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俺はドラ息子  作者: 塩幸参止
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第四章・その5

 笑顔になり、リリスがダイアナを抱き返した。一応、本心から喜んでいるとは思うが、それだけではなく、ある程度は心に冷静な部分があるはずだ。そうでなければ、俺たちにも理解できる日本語でダイアナを迎え入れるはずがない。


 案の定、ダイアナが喜びながらも、少し妙な顔をした。


「○○○○○○○○○○○○○」


「いいから。ここは日本だから。日本語で話をするのが基本なの」


「そ、そうか」


 あんまり納得のいってない顔のまま、ダイアナがうなずいた。リリスがダイアナから身体を離す。


「それで、あの」


「私は、いま、沙織様に仕えるメイドだから」


「そんな――」


 ダイアナが悲しげに言いかけ、急に表情を変えて俺たちに目をむけた。


「貴様たちがリリスを――」


「俺は関係ない。べつの一族だ」


 言ったって聞くわけないだろうとは思ったが、とりあえず説明してから俺は沙織を見た。


「どうする?」


「わたくしは、光沢さんのお言葉に、できるだけ従います」


「そうか。ありがとうな。いい返事だ」


 あらためて、俺はリリスとダイアナを見た。リリスは困った顔で、ダイアナは血走った目で俺を凝視している。


「リリス、おまえは、ここのメイドを辞めろ」


 俺の命令に、リリスが目を見開いた。


「は?」


「あー、いますぐにじゃない。ただ、最終的には、そういう路線で行動してもらう。ここ以外でも食っていく方法はあるだろ。それをやってもらうから」


「あの」


 狼狽した顔でリリスが沙織のほうをむいた。つられて俺もむくと、沙織が大真面目な顔をしている。


「光沢さんの命令を聞きなさい」


「――はい。わかりました。あの、それで」


「もちろん、ここで、おまえ以外の、きちんとした魔道具をつくれる奴を都合してからだから、少し時間はかかるけどな。そのあと、おまえは自由だ。日本に住むなり、ダイアナと一緒に帰国するなり、誰かのエレメンタルで人間に戻してもらうなり、そのへんは好きに行動していい」


「はあ」


「貴様、それでいいのか?」


 この質問はダイアナからだった。相変わらず、餌を目にしたライオンみたいな形相で俺をにらみつけている。俺はため息をついた。


「あのな。俺はおまえに危害を加えようとは思ってない。その眼はやめろ」


「騙し討ちをするような奴を信用しろと言うのか?」


「俺が殺そうと思ったら、騙し討ちなんかしなくても、おまえ、五、六回殺されてるんだぞ」


「貴様、何をふざけたことを」


「おまえのエレメンタルを直撃で受けて、それでも俺は普通に動けるんだぞ?」


 これでダイアナがおとなしくなった。


「まあ聞け。あらためての自己紹介だけど、俺は吸血鬼だ。ただ、ちょっとあって、軽い記憶喪失状態だ。あんまり昔のことは覚えていない。それから、なるべく人間らしく生きていこうと思っている」


 ダイアナが驚いた顔をした。相変わらず、憎悪の目でにらみつけながらも首をかしげる。


「なぜだ?」


「どこかの誰かに、そういうふうに生きるように暗示をかけられたんだよ。そして、そういう暗示どおりに生きるのも悪くないと俺は思っている。だから俺は、ダイアナが友達を探しているというんなら、一緒に探そうと本気で思ったし、それがリリスのことだとわかったから、なんとかして返してやろうとも思ったんだ。誰かを必死に探している女性がいるなら、手伝うのが人間の基本だ」


 ここでダイアナの形相が変わった。それでも、目を細めて俺をにらみつける。


「いまの言葉を信じろと言うのか? それでは貴様、何も報酬を得ずに、私のためにリリスを手放すと言ってるのと同じではないか。常識で考えて、何か裏があると――」


 ここまで言いかけ、ダイアナが口をつぐんだ。俺が眼力に圧をかけたのである。紅蓮に輝く俺の瞳を見て、話している相手が冗談抜きに人間じゃないと再確認したらしい。


「俺たちは催眠術で強制的におまえたちの考え方を変えられる。それをしないで、話し合いで説得しようとしてるんだ。これ以上に何かが必要か?」


「――わかった。私は、貴様の言うことを信用するしか選択肢がないわけだな」


「さっきから聞いていましたけれど、もう我慢なりません。貴様、貴様と、光沢さんのことをなんだと」


「あ、いいから。ダイアナは敬語のつもりで言ってるんだ」


 切れかけた沙織を制し、俺はダイアナを見つめた。


「だから、最短で一年くらいかかると思うけど、リリスは帰ってくる。それは安心してくれ。俺は嘘は吐かん」


「自分のことをダンピールと言ったではないか」


「言ってない。お前が勝手に決めつけたんだ。で、どうする? このあとも、俺たちとやり合う気か? だったら、いままでの話はなしで、俺たちも違う行動をとることになるけどな」


 要点をまとめて言い、俺はダイアナのリアクションを待った。ダイアナが、少し考える。――時間にして、一分ほどだっただろうか。


「わかった。リリスが帰ってくるなら、私はそれでいい」


「納得してくれて助かった」


「それで、このあと、私は何をすればいい?」


 つづけての、ダイアナの質問だった。


「吸血鬼と闘えるエレメンタルを持ちながら、黙ってここから去ればいいのか?」


「そうは言ってない。むしろ、そこまでの能力を持っているのは心強いからな。魔道具の脇差も持っていることだし」

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