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招かれざる客 2

いろいろ整理しました。

 

 フーラはジヒトが相談に乗ってくれると言うのですかさず煽てる。


「さっすがジヒトさんっすね! 心が広い!」

「別に話を聞くぐらい誰でもできる」


 当然ジヒトも本気にはしていないが、褒められて悪い気分はしないのでまんざらでもない顔をする。

 フーラからしてみれば少しでもいい気分になってもらった方が話も捗るので、これくらい何のことはない。

 しかし、メルはそう思わないないのか顔を顰める。


「キモっ」

「酷いっすねー」

「全くだ」

「いいから話を進めなさいよ」


 ちょっとした冗談を言って遊んでいたジヒトとフーラにメルは冷や水を浴びせる。

 メルは面白くもない冗談などに付き合う気も聞く気もないので話を進めるように催促する。

 別にフーラは出し渋っていたわけではないので、エールで口を湿らしてから話し出す。


「この前家畜を買い付けに行った村でのことなんっすけどね。気味が悪いと言うか変なことが村で起きてたんっすよ」

「変なことって何よ」


 フーラが言うには、家畜を買いに行った村では不思議と家畜の餌が少しづつ減っていっていると言う。

 もちろん餌の管理は村の家畜の世話係がしっかりとしていると言う。しかし、餌は確実に減ってる。

 差し迫って餌が足りないわけではないが、このまま減り続けるようではさすがに村人たちも困る。なので、犯人を見つけたそうとするがなかなか見つからない。

 村人たちは解決するために聞き込みもしたし、監視というには大袈裟だが餌を管理している小屋を見張ってみたが誰も盗んでないと言う。

 村人たちから相談を受けたフーラだが自分ではわからないから、きっと解決してくれるであろう人に相談すると村人たちに言い都市エルスに帰って来た。

 そして今に至る。


「フーラに相談した村の人もなかなか勇気あるわね」

「ちょっと! どう言う意味っすか!」


 目の前でメルに馬鹿にされたフーラは憤慨する。それに商売相手ではあるがお世話になっている村人たちを馬鹿にするような発言は聞き捨てならない。

 ジヒトも内心ではメルと同じ考えだったが、さすがに本人を目の前に言うとこうなることはわかっていたので口には出さない。

 あからさまに馬鹿にするメルの代わりにジヒトはフーラを慰める。


「まあ、落ち着け。村人が頼ったのは他でもないフーラなんだろ?」

「そうっす。自分は村人さんたちにとっての救世主っす」

「ただ単にフーラ以外に話を聞くべき人が居なかっただけでしょ」


 ジヒトの慰めを聞いて誇らしげにするフーラにメルは正論を叩きつける。

 確かにフーラはあまり頭がいい方ではなかったが、村人からすればフーラも立派な外部の人間なので村にない知恵を頼るなら仕方ないことだ。実際、村人たちはフーラに相談しても薄々無駄だと思う者も少なくなかった。

 そもそもフーラは自分では解決できないと一度諦めた末にジヒトに相談しているのである。救世主も何もない。


「もういいか? 話が進まない」

「そうね。フーラは扱い易くて楽しいからついつい遊びすぎちゃうわ」

「……自分は玩具じゃないっす」


 項垂れるフーラの反応を見て楽しんでいたメルはもう満足したのか、話を進めるように手を差し出して促す。

 ジヒトはそんなメルを見て勝手がすぎると思うが、それを指摘すれば話がまた進まないのでぐっと堪える。

 フーラは溜息をつきながらも質問があるならばどうぞと言う。


「そもそもフーラが買い付けに行っている村ってどこにあるんだ?」

「ここから森沿に西へ行けばその村はあるっすね」


 その村はここ都市エルスから西に向かえば一日でたどり着くことができるところに存在する。また、都市エルスと同じく村の北には広大な森が広がっている。

 それを聞いたジヒトは案外近いんだなと思いながら質問を続ける。


「ないとは思っているが、フーラが餌をどうにかしているんじゃないよな?」

「そんなわけないじゃないっすかー。わざわざ村に出向いて家畜の餌にちょっかい出すほど暇じゃないっす」

「だよな」


 ジヒトもあくまで確認のために聞いてみたが、普通に考えてありえない。

 わざわざ買い付けに行って家畜の餌をいじるなど意味がない。何より肉屋のフーラにとって家畜に影響があるようなことは避けたい。なので、フーラが家畜の餌をいじることはない。


