勇者、頭を擦り付ける
結婚……。
それは幻にも感じる幸せの扉。
扉の先はあなた次第。
魔界へと続く旅の扉の可能性もザラにある。
もう、ぐうの音も出ない。
俺は……負けるのか。
すると、俺の横に座る最愛の女神が怒り出した。
「もう、お父さん! 私が選んだ人なら誰でも歓迎するって言ってたじゃない!」
「で、でもね。フーちゃん」
「そうですよ、あなた。見苦しい」
「だ、だってかあさん」
どうやらお義母さんは味方のようだ。
うろたえるお義父さん。
風向きは変わった。
ここで押し込まねば勝機はない。
俺は床に手をつき頭を擦り付ける。
「必ずフラウアを幸せにします! どうかお許し願えませんか、お義父さん!」
「誰がお義父さんじゃあぁぁ‼︎」
ブチリと何かが切れた音がしたかと思うと、目の前のちゃぶ台が宙に浮き、ひっくり返る。
地雷を踏んだようだ。
ハァハァと荒い息遣い。
この身に突き刺さる殺気。
「だいたい君は何歳だ?」
「……32です」
「うちの娘はいくつか知ってるな?」
「……13歳です」
それがどうした? 愛の前に年齢は関係ないのだ!
俺は最後の勝負に出た!
「私はフラウアを愛しているんです! お義父さん、娘さんをください!」
「手前ぇ、誰がお義父さんだ! 表にでろ! 性根を叩き直してやる! このっーーロリコンがぁ!」
そして痛恨の一撃を受けた瀕死の俺は、けんもほろろに追い出された。
勇者の豆知識⑧
勇者は断じてロリコンではない。
たまたま愛した女性が年端もいかない少女だっただけ。
第二王女も20歳超えだから振ったわけではないのだ。
後日勇者は語った。
あの時【ラーの鏡】を使用すれば『ニセお義父さん』が現れたのではないかと。
※勇者は犬を見るとラーの鏡を使う癖があります。
いや、【信じる心】を持っていっていれば、分かり合えたのではなかったのだろうかと。
※勇者はカジノで出会った踊り子に、2万ペニーで売ってもらいました。
次話、感動のフィナーレ!?