ぶちゃいくな笑顔 [完]
昨晩、珍しく感情的に怒鳴り
後味悪く眠りに着いた葵
翌日、日の出の頃合いの薄暗い朝
…ふぁ~
(葵)… んっ?…お もたぃ…
目を覚ました葵
身体が重たくてなぜか
身動きがとれない
目を擦りながら横を見た
(葵)…う ぅゎぁ
(美岬)…くぅー…zzz
(葵) …美岬先輩… ?
美岬が葵の身体にぴったりと
くっ付き片手と片足を
乗せてぐっすり眠っていた
(葵)…よっこいしょ
…ッポ
美岬の方に身体を向けて
美岬を見つめ
あまりの寝顔の可愛さに
顔を赤くして微笑んだ
(葵) … かわいぃなぁ
ふぁ~
抱きつかれたまま
美岬を見つめ
2度目の眠りについた
普段隙の全くない美岬の
無邪気に抱き付く無防備な姿
仲の良い姉妹のように
ベットで美岬に抱かれ
向かい合って眠る
…
太陽も上がってきた頃
カーテンの隙間から日差しが
眠っている葵に射し込む
…
ん うぅ~
(葵)… ぁれ?
目の前にいたはずの美岬がいない
先に起きて絵を描きに上がっていた
(葵)… …
ベットに座り込み
美岬のいた所を見つめた
昨日の夜キツイ言い方をした葵
起きて美岬になんて声をかけたら
いいか、どんな顔で美岬と
顔を合わしたらいいのか
分からなくなっていた、
不安な気持ちと、さっきまで
隣で仲良く眠っていた
美岬がいなくなっていて、
心細く寂しい気持ちが
混ざりあっていた
(葵) ギュッ
美岬の使っていた枕を
力いっぱい抱き締めた
…リビング
サクッサクッサクッサクッ
シャシャシャシャ
シャッシャッシャッシャッ
いつものように朝食の
いい匂いがするリビング
朝食を作る国枝と
慣れた手付きで朝食を手伝う楓
(国枝) … ふぅ
(楓)よいしょおっ
出来たっ♪
国枝さんっ?
どうですか?
(国枝)凄いですねぇ
南くんは料理が得意なんですか?
(楓)いえ、別に得意
とかじゃないですよっ
ただ野菜盛り付けただけですもんっ
朝ごはんくらいは
家でもよく作ってるし
楓の盛り付けたサラダが
綺麗に盛り付られていて
少し驚いた国枝
(楓)次はなにしたらいいですか?
(国枝)ならお味噌汁を
頼んでもいいですか?
(楓)任せてくださいっ♪
国枝は楽しそうに
手伝いをしてくれる
楓を嬉しそうに見ていた
(国枝)すみません
客人なのにこんなに手伝わせて…
(楓)全然っ! 平気ですよ♪
…
ガチャッ
(葵)おはようございま~す
(楓)あっ おはよう夏川さんっ
(国枝)おはようございます
リビングに降りてきた葵
(葵) …
辺りを見渡した
(葵) … 美岬先輩は3階か…
あれっ?
飛鳥わ?
(楓)なんか1人で出てったよ
昨日の感じだと結構
ショックだったみたい…
(国枝)…
(葵)そっかぁ…
(楓)…
あっ!
国枝さん
私もなにか手伝いますよっ
(国枝)そうですねぇ…
…
…それなら夏川さんっ!
もう朝食ができるので飛鳥くん
を呼んで来てもらって
もいいでしょうか?
(楓 国枝)… チラ
目を合わす2人
(楓)うんっ
そーしなよっ
朝食は僕手伝ってるから!
(葵)ん~…
分かりました…
呼んできますねっ
…ガチャッ
玄関から外へ出た葵
っはぁ~ あつーいっ
外は朝から猛暑
(葵)飛鳥のやつ…
どこ行ったんだろぅ
とりあえず海の方へ向かった葵
…リビングの台所
味噌汁を作っていた楓
(楓)…飛鳥、元気出すと
いいんだけどなぁ
…でもなんで
飛鳥フラれたんですかね?
(国枝)…
手を止めて
少し黙りこんだ国枝
(国枝)お嬢様にも…
いろいろと考える事が
あるんだと思いますよ…
国枝は美岬の事をある程度
把握していた、
美岬がなにを深く考え混んで
いるのか、知っているのかも
知れない…
砂浜…
1人砂浜で海に向かって
石を投げていた飛鳥
(飛鳥)…っ
ジャポン
(飛鳥)…はぁ
…
なに落ち込んでんのっ?
…
(飛鳥)っ!?