「ていうか、その村の子供が悪戯で何かやらかしてるんじゃないの?」

「まあ、それもありえるな」


 メルは普通に考えて子供の仕業ではないかと言う。

 ジヒトもその線もないとは言えないのでメルに同意する。

 しかし、フーラはまずそんなことはありえないと言い首を横に振る。


「村の子たちは家畜が村の収入源になることを知ってるんで餌で遊んだりしないっす。みんないい子でお利口さんなんっす」

「あらそう」


 それに村人が監視をしていたので子供たちが餌を管理している小屋に近づけばすぐにわかると付け加える。

 フーラの答えにメルは納得する。それにただの子供の悪戯であったならば、村人たちはフーラに相談しないだろう。何よりそんな答えはつまらない。


「因みにその村の家畜はなんなんだ?」

「羊さんっす」

「羊なら子供も興味を持ちそうな餌はなかったわね」


 メルは最初から家畜が羊と知っていれば、子供の悪戯だとは言わなかったとフーラに小言を言う。

 メルの言う通り羊は主に草しか食べないので子供が興味を持つようなものはない。

 フーラはいつまでも小言を言われるのは嫌なので、この流れで自分が知っている羊の情報を全て話す。


「え、えーとですね。羊さんは普段は村の中で放し飼いしてるっす。朝に村の中に出してあげて夕方くらいに餌が置いてある小屋の近くの柵に入れて管理しているっす。それで村の中の雑草を食べてもらっているそうっす。村が一通り綺麗になると南の草原に出してあげてるらしいっす。なんで、家畜の世話係は羊飼いみたいなこともしてるみたいっすよ。ただ、犬は居るみたいなんっすけど羊飼いみたいに頭のいい犬は居ないみたいで苦労してたっす。あとは……。あ、餌は草の他にも特別に豆もあげてるみたいです。自分たちが食べる分を少しお裾分けしてるみたいっす」

「なるほどね。でも、豆をあげているのを私たちに教えて良かったの?」

「あ! き、聞かなかったことにしてください。村の秘密なんっすよ」


 油断して口を滑らせたフーラは慌ててジヒトとメルに黙っているように頼み込む。

 フーラが口にした餌の豆はおそらく羊を少しでも美味しくするための工夫なので簡単に喋ることは許されない。

 幸いジヒトもメルも羊を飼って生計を立てる気はないし、そういう知り合いも居ないので言いふらしたりはしないとフーラに伝える。

 それを聞いたフーラは安心して一息つく。


「でもまあ、今のところ何で餌が減っているのかさっぱりわからないわね」

「まあ、状況を説明しただけっすからね」


 メルとフーラは一応考えてみるがまだわからない。

 それはジヒトも同じなのかより話を聞くために質問をする。


「村以外でおかしなことはなかったか?」

「村以外で?」


 一瞬ジヒトの質問に驚くフーラであったが、少し考えると思い当たる節があるのかすぐに答える。


「そういえば、羊を買い付けてここに帰って来る途中にゴブリンに襲われたっす。まあ、襲われるのはそこまで珍しくないっすけど、追い詰めても全然逃げなかったっすね。いつもなら最後の一匹になれば森に逃げるんっすけどね」

「本当に逃げなかったんだな?」

「はい。鬼気迫る感じで気持ち悪かったっす」


 フーラは元冒険者なので羊を守りながらゴブリンを追い払う程度は造作もない。

 そんなフーラが気味悪く感じるほどゴブリンは必死だったと言う。

 ジヒトは少し考えてから再度質問する。


「最後の質問なんだが、小屋を監視していると言っていたがそれはいつからいつまでだ?」

「朝から晩までって言うと大袈裟っすけど、大体日があるうちは監視してたみたいっすよ」


 さすがに大して困っていない家畜の餌のために夜通しで監視するのは大変ですからねとフーラは言う。

 それを聞いたジヒトは少し考え込むように目を瞑るが一呼吸おいてから目を開く。


「何かわかったっぽいわね」

「え! 本当っすか! 早く教えてほしいっす!」


 ジヒトが何かに気づいたことをいち早く悟ったメルは、自分で考えることを放棄する。

 フーラはフーラで早く答えが知りたいのか、今まさに飲もうとしていたエールをカウンターに叩きつける。

 ジヒトはフーラのエールを入れていたジョッキが空なことに気づいたので落ち着かれるためにもお代わりを出す。


「ほら、これ飲んで落ち着け」

「お代わりはありがたいとっすけど、早く教えてほしいっす!」


 ジヒトはただの推測なんだかなと思いながら苦笑いをする。

 それに勿体ぶるつもりもないので自分の考えをできるだけわかりやすく説明する。


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