平凡
平凡な人生だった。何をしても結果は平均、付き合った女性は可愛くもなく美人でもなく普通。学歴も、普通の学校で学び、卒業しただけ。なんとなく大学に行って、なんとなく卒業して、なんとなく適当な仕事に就いた。
なんの刺激もない。示された道をゆっくり、ぼーっと歩いてきた。そんな人生だった。
人並みに仕事をこなし、人並みに人付き合いをしてきた。それで得したのは、少しの昇給と、広く浅い人の輪。喜んだことはない。結局、何かを得たのかと問われたなら、俺は口を開くことはできないだろう。
そんな俺だからこそ、出せる答えだ。「平凡の俺か、大切な彼女か」
冒頭で、付き合った女性は普通だと言った。その言葉に変わりはない。ただし「外見だけで」言うのならば。
いくら平凡な俺だろうと、付き合えた彼女のことは可愛いと思うし、大切だ。むしろ、俺に釣り合わないのではないかと、そう思ってしまう程。付き合ってもうすぐ2年になる。そろそろ結婚のことも考えてきた頃だった。今までは。
こんな質問を一度は耳にしたことがあるだろう。
「家族と恋人、どちらかしか助けられないとしたら、どちらを助けますか」
もしそれを、実際に選ぶしかなくなったら。そして"家族"ではなく"自分自身"だったら。
「……彼女を、お願いします」
神の悪戯か、元々の運命か。
俺と彼女はほぼ同じ時期に心臓を悪くし、早急な移植手術が必要な事態となった。ただし医師に告げられたのは「運良く、移植可能な心臓が1つあります」
何が「運良く」だ。どうしてここで俺と彼女を比べないといけないんだ。俺の思いなんて、神には届かない。だから彼女に、幸せなこれからを。手術の無事な終了を。
「――お大事に」