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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

娘の成長

作者: 遅刻魔

罵声と喚き声と喘ぎ声、これが私の日常。

…あぁ、頭が痛い。

今にも破裂しそうなスピードで脈打つこめかみを押さえながら、ゆっくりと上体を起こす。

一点に狙いを定めたかのような鈍痛がまた腹ただしい。

そんなに集中攻撃されたら、穴が空いてしまうじゃないか。

なんて、ありえない冗談を考えられる程度にはまだ余裕がある。

まあ、煩わしい事には変わりはないけど。


こんなにも目覚めの悪い朝はいつぶりだろう、いや、そもそも朝なのかどうかも怪しい。

慌てて枕元のスマートフォンを開く。

煌々とした眩しい光が私の視界を奪う。

頭痛にこれは、だいぶ効く。

画面に表示された 3月20日 土曜日 10時36分 という文字を、半目で確認した。

少々寝すぎたような気もするが、たまにはこんな日もいいだろうと、己を無理やり納得させる事にした。


幸い、まだ時間はある。

珈琲でも飲んで切り替えよう。

味はブラックがいい、飲むと頭が冴えるし何よりこの頭痛が和らぐ様な気がする。

ややホコリ臭い布団を剥ぎ取ると室温との温度差で鳥肌がたつ。

3月の室内とはいえ、裸体で過ごすにはまだ早すぎたか。

腕を軽く擦りながら、昨晩ソファーに投げ捨てそのままになっていたバスローブを回収し、身に纏う。

ボディーソープと微かな汗の匂いが私を包む。

防寒には心もとない気もするが珈琲を作るには十分だ。

足元に横たわる男の亡骸を一蹴し、早速電気ケトルに水を入れる。

さて、お湯が沸くまで何をしよう。


相変わらず止まない頭痛、スマホゲームはキツい。

男が着ていたジャケットを探ると、ポケットから煙草とライターが出てきた。

煙草なんて吸ったこと無いけど、これを機に挑戦してみるのもいいかもしれない。

箱から1本取り出し、くわえる。

仄かなツンとした匂いに、やや後悔の念を感じたが、昨晩くわえた物の恐ろしさに比べたらなんてことは無い。


苦手だったライターも、難なくクリア出来た。

赤色が灰色に変わる瞬間がどうしようもなく綺麗で、ついつい見とれてしまう。

ノイズにも似た小さな音と共に、灰色の範囲はやがて広がってゆく。

寿命までのカウントダウンかのようにも思えるその光景を、ぼんやりと眺めているだけで充分過ぎる時間となった。


沸騰を知らせるケトルの叫びが部屋中に響き渡った。

きたきた、やっと珈琲が飲める。

煙草持ったまま移動するのは危ないし、こんな時はどうすればいいのだっけ、そうだ、灰皿。

周辺を探してみたがそれらしきものが見当たらない。

禁煙ルームでもあるまいし、置いてないなんて事があるのか?

それとも、フロントから取り寄せるタイプなのだろうか。

ベッドの傍にある歪な形をした電話機に手を伸ばした瞬間、「あっ」と自分でもビックリするくらいの大きな声が出た。

思い出した、殴るのに使ったんだった。

早速、先程蹴飛ばした亡骸まで駆け寄ると、案の定後頭部付近にお目当ての物が転がっていた。

血で汚れてしまっていてまるで使い物にならないが。

仕方が無いので、男の掌に煙草を押し当てる。

何となくだけど、先日参加したバーベキューイベントの事を思い出した。


男の掌から細い煙が上がる。

線香代わりになったかな、まあ偲んでやるつもりなんてサラサラないけど。


いけない、お湯が冷めてしまう。

手早くインスタントコーヒーを作り、口に含む。

父親を殺した翌日の珈琲は普通のブラックコーヒーの味がした。

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