7.きっかけは突然に
「リリー、そんなもの覚える必要なんてないから、心配しなくても大丈夫だよ?」
わぁあ。お兄様かぁっこいい。はーと。
って違う違うっ!
「ノア。意地悪しないで教えてあげなさい」
「そんなに言うなら父上が教えて差し上げたらどうですか?」
「……」
まさかね。
いやほんと…ね?
誰か嘘だと言ってぇぇぇ。
だってパパって、この国の第一騎士団団長だよ?
そんな重責で4大公爵家の1つであるクロノス家当主様がまさか、王太子殿下の名前知らないなんてある?
ないよ。
さすがにやばいって。
「安心しろ。仕事に支障は出ていない」
今のところわねっ⁉︎
キリッとした顔で言ってる場合じゃないからね。
「はぁ。やっぱりですか。父上は興味がないことはとことん覚えないですよね」
相変わらず兄はにこにこしている。
「それに私ごときが、殿下の名を口にすることは生涯ないので問題ないはすだ」
あぁ。そうゆうことか。
ん?
だったら私もいいでは。
「お兄様、でしたら私も大丈夫ですわ!」
そう言うと、兄はとてもいい笑顔でうなずいてくれた。
うんうん、一生使うことない名前覚えたって意味ないもんね。
父天才かよ。
お兄様もそうならそうと最初に言ってくれればよかったのにー。
食堂にいたクロノス家の使用人達はおもった。
王族の名ですら覚える価値がないと言ってしまうクロノス家って本当に、最強だなと。
部屋に戻り一息つく。
3日後か。
部屋について大好きカモミールティーを飲みながら一息つく。
じーっとメイドのメイを見つめる。
この子ほんと可愛いよね。
まつげながっ。
といつも通りどうでもいいことを考えていると、メイが話しかけてきた。
「お、お嬢様?もしまだ気になるようでございましたら私でもお答えできますが」
なにが?なにも聞いてなかったんだけど。
なになに、まつ毛の話?
とりあえずごまかそう。
「…?」
どうだっ、秘儀天使の首傾げ。
この時、唇の近くに少し折り曲げた指を持ってくるとモテ度UPまちがいなしだからお忘れなく。
「ユノン・デクラン様でございます」
「…っ」
どくんっ。
ユノン・デクラン。
知ってる…いや、知っていたのだ。
私はこの名を。
「お、お嬢様?顔色が優れないようですが」
「大丈夫っ。はぁはぁ」
落ち着け私。
息を整えるのよ。
「っ。ふーーっ。メイ。今日はもう下がっていいわ。少し疲れてるみたいだから、早めにベットに入ることにするわ。ごめんなさいね」
「そのようですね、顔色も良くないようですし、明日はいつもより遅めに参りますのでごゆっくりお休みください。それでは、お休みなさいませお嬢様」
そう言ってメイは部屋から出て行った。
それが確認できると同時に私は床にぺたりと座り込んだ。
「うそでしょ…」
呟いたその声は小さく部屋に響いた。
お待たせしました。
やっと話が動きます。
ついつい楽しくなり、日常を取り入れてしまい話が前に進まずにいました。
少しでも皆様の心に響けば良いなと、楽しみながら描いています。
これからもどうぞよろしくお願いします。