…
なんだ…葵か…
離れた所から砂浜を歩き飛鳥に
近づきながら声をかけた葵
(葵)あんた… 落ち込んで
海に石投げてって…
嫌な事があった時の学生の
典型的なやつだねっ
(飛鳥)うるせぇー
…
(飛鳥)…
(葵)…
バシャーン
ふたりで立って並んで
海を眺めている
(葵)まだフラれたわけじゃ
ないのに、
そんなに落ち込む事ないよっ
元気だしなってっ
(飛鳥)ジー…
目を細めて葵を見つめる
(葵)なによっ?
(飛鳥)なんでお前が
それ知ってんだよ…?
(葵)…
…っっあ! … てへっ♪
(飛鳥)てへじゃねーよ!
お前どーせどっかで
隠れて見てたんだろっ?
(葵)… (よそ見)
(飛鳥)ったく
…
シーン
(飛鳥)はぁーーーっ
よりによってあんなダセーとこ
見んじゃねーよっ
(葵)…
…なぃよっ
(飛鳥)?
(葵)ダサくなんかなかったよ!
昨日の飛鳥っ 私が今まで
見た中で1番カッコよかったよ…
(飛鳥)はあ?
なに言ってんだよお前
自信満々であんな事して…
あんなのホントにだせぇよ
(葵)だからそんな事ないって!
ホントにカッコよかったよ…
まだフラれたわけじゃないのに
こんな所でふて腐れてるほうが
よっぽどダサいよっ
(飛鳥)…
核心を突かれた飛鳥
言い返す言葉がなかった
バシャーン バシャーン (波の音)
(葵)元気出しなよっっ…
飛鳥を見つめる
(飛鳥)…チラ
目を合わせた2人
…はぁ~
分かったよ…
(飛鳥)…あ~あっ
お前に慰められると
俺がバカみてぇだよっ
(葵)…ってなによそれ~っ ムスッ
(飛鳥)…ははは
冗談だよっ♪
…
…
ありがとなっ… ポン
…
飛鳥は葵の頭に手を乗せて
頭を軽くポンポンと叩いた
…
バシャーン バシャーン (波の音)
(葵)ぅ…
…
照れた葵は下唇を噛み締め
足元を見つめて
両手を力いっぱい
握り締めていた、
…
凄く照れているが 幸せそうな葵
波の音だけが聞こえてくる
時間の止まった砂浜で、海だけが
動いているような気分だった
…
(楓)…あすかぁーっ?!
(飛鳥)…? 楓の声だ…
なんなんだ?
(葵)っあ!
朝ごはんできたんだ!
そのために飛鳥
呼びに来たんだったっ
(飛鳥)おいおい…
戻ろーぜ
(葵)うんっ♪
…
3階で葵の絵もラストスパート
絵に色を付けていた美岬
(国枝)…お嬢様
朝食の用意ができました…
(美岬)…
絵から目を離さない美岬
…そぅ…
先に食べてていいわよ
もぅ仕上がるから
(国枝)かしこまりました
…ガチャッ
リビングに戻った飛鳥達
リビングに入った瞬間
漂う朝食の香りに
(飛鳥)あ~っ
いい匂いだなぁ
ほんと腹へったぁ~
後ろで飛鳥を見ていた楓
(楓)夏川さん…?
飛鳥元気戻ったみたいだねっ…
小声で話す楓
(葵)うん…♪
(飛鳥)ん…チラ
なに話してんだ?
(楓)んーん
なっ なんでもないよっ(焦)
(飛鳥)ふーん…
国枝さんは?
(楓)多分美岬先輩呼びに
行ったんだと思うよっ
あっ! あすかっ
このお味噌汁
僕が作ったんだよっ♪
このサラダもっ
(飛鳥)おっ うまそうだなぁ~
ガチャッ
リビングに降りてきた国枝
(国枝)お嬢様は
先に食べてろとの事です
先に召し上がりましょう
(飛鳥 楓)はーい
(葵) …
…美岬せんぱい …
優れない顔で下を向く葵
…
モグモグモグモグ
先に4人でテーブルを囲んで
朝食を食べ始めた
昨日の朝に比べて物静かなリビング
(葵) …
暗い表情で全然箸が
進んでいない様子の葵
(葵) … どーしよぉ
美岬先輩、朝も早くから
ずっと私の絵を
描いててくれてるのに
あんな事言うん
じゃなかったよぉ
なんて声かけたらいいんだろ…
昨日の事が不安で
たまらない葵
表情がいっそう暗くなる
(飛鳥) …
飛鳥も葵と同じで
美岬の事を考えていた
ゴクゴクゴク…
(飛鳥)はぁ
おいしかった
ごちそうさまでしたっ
1番に食べ終わって
お皿を台所へ持って
いこうとする飛鳥
(国枝)飛鳥くんっ
そのままでいいですよ
まだご飯を食べていた国枝
(飛鳥)いいんですよっ♪
何も手伝っていないんで
皿くらい洗いますねっ
(国枝)っん!
