第二話 事情聴取
「スタンダロンは人工太陽光にて充電を行っている。それを一度停止しないと中に入ることは出来ない。少なくとも、人間であれば、な」
「しかし、私はロボットです。人間ではない以上、この空間に入ることは可能です」
「可能だとか不可能だとか、そういう問題じゃあない。スタンダロンの事情聴取には、僕も同行させて貰う。それが条件だ。もしその条件をのまないなら、あの捜査令状が記録されたカードを警察庁に提出するぞ。前代未聞の、ロボットによる命令無視だと言ってやる」
「分かりました、分かりました! あなたの言葉に従いましょう。まさかあなたがそこまで強気でやってくるとは思いもしませんでしたよ」
「僕は研究者としては長いんだ。今更警察勢力に脅されたところで何も変わらない。それが僕の意志だ」
「そうですか、しかし」
「しかし、何だ」
「スタンダロンがもし何も話さなければ」
「話さなければ?」
「記録を解析させていただきたい」
「そんなこと!」
させるとでも思っているのか、と続けようとしたが、
「だめですよね、申し訳ありません。分かっています。もしかしたら、何も話してくれない。そう思ったのです」
「もしそうならば、管理者コードを実行してやる。僕の最高傑作に泥を塗ったからには拭い去る行動も実施して貰うぞ」
「それは、」
「だめだとは言わせない」
僕は一歩前に出る。
「もしそれを否定するなら、僕はこれをデータでも実物でも提出するし、そもそもスタンダロンに会わせはしない」
カードをちらつかせて、僕は言った。
やれやれといった様子でオーイシは言った。
「仕方ないですね。分かりました。では、それで了承致しましょう。もし、『彼』が何も知らなかったらそのときは私の全身全霊を持って謝罪させていただきます」
「全身全霊、と言うには霊体が存在していないだろうがね」
軽口を叩く余裕も、今の僕にはあった。
それぐらい、スタンダロンには絶対的自信があったからだ。絶対に、スタンダロンは人を殺さない。そういった自信が、今の僕にはあったのだ。
「スタンダロンを、それ程愛しているのですね」
「愛しているのではない。これは、何だろうね」
少し言葉に詰まってしまったが、愛情ではない。
感情には表しづらいその感情を、僕は言葉にすることが出来なかったけれど、しかしながら、それでも僕はスタンダロンを守りたかったのだ。
「じゃあ、スタンダロンに会いに行こう」
僕は機器に設置されたたくさんのスイッチのうち一つを押す。
すると徐々にスタンダロンが入っていた空間は暗くなり、やがて真っ暗となった。
同時に、スタンダロンの部屋とこの部屋を繋ぐ扉から、がちゃり、と音が聞こえた。
扉の鍵が開いた音だ。それを聞いて、僕とオーイシは部屋の扉へと向かうのだった。