず、人形のようで気配が無い。


私は気を取り直して咳払いをし、魔法陣を指さした。


「この魔法陣、空気中の魔力を吸い上げて動いているの。だからかけた人の魔力が切れた今でも動き続けている…………この方法なら、もしかすると現代でも魔法が使えるかもしれない‼‼」


私は大興奮なのだが、キクチヨはさして興味が無いらしく平然とそうですかとだけ返してきた。


私はすぐさま魔法陣を描き留め、この時から魔法陣の研究が始まった。

現代に魔法を蘇えさせればすごいことだし、とても需要はある‼

それになによりこの技術をロンダン王国に示せれば、確実に一度会いたいと言ってくるはず‼‼


と、いうわけで始まった私の研究だったが難航していた。


まず同じように魔法陣は描けても作動しない。

恐らく初めに作動する燃料となる魔力が無いからだった。


そこで発見したのが木の栽培方法である接ぎ木の応用。


つまり、星空の魔法から魔力を分けてもらうということ。

ほぼ毎日睡眠時間4時間程をキープしながら約三か月、レイが戻るまでにそれはなんとか完成し、私はロンダン王国の王子へと手紙を贈った。


手紙を開いた瞬間に花が出現する魔法陣を描き添えて。


そして指輪に花の香りを出し続ける魔法陣を刻み、それを種火として魔法を使うことが出来るようにした。


こうして私は無事にロンダン王国への切符を手にしたのだった。


面白い!続きが気になる!と思っていただけたらやる気につながるためブックマークや評価をお願いします‼<(_ _)>


既にしていただいた方、ありがとうございます‼



すみません。基本週1のつもりだったのですが予想以上に私生活が忙しいため9月中の更新は不可能と判断しました。

ブックマークをつけていただいている14名の方々、もし楽しみにしていただいていたら本当に申し訳ないです。

次回、10月1日に更新します。

そこからはなるべく週1にしたい!といったところです。

よろしくお願い致します。


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