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僕が創り、彼女が解く  作者: 二壱七
9/9

2,協力プレイ

 「無事に見つけられたようね」

 

 「おかげさまで」


 僕はコーヒーの入ったコップを片手に、彼女の向かいの椅子に向かう。

 結局あの部屋の閉じ方?は分からなかったから、そのままにしてしまった。まぁほとんど人が来ないところだし大丈夫だろう。

 

 「あの部屋、監視部屋みたいでしたね。わざわざあれを見せるためにこんな回りくどいことを?」


 僕は手に持ったコップを少し持ち上げてアピールする。

 

 「お気に召さなかった?これは私からあなたへのアピールよ。この図書館のことはあなたよりも知っているということのね」


 彼女も手元のコップを持ち上げて応じ、そのまま口元へもっていった。少し顔を背けて横顔が見える形で一口こくんと飲んだ。

 なんか飲み方が色っぽいなぁ……。そのまま舌をペロリとやってくれれば完璧なんだがなぁ……。おっとっといかんいかん、こんなことを考えている場合ではない。


 「ええ、そうでしょうね。参りました。今ではあんな問題を出したことが恥ずかしいですよ」


 いくら問題を創るのに不慣れで、かつ一問目だったとはいえ浅はかだったかもしれない。反省。次はきっとうまくやる。


 「分かればいいのよ。それにあなたが知らないことはまだまだある」


 それはそうだろうとも。そのギャップを埋めるために、ひいては彼女をまた研究に協力させるヒントを得るために、今こうして頑張っているのだ。1,000万がかかっていることだし。

 

 「それはそうでしょう。結局あの場所って何なんです?ここが独房だったころの名残に見えましたけど」


 あの本棚の隠し扉の先。監視カメラが沢山あった。彼女が普段使いしているのだろうコーヒーメーカーや簡易ベッドなんかもあった。ベッドメイキングはされていたが。

 あの部屋はどうみても今でも普通に使われている場所だ。目の前の人物に。あそこで寝泊まりしている可能性は十分にある。

 昨夜を思い返してみると、深夜ふと目を覚ました時彼女はいなかった。そりゃいなくて当然だが、毎日ここに来るなら近くに寝床があった方が効率的だ。


 「残念だけれど、私の答えを教えることはできない。そうだわ、自分なりに答えを出してみて、私に今日の問題として出してみるのも面白いんじゃない?」


 彼女は全く残念そうに思っていないすまし顔でそう言った。あくまでも勝手にすれば?という空気を醸し出している。だが。彼女がした目配せを僕は見逃さなかった。

 ははーんなるほど。ここにもっていくためにこんな回りくどいことをしたのか。


 つまり、彼女は自己開示したいのだ、と思う。自分から自分のことは言えない立場にあるから、何とかしてヒントを出して、自分のことを知ってほしい。

 自分は何も言っていない、僕が勝手に調べて結論を出しただけ、自分の責任ではない、これはあくまでもそういうゲーム、そういうような立場を取りたいのだ。

 

 そういうことなら乗ってあげよう。僕は彼女のことが知りたい。彼女は自分のことを話したい。両者の希望は一致している。ただそれが堂々とできないだけで。ゲームという建前を利用してやろうじゃないか。


 「分かりました。ええ、万事。任せてください」

  

 彼女の瞳がキラリと光ったように感じた。それがどういう意味なのかは分からないけれど。 

 

 ……あれ、そういえば、彼女と見を合わせたのはこれが初めてかもしれない。そう思いたった。


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