4.兄弟愛
なぜこんな日に限って、お外は晴れているのでしょうか。
いやだなー、気が重いなー、帰りたいよぉぉぉ。
…ふっ、ここはすでに私の家なのか。
まったく、まいっちまうぜジョニー。
カチャン。
「お待たせいたしました、本日の紅茶はカモミール。また焼き菓子にはマドレーヌとマカロンをご用意しております。ごゆっくりどうぞ」
わぁぁぁ。
頭の中で1人アメリカンコメディバカをしている間に、テーブルいっぱいに焼きたてのマドレーヌとマカロンが並べられた。
前世でもお菓子には目がなかったんだよな〜。
とっりっあっえっず〜、まずはマドレーヌちゃんからいただこうかしらね!
ぱくっ。
もぐもぐもぐ。
「っ!ん〜〜〜。おいしぃ」
つい頬が落ちるのではないかと左手を頬に当て噛みしめる。…幸せだ。
「リリー。美味しそうに食べているところ申し訳ないんだけど、そろそろお兄様とお話ししようか?」
「むぐっ⁉︎ごほっ」
あひゃーーー。
お菓子で頭の中いっぱいになってお兄様のこと忘れてたなんて言えない。
「お兄様?はい、あーん!」
にこっ。
9歳。幼い。愛嬌。天使スマイルで乗り切るのだー!
いざっ、勝負っ。
「…。はぁ。あーん」
ぱくっ。
長い沈黙の末のってくれたよ、お兄様しゅきよ。
「…。ぅまい」
およ?なにその驚いた顔。
「お兄様?」
「いや、考えてみればお菓子なんて、母上が亡くなって以来口にしてなかったなと。ふっ。たまには良いものだな」
「…はい。では、私はこの辺で失礼しっー!」
「リリー?なに綺麗に退場しようとしているのかな?」
ダメだったよ。
1ミリたりとも見逃す気ないよ。
「お、お兄様の訊きたいことは何ですの?」
もうどうとでもなれと思い切り出した。
「話が早くて助かるよ。僕が訊きたいことは3つ。1つ目、昨日何があったのか。リリーが倒れたことは聞いている、そっちじゃなくて父上とってことね」
「何って。えと。ね…寝言でパパとつい口にしてしまい、その後パパがもうパパと呼んでくれないのかってそれで、その」
「…なるほど。では2つ目、…はいいか。つまりその時に何やら話して父上がこれからは僕ら向き合おうって至ったって感じかな?」
ま、まじかよ。
私のお兄様天才なんですけど。
私のたったあれだけのわたわた情報でここまで理解って。
「リリー。まだ終わってないよ?」
「ひゃいっ」
つい感激して下を向いて考え込んでいた私はビクッと再びお兄様の目を見つめた。
「うん、いい子。3つ目、なぜいきなり騎士になりたいと言い出したんだい?昨日まで僕と図書室に篭り。ありとあらゆる本を読み、知識を蓄えてきた。このままいけば王宮職なんて軽々手に入れられるほどにはね」
…ん?
私そんな難しい本読んでたの?
いや、道理でお兄様の渡す本毎回重いわ、わからない単語ばっかりで調べながら読んでたけどもっ。
「…お兄様。やはりあの本は9歳児向けではなかったのですね。」
「だって可愛いリリーと早くいっぱいお喋りしたいなら、早く賢くなってもらうしかないよね?そしたらリリーも大好きな僕といっぱいお喋りできるようになるんだよ?つまりはリリーのためでもあったんだよ?」
んぅぅ〜〜?
なーんか嬉しいような可笑しいような。
…怖いような。
とりあえずめちゃくちゃ私のこと好きってことね。
まぁこんな美少年のお兄様から愛されるってなかなかないよね。
ぐふっ。
私、幸せじゃん!よしっ、解決。
「お兄様!リリーもお兄様だぁい好きですよ!」
「リリー!わかってくれて嬉しいよ」
ふわりと微笑みそして私の髪の毛を少し掴みキスをした。
きゃーーわーわー、何これドキドキするって。
「ふふっ。可愛い。真っ赤だね。」
「お、お兄様。…あの、3つ目の答えになるかわかりませんが、騎士を目指そうと思ったのは騎士になれば、お父様とお兄様とずっといられると思ったからなのです!」
「リリー」
「私知ってます。お兄様が剣を習っているの。私だけいつも仲間外れです。私、母様が亡くなって悲しくてうまく笑えなくなりました。でも、私はもう逃げません。私にはパパとお兄様がいます!私も強くなって騎士になって一緒に働くのです!」
とまぁこのように言っときます。
でもこれも本心です。今決めたものだけどね。
もう一つの理由が、前世のパパへの償いなのは私だけの秘密にさせてお兄様。
この日以降。
お兄様からの、甘々攻撃が倍増したのは言うまでもない。