幼稚園の警備員
百物語二十話になります
一一二九の怪談百物語↓
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あぁ、やってしまった。
今日は幼稚園で朝から警備の仕事があったのに…まさか寝坊してしまうなんて…
私は急いで警備員の制服へ着替えると、車に乗ってすぐに勤務先の幼稚園へ向かった。携帯電話には、着信履歴が数件。私が警備を担当する幼稚園からだろう。急いで幼稚園に行って謝らなければ…
幼稚園に到着したのは、朝の9時30分。私は急いで車を駐車場に停めると、そのまま職員室へ向かった。
「鍵がかかっている?…あっ!この時間だと体育館か?」
私は急いで体育館へ向かうことにした。
「早く謝らないと…!」
額に汗をかきながら、静かな廊下を走り抜けていく。しばらくすると…
「ああっ!」
体育館の扉の前に到着すると、中から子どもたちの声がざわざわと聞こえてくる。
「…くん…やっぱ…だね…」
「ああ…まま…ああ…」
「あつ…うぁ…ね…」
「もう…どこ…ぱ…ま…」
私は1度深呼吸をすると、扉をゆっくりと開きながら、すぐに頭を下げた。
「す、すいません!寝坊してしまいました…!会社にすぐ連絡しますので、少しだけ…時間…を…?」
体育館の中は、とても静かだった。
「あ、あれ?子どもたちは…?先生方は…?」
体育館の中に子どもたちや先生の姿は見当たらず、電気も消えて辺り一面真っ暗な状態だった。予想外の出来事にしばらく立ち止まっていると、携帯電話に警備会社から連絡が入った。
「あぁ、やっと出てくれた!今日は幼稚園お休みだったみたいです!引継ぎの人が言い忘れていたみたいで…」
話を聞いてみると、どうやら今日は休園日だったらしく、前回担当していた男が私に引き継ぐのをすっかり忘れていたらしい。
「今日は昔幼稚園の火事で亡くなってしまった園児たちを慰霊する特別な日なんですって。体育館に重傷の子どもたちが運ばれたとか…」
私は電話で今までのことを伝えると、幼稚園の隣にある花屋で花束を買い、体育館の真ん中へ置いて静かに手を合わせた。