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僕が創り、彼女が解く  作者: 二壱七
6/9

1,出題

 「この建物が作られた目的は?」


  彼女の切れ長の目が、さらに細くなった。ただ単に眠いだけ、ということはあるまい。


 「へぇ……。それはちゃんとした答えを用意しているのよね?これで学生の勉強のためとか言い出したら怒るわよ?」


 「勿論用意しています。用意に時間がかかってしまいましたけどね」


 「ふーん、そう。念のためルールの確認をしておくけれど、あなたの用意した答えを導ければ私の勝ち。できなければ負け。それでいいわね?」


 「ええ。構いません」


 含みのある言い方だな。まるで僕が本当の答えを知っていないとばかりに。僕は今日、この発想に至ってから一日を裏取りに費やした。そのためにこんな夜遅くになってしまったのだ。


 「さらにルールの確認。あくまでもフェアに情報を提示すること。私が合理的に結論を導ける必要最低限の情報を開示しなければならない」


 「ええ、分かっています。とはいっても答えを導ける情報は既に持っていると思いますよ。なので、こちらが情報を提供するというより、質問に答える形にしましょう」


 「いいわ。なら前提条件をいくつか確認よ。あなた、ここの生徒?」

 

 おっ、いいところ突いてくる。流石。推理小説が嫌い(すぐ答えが分かるから)と豪語するだけある。


 「ええ。僕はここの生徒です。紛れもなく。つまり、僕もあなたもこの図書館の利用ルールを把握している。当然、”この図書館内は撮影禁止。外部へ建物内の情報を共有することすら禁止”であることも」


 「分かったわ。それなら次、あなた何年生?ここにきて長いの?」


 「1年です。この図書館に来るようになって1,2ヵ月程度といったところでしょう」


 この質問は関係あるのか疑問に思ったが答えない理由も特になかった。 


 「答えを用意するのに時間がかかったと言っていたわね。なぜ時間がかかったのかしら」


 「答えの想像はできていたのですが、それを確認する作業に手間取りました。司書さんに聞いたり、過去の文献あさったり、色々しましたよ。それに僕は問題を出す側ですからね。何か質問されたときに答えられないものがあると困るじゃないですか」


 「なるほど、それはご苦労様ね。司書に聞きに行ったといっていたけれど、誰に話を聞きに行ったの?」 


 「それ関係あります?」


 「あるかもしれないし、ないかもしれない」


 「受付にいた若い女の人です。分かります?あのちょっと童顔で背の小さいかわいい感じの人」


 「ええ分かったわ。他の人にも聞いてみた?」


 「いえ、その人だけです。夜も遅くなって人がいなくて」 


 「その情報は信頼できるの?一人にしか聞いていない上に若い人。歴史を知っていそうな人は他にいなかったのかしら。ただ若い女の子と話がしたかっただけじゃない?」


 「それは失礼な。ほんとに聞ける人がいなかったんですって。それに裏を取る目的で聞きに行ったわけですからね。確証が得られればそれで良かった」


 「まぁいいわ。次の質問。この建物、改築履歴はあるかしら?」


 ああ、これは核心に迫る質問。

 

 「大きいものが一度、小さなものが数回入っているようです。内容は開示されていません」


 「この場合、建物が作られた目的、とは改築前の建物を指すのかしら?」

 

 「はい。お察しの通りです」


 彼女は答えが既に分かっているようだ。分かっていて、外堀を埋めている。まぁしょうがない。一問目にしては上出来だったと思うことにしよう。切り替えていく


 「それでは最後の質問。この建物が建築された年代は?」


 「1940年代前半」


 そう、と彼女は一息ついて。


 「あなたの想定解が分かったわ」



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