NHKをぶっ壊せ…… とまでは言わないけれども
どっかの大統領じゃないけれども、世の中にはフェイクニュースが多過ぎると思う。
いや、フェイクニュースなんて表現すると語弊があるかもしれない。何故なら、そんな中には嘘とは言えないニュースも多いからだ。でも、実はそういったニュースの方が性質が悪かったりもする。何故なら、そういったニュースは巧妙に印象操作する目的で作成されていたりすることがよくあるから。
一応断っておくと、別に何処か特定のマスコミとか思想団体だけがそういった性質の悪いニュースを流している訳じゃない。数多くの人々がそういったニュースを流し、そして互いに「対立する団体が、情報操作を行っている」と主張している。
試しに、偏った思想の団体の記事かなんかをいくつか読んでみるといい。自分達にとって都合の良い情報だけで構成された内容になっていたりするから。
更に厄介なのは、ここに本人達は嘘を言っていないと思い込んでいたりするケースも混ざっている事だろうか。つまり、悪意どころか、善意で印象操作された情報を拡散してしまっている人達が存在するのだ。
……いや、ま、もしかしたら、僕も無自覚の内にそんな事をやってしまっているのかもしれないのだけどさ。
そして、NHKの受信料に関するニュースにも、やはり「印象操作」されているとしか思えないものがあるのだった。
僕の家の近所にはコンビニがある。
帰り道の途中にあって都合が良いものだから、僕はそこをよく利用するのだけど、そのコンビニの店員さんの一人に三十代くらいの女性がいる。
中国人や、西アジア系の人達に混ざって働いているのでよく目立つものだから、僕はその人を覚えてしまった。覚えてしまったなら、会った時に軽く会釈くらいはする。そうすると、少しずつ話すようになって、気が付くと「近所の知り合い」くらいの関係にはなっていた。
彼女はそのコンビニの近くに住んでいて、よく道で会ったりもするのだけど、そんな時は子供を連れていることも多い。ただ、旦那さんを見かけたことは一度もなかった。
何故なのかと不思議に思っていたら、どうやら結婚して直ぐ旦那さんを亡くしてしまったらしいとある時に知った。それで今では母子家庭で、かなり厳しい生活を送っているようだ。
これは男女不平等社会のデメリットの一つだろう。
男親が収入を担うという家族モデルが普通だと、男親が何らかの理由でいなくなってしまった時に、一気に家計がピンチに陥ってしまう。
まぁ、とにかく、そんなだから、僕は彼女を心配していたのだ。
そんなある日のことだった。
いつものように道を歩いていると、安アパートの一室のドアの所に彼女の姿を見かけた。働いているコンビニの近くに住んでいるとは知っていたけど、具体的な場所までは知らなかったから少しだけ驚いてしまった。
ところが、その時彼女は一人ではなかったのだった。誰か男がいる。ただし、それは恋人といった感じではなかった。どうも、訪問販売の類のようだ。かなりしつこく迫っているように思える。
僕はそれを見て義憤に駆られた。
生活の厳しい彼女に、無理矢理何かを売りつけようなんて酷過ぎる。
それで、やり過ぎかとは思ったのだけど、つい止めさせてやろうとそこに向ってしまったのだった。ところが、近付いてみてどうも訪問販売ではないと気が付いた。
「NHKの受信料を払うのは、国民の義務なんですよ」
その男はそう言っていた。
そう。その男はNHKの集金人だったのだ。
「つい最近、裁判が行われて、NHKが勝訴したのを知っていますか? テレビを観ているのなら、受信料を払わないといけないのです」
集金人は滔々と彼女に向ってそう諭していた。
NHKの受信料はそれほど高額ではない。はっきり言って安い。しかし、それでも、生活が厳しい彼女にとっては負担になるのだろう。
可処分所得が、月に数万円しかないような人達にとって、NHKの受信料はバカにできない。
「でも、見ていませんから」
と、彼女は抵抗していた。
僕はそれを見て、再び義憤を奮い起こした。もっとも今度の主な理由は、先程とは違っていて、その集金人の男が嘘をついていたからだった。
いや、完全に嘘とも言えないのだけど。
ただ、それでもそれは、少なくとも印象操作ではあった。
「――NHKは、裁判で勝ってはいませんよ」
僕はその集金人に向けてそう言った。
突然、後ろから話しかけられたその集金人は驚いて僕を見る。
「なんですか?あなたは?」
「近所の者です。その人の知り合いですよ」
「なら、ほとんど無関係じゃないですか。黙っていてください」
「そうもいかない。あなた、本当の事を話しましょうよ。裁判でNHKは勝ってはいないんだから」
その僕の言葉を聞くと、彼女は驚いた声を上げた。
「NHKは裁判で勝ってないのですか?」
「はい」と、それに僕。
「確かに勝訴したといったような報道が為されましたが、実はそれは正確ではないのですよ。
NHKが受信料を無理矢理に徴収する為には、各家庭に対して裁判を起こして、それぞれで勝たなくてはいけないのです。受信料を払っていない全ての家庭に対して裁判を起こすなんて実質的に不可能ですから、これは勝ったとはとても言えません」
その僕の説明に、「なるほど」と彼女は大きく頷いた。そしてそれから僕は“どうだ!”と言わんばかりにNHKの集金人を見てやったのだった。
嘘がバレて狼狽えているだろうと。
ところが、それを聞いたNHKの集金人は、「え? そうなの?」といったような表情で固まっていたのだった……
……そう。
本人達は嘘を言っていないと思い込んでいて、悪意どころか、善意で印象操作された情報を拡散してしまっている。
そんなケースもあるのだ。
因みに、NHKは物凄く儲けていて、職員の平均年収は一般の2.5倍だとかいう話もある。
更に、それだけ職員に払っていても、収益を使い切れず、資産は積み上がっていく一方なのだとか。
NHKをぶっ壊せ…… とまでは言わないけれども、流石に何かしら是正するべきなのじゃないだろうか?
NHKの受信料は条件を満たせば、免除してもらえるのだから、その条件をもっと広げた上で、大きく宣伝して、手続きも簡単にできるようにするとかさ。
NHKの集金人が、裁判の勝訴を理由に受信料を取り立てていた…… みたいな話があったのですが、実は本人も知らなかったのじゃないかな?と