勇者、追い詰められる
剣術指南役……。
王国剣術指南役とは、国で最も強い人間がなることが出来る名誉職である。
高収入であり、名誉職のため解雇の心配はない。
「勇者ってのは、あれだろ? 魔王を倒せば仕事は終わりだろ?」
くっ、痛い所を突いてくる。
だが、仕事の話は貰っているのだ。
「い、一応王国の方で、剣術指南役の打診を受けています」
王国剣術指南役といえば、名誉職。
当然給料は高く、簡単に解雇される仕事ではない。
お義父さんは俺の弁明に新聞を広げて、ある見出しを指差した。
「君、第二王女との結婚を断ったそうだな。そんな男に王国が仕事をくれると思うか? 君はニートなんだよ!」
ニート……だと!?
た、確かに打診されただけで正式な契約を交わした訳ではない。
だが俺は魔王を倒した勇者だよ?
流石に蔑ろにはされないだろう。
「これがその記事の翌日の新聞だ」
更にもう一部の新聞が開かれると、大きく『若き騎士団長、第二王女と婚約!』と書かれていた。
なんでも幼馴染の二人は、将来を誓い合った仲らしい。
それを知らぬ国王が俺を指名したものの、話は破談。
ここぞとばかりに第二王女と騎士団長が、国王に一緒になりたい旨を伝えたらしい。
あっぶねぇ。
もう少しで俺はピエロになるところだったのか。
そして記事の最後にはこう書かれていた。
『国王は騎士団長に王国剣術指南役を与えた』と。
俺の就職先は消え失せた。
勇者の豆知識⑦
魔王を倒すだけが勇者の仕事ではない。
慈善活動や、社会奉仕。
壺の強度をはかる為に床に叩きつけたり、タンスに危険物がないかの確認まで行う。(危険物……あぶない水着、エッチな本等)
勝手に人の家の鍵を開けるのもお手の物だ。
※犯罪です!