んんんへふんほっっ …
口に物をいれたまま
喋ろうとした国枝
(葵 楓)っぷ はは♪
(飛鳥)国枝さん…
食べるか喋るか
どっちかにしてくださいよぉ
いいですよ、
僕やりますからっ
(国枝) …
顔を少し赤くして
口元を拭く国枝
(国枝)失礼しました…
いいんですよ飛鳥くん!
気にしないでっ
そこに置いててください
(飛鳥)…そっ
そうですか…
…
ガチャッ! キィィィ…
…
扉が開く
(飛鳥 葵)…クル
扉の開く音が聞こえた…
真っ先に扉の方へ振り向く2人
扉からスカート丈の長い
純白のワンピースを着た
美岬が姿を見せた
(美岬)…
…おはよっ
(飛鳥 楓)おはようございます
…
(葵)っ… モグモグ
目を合わすのを、なぜか恐れて
何も言わずに朝食をとっていた葵
(美岬)…? 夏川さん?
(葵)…
美岬の方へ振り向いた
(美岬)絵が仕上がったわ♪
食べ終わったら
見に来てくれるかしら?
(葵)はっ…はぃ
おもむろに返事をした葵
(美岬)ニコッ
…チラ
飛鳥と楓の方を向く美岬
(美岬)飛鳥くん達も一緒に
来てもらってもいいかしら?
(飛鳥 楓)あっ、はい
(美岬)じゃあ待ってるわねっ
ガチャッ
扉を閉めて3階に
上がって行った美岬
…
カシャカシャシャシャシャ
…
朝食を済ました葵達
台所で洗い物をする国枝
物静かにテーブルを
囲んでいた3人
(飛鳥)…
(楓)…
(葵)…
…
(飛鳥)そろそろ上がろうぜ…
(楓)そうだねっ
美岬先輩待ってるし
(葵)…
(飛鳥)じゃあ国枝さん
僕ら上がりますねっ
(国枝)はい
ガチャッ
…
何も喋らず3階に上がる飛鳥達
飛鳥と葵の様子を見て楓まで
なぜか緊張している
(飛鳥 葵) … はぁ~
どんな顔で美岬先輩に
会えばいいんだろ…
広い空間の真ん中に絵がポツン
と置いてある3階
絵には布が被されていた
美岬はベランダに出て
1人海を眺めいる
どこか悲しい顔をしているようで
やりきったような
清々しい顔をしている
(美岬) …
夏川さん喜んでくれるかしら…
海を見ながら1人呟く
(美岬)…?
来たわね
(葵)…
(飛鳥)…はぃ
(美岬)絵の前に来てくれるかしら
3人は無言のまま絵の前に
移動する、葵は下を向いて
美岬と目を合わせようとしない…
美岬は絵の後ろに立ち
いつでも絵を見せれるように
被せている布に触れ
正面で下を向いている葵を見つめた
(美岬)夏川さん…待ちに待った
絵が完成したわよっ
覚悟はいい?
ようやく美岬を見た葵
(葵)…はぃ
…
…
(飛鳥)ドキッ
…
(楓)ドキッ
…
(葵)ドキッ
(美岬)行くわよ…
…っ!
ドキッ
…
…パサッ
…
(飛鳥 葵 楓)…っっっっ!!!
布を勢いよくはぐった美岬
(飛鳥)っっげ!!
(楓)えぇ~~っ!
驚いて顔を真っ赤にする飛鳥と楓
(葵)っっっな!!!!
なっっ なんなんですかぁ!?
これわぁっっ!?
ッサ
顔を真っ赤にして驚いた
葵はすごい焦りようで飛鳥達
の方を振り向き身体で絵を隠す
(葵)ちっ ちょっとぉ!!
みさきせんぱいっっ!!
(美岬)うふっ
なあにっ?♪
(葵)なあにじゃないですよっっ!
なっ なんなんですかぁっ
この絵はっ!
…
太陽カンカンの
雲ひとつない透き通った空
砂浜の海辺で
顔を真っ赤にした葵が
焦って両手で胸を隠している
葵の左後ろで葵の水着を片手に持ち
ベロを出す美岬
その後ろで顔を真っ赤にして
驚く飛鳥と目を隠す楓
…
この絵と全く同じように
飛鳥も楓も葵も驚いていた
(美岬)あらっ?
