勇者、城門(玄関)の攻防
お義母さん……。
それは伴侶となる人の母親。
その実態を知るには長き時が必要。
「ご、ごめんください」
声が上擦り、暑くも無いのに汗が噴き出す。
心臓が激しく波打ち、耳まで鼓動が伝わってくる。
思考が停止しようとするのを必死にこらえ、震える足に力を込める。
頑張れ俺!
しかし、いくら待っても返事は無い。
カラカラになった喉に生唾を押し込み、もう一度声を上げる。
「ごめんぐだひゃい!」
ーー噛んだ。
すると中からパタパタと足音が聞こえ、一人の女性が顔を出す。
「あらあら、ようこそいらっしゃいました。フラウアから聞いてますよ。勇者なんですって? 凄いわねぇ。さっ、小さな家ですが上がってください」
その優しい声色が少し俺を落ち着かせてくれる。
笑顔で迎えてくれたのは彼女、フラウアのお母さんだろう。
目元や雰囲気が似ている。
そしてその美貌たるや、子持ちとは思えないものだ。
彼女も将来こんな雰囲気になるのだろうか?
実にいい。
「さっ、勇者さま」
彼女に手を引かれ、俺は靴を脱ぎ最強の敵の元へと誘われるのであった。
勇者の豆知識②
勇者は剣も魔法も使える戦いのエキスパートだ。
後日、勇者は語った。
遊び人や商人から話術を教えてもらうべきだった……。




