8.前世の抜け落ちていた記憶
次々と頭の中に流れてくる情報。
これだ。
私はずっとこの記憶を探してたんだ。
それが王子様の名前を合図に、頭の中のモヤが晴れていくのを感じる。
「はぁ…はぁ。、くっ。」
ダメだ、頭が痛い。
いや、正確には心が痛い。
あ。
これまた意識とぶ…やつ…ね。
私はあの日と同じように意識を手放し、そのまま床に倒れ込んだ。
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私はいつも見ていた。
婚約者であるユノン・デクラン…ユノン様を。
王妃になるための厳しい王妃教育に耐えていたのも、彼に褒めて欲しかったから。
王妃教育の間を縫ってでも学園に通ってるは、ユノン様と少しでも一緒にいたかったから。
でも私が夢見たユノン様の腕を組みながら横にいるのは、ピンクのプラチナブランドをふわつかせる小柄の女性、伯爵家のララビア・マイハード。
彼女には憎しみしか湧いてこなかった。
家族から愛されていて、それだけに飽き足らず。
私が求めているたった一つの愛さえ、彼女は私から簡単に奪っていった。
だから、徹底的に嫌がらせをして追い詰めた。
その結果が婚約破棄。
そして家族から形だけの縁すらも切られてしまった。
ただ、誰かに愛されたかっただけなのに。
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「いや、重すぎだからっ!はぁ。はぁ」
つい突っ込みながら起きるなんて技を身につけてしまった。
そりゃあ、思い出したら心痛いはずだよ。
もうチクチクしてるよ。頑張ったよリリー。
ていうかあれ?
私昨日床で寝た?はずなのにベットにいるぞ。
「お嬢様っ!目が覚めたのですね?昨日は驚きましたよ。ティーセットを下げにきたら床に倒れていたものですから…ぐすっ。いえ、私がベットに入るまでそばにいたらごのような”っ」
「わーー!違う違う!メイのせいじゃないわよ⁉︎とりあえず、今後はお互い気をつけるってことで…いいわねっ?ねっ!」
「あ”い。」
ふぅーー。あーぶね。
「ねぇ、このことってパパ達には‥」
「もちろんしっかりお伝えしております」
あーーーー。しっかりね。
ほーーんと仕事ができるメイドがいるなんて幸せ。
とほほ。また私への溺愛度があがるわね。
んん”!!
え?おかしいって。
記憶の中の私。
つまり前世で流行っていた乙女ゲームに登場していた悪役令嬢リリアナは愛されてなくて…ああなった…のよね?
ってことは今の私の場合、既に家族の愛という最強で完璧な武器を持ってるから怖がることなにもないよね?
ちゃんちゃんっ。
…。
もういつのまにか私、フラグ叩き壊してたってことよね⁉︎
つまり…。
これからどうするのか何をするのかは私の自由ってことじゃない!
私はこのまま騎士道に向かって走り出していいのね?
もうクラウチングスタートしちゃうよっ?
ふぉぉぉぉぉうぅっ!
「お、お嬢様…やはりすぐにでもお医者様もお呼びして参ります」
やっばい。
ついついテンション上がってベッドの上でガチでクラウチングスタートのポーズしてたよ。
さすがに変人だわこれ。
「わーー、待って待って。本当に大丈夫。少し休んだらすぐにでも良くなるから。ねっ?」
「「リリー」」
「パパ!お兄様!」
「大丈夫かい?昨日倒れたと聞いたが」
心配そうな顔してベットの端に座りそっと抱き寄せてくれる父。
「熱はない?しんどかったらお兄様に言うんだよ?」
そう言っておでこをぴったんこ。
いやぴったんこ!じゃないって!
2人とも距離!近すぎるってぇぇぇ。
キュンキュンして無いはずの熱が発生するって。
「少しまだ熱いね。」
あなたの顔が近いせいでねっ。
「確かに体も少し体温が高い気がする」
あなたが私を抱きしめてるからねっ。
っていうか、なんで2人ともさらっと体使って体温はかるの?
体温計くらいこの世界にもあるってことぐらい私だって知ってるんだからね。
「リリー。今日1日ベットでおとなしくしていること。わかっかい?」
「…ゃだ。だって今日はエリスさんが来る日だもん。元気だもん。やるもん」
私の体が今ポカポカして熱みたくなってるのは2人のせいだからね?
わかってる?
「…エリスの稽古は今日お昼過ぎからだね?それまでベットで寝て熱が下がっていたら許可しよう」
「父上はリリーに甘すぎです…」
「わかりました!いっぱい寝ます!」
私はそう言って満面の笑みを披露した。