お気に召されなかったかしら?♪
(葵)当たり前じゃなきですかっ!
いい加減にしてくださいよぉっ
(美岬)うふふっ
ごめんなさいっ♪
これは私のっ♪
あなたにあげるのはこれよっ
…
パサッ
1枚目の絵をめくり上げた
…
… …っ!
(飛鳥 楓)…うっ うゎぁ~
絵の反対を向いて
絵が見えていない葵は
飛鳥達の反応を見た
…
(飛鳥)すっ… すげぇ …
本当に驚いた顔をする飛鳥と楓
(葵)…?
…
…
ゆっくりと絵の方へ振り返った
っっ…
何も言えず黙り混み
固まっている
すごすぎる絵に度肝を抜かれた
(葵) …
すっ すごいっ …
みっ みさき…せんぱい…
これ…
こんなに凄い絵を
私のために…
(美岬)そうよ…
あなたのために描いたの
どうかしら?
気に入って貰えたかしら?
(葵)はいっ…
私…凄く楽しそぅ…
……ぅ…うっ うぅ… (涙)
絵を見て、美岬と会話をして
ホッとしてか、嬉しくてか
絵に感動してかは、分からないが
なぜか勝手に涙が出てきた葵
(美岬)…夏川さん?
(葵)…うっ…うぅ…うぇ~~ん (涙)
涙は止まることなく、
ボロボロと流れ出した
そんな葵を後ろで
見ている飛鳥と楓
(楓)…うっ
なんかワケわかんないけど…
貰い泣きしそうだよぉ…
(飛鳥)おいおい葵…
なに泣いてんだよ…
…
(葵)…うっ…だって…
昨日美岬先輩にあんなひどい
言い方したから…うっ
…嫌われたんじゃないかって…っ
1人で思い込んじゃって…ぅ
ぅ…なっ…なんか不安で…
美岬先輩の事大好きだから…
(美岬)…… ぅぅっ
葵を見て、葵の言葉を聞いて
美岬も涙が溢れ出してきた
(美岬)夏川さん…
…サッ
葵に近づき泣いている葵の
ほっぺたを両手で触れた美岬
(葵)みさきせんぱい…
美岬にほっぺたを
触れらまま美岬を見つめた
(美岬)…ごめんなさい
そんなにあなたが考え込んでいた
なんて思わなかった…
泣かないで…夏川さん
本当にごめんなさい……ぅうぅ
涙流しながら
葵の頭を撫でた美岬
(葵)うっ…うぇーーん…
ごめんなさいっっぅ
みさきせんぱいっっ
美岬の胸に顔をおもいっきり
あてて両手で美岬の腕を掴んで
泣きながら謝った葵
(美岬)なんであなたが謝るのっっ
謝らないでっ
ほらっ 顔を上げてっ
葵の顔を上げた
(葵)うぅぅぅ
涙でぐちゃぐちゃの
葵の顔を見た美岬
(美岬)もぅ…
可愛い顔が台無しじゃない…
サッ サッ
指で葵の涙を拭く美岬
美岬と葵を後ろで
見ている楓と飛鳥
(楓)ぅうぅ
なんだか分かんないけど
涙が止まらないよぉ~…ぅぅ
(飛鳥)… …フッ
…ってか
いったい2人に昨日になにが
あったんだよっっ
涙を流す楓と
嬉しそうに見ていた飛鳥
(葵)うぅ…
腕の裾で涙を吹いた葵
(葵)美岬先輩…、
この絵…貰ってもいいんですか?
(美岬)えぇっ…
もちろんよっ ニコッ
美岬も涙を拭いて答えた
(葵)へへへ…
やったぁっ♪♪
涙を流した後の、ぶちゃいくな顔で
満面な笑みで喜んだ葵…
…
(美岬)うふっ♪
(飛鳥)はははっ♪
(楓)へへっ♪
葵の笑顔を見る飛鳥達、
ぐちゃぐちゃになった
幸せそうに喜ぶ葵の顔に
つられて、微笑んだ
(国枝)…
階段に隠れている国枝
(国枝)うふ…
…
こうして、別荘での2泊3日
の生活を無事? 終えた飛鳥達…
…
1階の玄関
(飛鳥)……
帰りの支度をしている楓と葵と美岬
飛鳥は先に支度を済まして
1階の玄関の前で美岬が幼少気
に描いた絵をじっと眺めている
(飛鳥) …
凄い絵だなぁ~
俺ってこの絵を、
一体どこで見たんだろうなぁ…?
こんにちは。
露木こころです、
この小説をここまで読んで
くれた方がいましたら、ありがとうございます!!




