世界一の感想
あなたにとっての「世界一の感想」は何でしょうか?
小説投稿サイトで投稿すると、いろんな感想がもらえます。
単純に「おもしろい」と言ってもらえたり、「続きを期待しています」と言ってもらったり、逆に「ここはこうした方がいいと思う」などの指摘をもらうこともあります。
私もたくさん励ましのメッセージや指摘のメッセージをもらいましたが、その中でも「世界一」と言える感想をいただいたので紹介します。
誰でも言える感想ですし、特に珍しいものではありません。
「(第四会場の)異世界トリックスター面白そう」
これだけです。
何故これが「世界一の感想」だと思ったのか、説明していきます。
【「書き出し祭り」について】
この感想は「書き出し祭り」という祭りで出した作品に対しての感想です。
「書き出し祭り」とは、長編を前提とした小説の書き出し4000字以内で争う、プロアマ総勢100名が参加する有志が主催のお祭りで、とにかく人気で募集後1~2分で参加枠100人が埋まってしまいます。
とにかく書き出し4000字さえ書ければプロもアマも書籍化作家も関係ありません。毎回必ず1人はすべての作品に感想を書く人がいますので、自分の作品に必ず感想が付くというのも魅力です。25作品ずつ4会場に分かれて1位から3位までの投票がありますが、匿名なので公平な投票が行われます。
作品自体の質も非常に高く、感想も質の高い感想や普段の感想では得られないような凝ったものをもらえたりするので、自身のレベルアップや弱点の確認などに役立ちます。
【参加までの経緯】
実は今回は参加枠に入れず(当日事務所の同僚と話し込んでしまった結果、募集時間に間に合わなかった)、全感想のみの参加にしようと思いました。
ところが、作品投稿締め切り時間になって4名欠員が出たため、補欠の募集がかかりました。
一応書きかけの作品があったので、それを書き出し祭り用に加工すれば大丈夫だと思い、補欠の募集に参加しました。確率は半々だったので、「通ったらもうけものだなぁ」と思っていたのですが見事当選。無事、書き出し祭りの参加権を得ることができました。
【参加後の苦悩】
20時に参加が決定、できるだけその日中にタイトル発表したいとのことで、急いで原稿を仕上げました。
書いている原稿を書き出し4000文字以内に収めるだけなのですぐに提出できると思いましたが、かなり苦労しました。
タイトルは「異世界トリックスターの苦悩」で、現世で泥棒(空き巣)だった主人公が、異世界で活躍するという話です。異世界ものだったので異世界前の話、転移のきっかけ、異世界の世界観などを4000文字以内で説明しなければなりません。転移前で4000字近く行っていたため、とにかく削りに削りました。
2時間後、なんとか4000字以内に抑え、投稿しました。今回からあらすじも書けるようになっていたのですが、単純に書き出しの要約だけで提出しました。
数時間後にタイトルの発表があり、その一覧を見ただけでも結構落ち込みました。参加者は実力者ばかりで、当然タイトルも凝ったものばかり。当然上記のタイトルなんかは目立つはずもありません。
私が参加した第四会場でも、例を挙げれば「Killing Body」「残念ながら原稿は命より重いです。」「ターミナル・ヴェロシティ」「青を飲み、死に向かう僕たちは、あの日観た映画に思いを馳せる。」「レディ・ヴィランのたわわごと」といった、すごく目立つ、読みたくなるタイトルが並んでいて意気消沈しました。
【タイトル感想での大誤算】
タイトルが発表されると、何人かは「タイトル感想」というものを行います。タイトルからどういう話かを考察したり、タイトル自体が面白いかどうかを評価したりします。
そこで私は、「トリックスター」の意味を取り違えていたことに気がつきます。
本来「トリックスター」には詐欺師やペテン師、あるいは物語をひっかきまわすようないたずら者という意味があり、トリックスターと呼ばれるキャラクターには大物が並び、上級職とすら言われる作品もあります。
しかし、私は単なる泥棒をトリックスターと思っていたため、意味を知っている人にとってはとんだがっかりな内容になってしまいました。
そもそも私の作品は内容詰め込み過ぎ、主人公が活躍していない、次の目的が分からない、空行が無いので読みづらいなど完成度は低く、さすがに0ポイント覚悟しました(第三会場や第四会場など票数が少ない会場だと0ポイントはあり得るが、大体どの作品も1票は入っている)。
【絶望の中で見つけた光】
さすがに始まったばかり、しかも通常は最後の方に読む第四会場のタイトル感想はほとんどなく、タイトルでツイッターの検索をかけても自作品が見つかりません。
そんな中、「第四会場」で検索を掛けた時、たまたま見つかったのが上記の感想です。
全体で100作品、第四会場に限っても25作品、しかも上記のような目立つタイトルが多い中、他の作品には言及せずに私の作品が面白そうだと感想をくれました。さらにタイトル発表の後、恐らく誰よりも早く書いてくれたことがとてもうれしかったです。
思わずいいねしそうになりました(が、匿名の祭りなのでいいねするとばれてしまいますのでできませんでした)。
【1つの感想に支えられた書き出し祭り】
書き出し祭りが始まり、本文が公開された後の私の作品に対する感想は散々でした。思った通り詰め込み過ぎ、説明が少ない、(後から追加した)魔法の戦闘シーンはいらないなど、多くの指摘をされました。
もし最初の「面白そう」という感想が無ければ、もしかしたらそのまま作者を公表せず、お礼にも行かず、失踪していたかもしれません。
でも、どんなにいろいろ言われようとも、私には100人に1人しかもらえない感想がありました。また、私自身も全感想をやっており、それすらも途中で投げ出していたと思います。
【世界一の感想は誰でも書ける】
感想は書くのに勇気がいりますし、失礼にならないか心配にもなります。
それゆえに、どんな感想でももらえればうれしいですし、どの感想も大切なものだと思います。
でも、その中でも、落ち込んでいる時にもらった感想というものはとても励みになりますし、勇気を与えられた気になります。
世界一の感想を書くのに、長々と書いたり、気の利いた言葉を使ったりする必要はありません。「面白かった」「面白そう」これだけでいいのです。
多分、私に感想をくれた本人も、特に深いことを考えて書いた(ツイッターで呟いた)わけではないと思います。たまたま異世界ものが好きで、たまたま私の作品のタイトルが目に入ったので、ちょっと呟いただけだと思います。
でも、その気軽に呟いた一言で、私は救われました。「本当に私が参加して良いのだろうか?」という迷いも消えました。今では「参加して良かった」と胸を張って思えるようになりました。
余談ですが、投票の結果、私は9ポイントいただけました。しかも、1位票(3ポイント)が2人もいました。0ポイントを覚悟していたので、これだけもらえれば十分だと思います。25作品もある中、誰かの1位になれたのですから。
あなたのたった一言の感想が、誰かの心を救うかもしれません。
あなたにとっての「世界一の感想」は何ですか?
それはどんな時にもらった感想ですか?