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僕が創り、彼女が解く  作者: 二壱七
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1,回答

 「答えは収容所。あなたの想定しているものが囚人なのか捕虜なのかは分らないけれど、人を閉じ込めておく場所」


 彼女は続ける。


 「まず第一に、私はこの答えを導く情報を既に持っていると言われている。だから私とあなたの共有情報を確認する必要があった」 


 「それが第一の質問ですね。僕が生徒か。つまりこの建物のルールを知っているか」


 「そう。あなたがちゃんと知っているかどうか確認した。このルールは大学図書館において一般的かどうか怪しい部分。研究の情報を外に出さないため、とか、安易に情報を公開して人がたくさん来るのを避けるため、などなど、もっともらしい理屈をつけようと思えばいくらでも付けられてしまう」


 彼女は段々と早口になってきた。思ったより話をするのが好きなタイプかもしれない。

 

 「あなたはこう考えた。あのルールは、もっと大事な理由があってつけられたルールなのではないかと。つまり、この建物がその昔秘密裏に建設され、ひっそりと役目を図書館に変えた、元々人を閉じ込める場所だったのではないか。そのことに気づかれないように、また気づかれたとしても外に情報を流されないようにルールを設けている。厳しい罰則もあることだし、気づいた人がいたとしても、なかなか外には出てこない」


 「そうです。この建物にはそれ以外にも過去を匂わせる要素が多い」


 「この建物は1940年代前半に建築された。第二次世界大戦の終結は1945年。当時日本は戦争中。捕虜の収容所も持っていた。極秘で創られた収容場や実験施設があったとしても不思議じゃない。そう考えた」


 「正解です」


 「この建物の構造にはおかしな点が多い。学術書を扱う棟とそれ以外の棟で二つに分かれていて、大きな中庭がある。奥に進んでいくと、上がったり下がったり、迷路のようになっていたり、今自分がどこにいるのか分かりにくくなる。普通の図書館ならわざわざこんな建築にする必要はない。それなら、もともとこんな構造で作られる目的があったと考えるのが自然。つまり、ここに人を閉じ込めて、もし逃げようとしても逃げ道が分からなくなるようにするためだったと」


 「完璧です。簡単すぎましたかね」


 「そうね。私はあなたよりもここにいる時間が長いのよ?その分持ち得ている情報もあなたより多い」


 「一問目ですからね。急場しのぎで用意したにしては頑張ったと思いますが」


 「それはどうかしら。はなから負ける気満々だったように思うけれど」


 そんなことはない。負けてもしょうがないかと思っていた程度だ。

 「そんなことはありませんけど。はぁ、そんなことよりも今日は疲れましたよ。昨日は徹夜だし今日は本読むし頭使うし動き回るし」


 もう夜も遅い。あくびが出てきたぞ。すごく眠い。

 色々な疲れと眠気で思わず机に突っ伏してしまった。このまま寝れそうだ。

 

「1,000万のためでしょ。この程度で弱音をはいていたら先が思いやられるわね」


 私はそれで構わないけれどね、と彼女は嘯いた。そもそもあなたの頭じゃ私に……

 そのあとも何か話していた様だったが、眠気にはどうにも勝てなかった。彼女の声が子守唄のように聞こえる。

 意識がどんどん遠くなっていく。


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