魔王を超えるラスボス
ラスボス……。
最後に待ち受ける強敵、ラストボス。
中には「私はまだ二回変身を残してます」、などと戦闘時に姿形が変わる者も多い。
だが【隠しボス】や【裏ボス】など、更に上のボスの存在も確認されている。
ーー20年後
あれから俺の生活は変わった。
最果ての街で仕事を探し警備兵兼農業を始め、彼女の実家にゴマをすりに通う毎日。
実は同年齢のお義父さんにびっくりしたり、それ故に昔遊んだゲームの事で盛り上がったり、フラウアが同級生からラブレターをもらった事を知りヤキモキしたり。
自分が勇者だった事を忘れるような生活だったが……うん、幸せと思える毎日だった。
そして彼女が16歳になった年、俺とフラウアは結婚した。
「とりあえず一発殴らせろ!」と、お義父さんから受けた拳で危うく天国に召されそうになったが、今となってはいい思い出だ。
子宝にも恵まれ、娘が二人。
子供が出来てから、お義父さんが手の平を返したような態度になった時には、驚くというより唖然としたものだ。
やはり孫という最終兵器には、ラスボスも敵わないようだ。
上の娘は血筋なのか先日魔王を改心させたらしく、巷では勇者と呼ばれている。
そんな娘が久々に帰ってきたのだが……。
お義父さん。ようやくあなたの気持ちが分かりました。
「あっ、どーもー。俺、魔王です。よろしくね、お義父さん」
そう!
目の前には、娘が紹介したいと連れてきた男が勝手に家に上がり込んでいる。
ほぉ、魔王ねぇ。
俺が倒した魔王の従兄弟らしいが、一族郎党滅ぼすべきだったか。
確かに人離れしたルックスに、強者ならではの雰囲気はある。
が、断じて認めることは出来ない!
「ふんっ!」
俺はそっぽを向きながら、無性にお義父さんのことを考えていた。
俺にも役がまわってきたと。
ーーさぁ、魔王を超えるラスボスの力を思い知るがいい!
VSラスボス
父「貴様なんぞに娘はやらん!」
母「ちょっと、あなた!」
娘「お父さん!」
父「ひぃっ」
ラスボスが怯える隠しボスもまた、何処にでもいるようだ。
世のお父さんに幸あれ!