転生後初の誕生日
朝起きると、マーサに新しくて綺麗なドレスを着せられた。
『どうしたの?こんな綺麗なドレス』
「お忘れですか?今日はお嬢様とレオン様のお誕生日ですよ」
『あれ?そうだっけ?』
「はい」
そうか……転生してからもう1年経つのか……
「朝食はご馳走を用意しましたよ。身支度をすませたらすぐに食堂ヘ向かいましょう!」
そう言ったマーサに連れられ食堂に辿り着いた私は、料理の量に驚いた。とても2人で食べ切れる量ではない。
父は宰相なので、娘が誕生日でもすぐには帰って来れない。母は病気。兄は勉強。
ダンスのレッスンのおかげでやっとレオンと話せるようになった。
レオンはもう席についていたため、私もすぐに席につき、朝食を食べ始めた。
料理が美味しい。いつも美味しいが、今日はもっと美味しい。
もっと食べたかったが、すぐにお腹がいっぱいになってしまって、やはり食べきれなかった。
部屋に戻り、マーサに尋ねた。
『マーサ、今日の予定はいつもと違うの?』
「はい。今日はお嬢様に領地の見学をしていただきます」
『領地かぁ……レオンは?』
「レオン様は別行動ですよ」
私は屋敷の外に出るのが初めてである。幼い頃はわからないけど、少なくとも私とセレーナの記憶にはない。そのため、結構楽しみなのである。
領地のこと知れるチャンスだから、しっかりと見回らなければ。
この見学の結果で、身の振り方を考えることになるかもしれない。
支度をすませ、馬車に乗り込んだ。
馬車に揺られ数十分経つと、馬車が止まり、降りる様に指示された。
馬車から降りると、そこには住宅街と農村地帯が混ざった様な風景が広がっていた。
『ここはどこ?』
「ここは領民の住宅地です」
『領民は皆ここに住んでいるの?』
「いいえ、ここは領地の南側です。住宅地は東側まで続いており、西側は森林地帯、北側は開発中の土地になっています」
『へぇ』
うーん?家と家の間に畑や田んぼがあったりする。これはちょっと不便じゃないか?
それに、やけに家がギュウギュウに並んでいるような気がする。
『マーサ、この領地に住んでいる領民の人数は分かる?』
「いいえ、正式な記録が無いので」
『え?戸籍は?』
「お嬢様、コセキとはなんでしょうか?」
『…あ…やっぱりなんでもない』
なんと!戸籍が無いだって?それじゃあ領民の人数も、名前も、性別すらもわからない。
災害にあったらどうするつもりだ?領民を助けるのにどれだけ金が必要になるかもわからない。そもそも助ける気なんてないのかもしれないが。
その後も様々な場所を見て回った。
その結果わかったことは、
・学校、銀行が無いこと
・病院が少なく、薬屋も不法なものが多い
・道がガタガタしている
である。
ウェスタリア家は公爵家なので、金が足りないわけではないだろう。つまり、金があまりない子爵や男爵の領はもっと酷いのかもしれない。
昼になると、一度屋敷に戻り昼食を食べた。
午後からは領の東側に向かった。東側も南側とあまり変わらず、道がガタガタしていた。
だいたい見終わり、屋敷に帰ろうと馬車に向かっていた。
私は油断していた。護衛がいるから大丈夫だと。
突然、背後から口を塞がれると、私は意識を巡らせる前に気を失った。