葵の覚悟
晩御飯を食べ終え
少しリビングでくつろぎ
飛鳥達は自分達の部屋に戻った、
静かになった別荘の中
飛鳥は無言で部屋の
ソファーに座っていた
(飛鳥)…
おい かえでっ…
いつまで無視すんだよっ
(楓)…
ベットの上に座って
携帯を触っている楓
(飛鳥)…ったく
ちょっと唯と電話してくるなっ
部屋から出た飛鳥
その頃、葵は1人
別荘の外で考え事をしていた
玄関の前に座る葵
…
ミンミンミンミンミン
涼しい風が吹き
海の方から微かに
波の音と虫の鳴き声が聞こえる
(葵)…
…
はぁ…
…
美岬先輩と飛鳥…
お似合いだよ…
私に入る隙なんてないもん…
両足を抱え込んで
下を向き悲しそうな
表情を浮かべる葵
ボソボソと1人呟く
(葵)美岬先輩と出会って
飛鳥の事すごく意識しちゃう
よーになっちゃったなぁ…
はぁ…
今日1日美岬と飛鳥を見ていて
自分が退く事を考えていた葵
(葵)やっぱり私
美岬先輩を
応援した方がいいかなぁ…
この恋が片思いで
終わるの分かってるし…
…
美岬先輩は飛鳥の事が好き
飛鳥だって絶対、
美岬先輩の事好きだよ…
見てて分かるし…
…私は…飛鳥が好き
…
なんかだかもう…
苦しいよぅ…
複雑な表情で頭を抱える
以前喫茶店で美岬に
言われた言葉を、ふと思い出した葵
(美岬) …でも私は
あなたの事も好きなの…
…
顔を上げて月を見た
…
(葵) うんっ
やっぱり、これが1番いいよ…
…
月を見ながら呟いた葵
2階の廊下の窓のそばで
夜空を見ながら
電話をしていた飛鳥
(唯)お兄ちゃん
ゆいも行きたかったぁ
(飛鳥)ごめんな
また今度一緒に海行こうな♪
(唯)む~っっ
また今度っていつ?
(飛鳥)夏休み始まった
ばかりだからいつでもいいぞっ
(唯)じゃあ行く時は
良お兄ちゃんも学お兄ちゃんも
一緒にみんなで行きたい!
(飛鳥)そうだなっ!
みんなで行こうな♪
(唯)…うん…
分かったっ
テレビの前に座って
少し、しょげて話していた唯
(飛鳥)あっ!
そーいや
海で綺麗な石拾ったから
唯にプレゼントしてあげるよっ
だから機嫌治せよ♪
綺麗な石を摘まんで
窓越しに綺麗な石を見ていた飛鳥
(唯)きれいな石?
ってどんな石なのぉ?
(飛鳥)それは見てからの
お楽しみだよーんっ
(唯)えぇ~
早く見たいよぉー
(飛鳥)楽しみにしてなっ
チラっ
…っん?
…あいつなにしてんだ…?
窓から
暗い表情の葵が
目に入った飛鳥
(飛鳥) …あいつ…
やっぱなんかあったのか…?
…唯っ
もう遅いし今日は寝な?
また明日電話をするからな?
(唯)うん…
分かったぁ
おやすみなさぁーい
(飛鳥)おうっ
おやすみなさい
…ピッ
電話を切り玄関に向かった飛鳥
ガチャッ
(飛鳥)なにやってんだよっ
(葵)……?
後ろを振り向く葵
(葵)…飛鳥?
あんた…
どーしたの?
扉の前で座り込んでいた葵
見上げるように飛鳥を見た
(飛鳥)どーしたの? じゃねーよっ
なに暗い顔してんだよっ
バサッ
軽く羽織る服を葵に
被せた飛鳥
(葵)…
気が利くじゃん
飛鳥のくせに
…
別にそんな顔してないよ
考え事してただけっ
(飛鳥)ふーん…
よいしょっ
葵の横に座った
(飛鳥)美岬先輩は?
(葵)美岬先輩?
絵を描くって3階に上がったよ
あっ!
美岬先輩の絵見た事ある?
(飛鳥)見たことねーな…
美岬先輩って絵描くの?
(葵)ホントに凄いよっ!
見て、ほんっとに
ビックリしたもんっ
(飛鳥)へ~…
学よりも??
(葵)ん~…
学も絵は上手だけど
レベルが違うかなっ
(飛鳥)マジかっ?
それ凄そうだな!
明日見せてもらおっとっ
…
いつものように
仲良く話す飛鳥と葵
…てかさっ
(葵)飛鳥…
(飛鳥)んっ?
…
(葵)美岬先輩の事好きでしょ?
(飛鳥)…っは?
なっ なに言ってんだよっ
いきなり…
んっ んなわけねーだろっ!
いきなり過ぎて
動揺を隠せない飛鳥
(葵)なにって
あんた見てたら分かるよっ
美岬先輩は気付いてないけどね…
(飛鳥)マジか…
俺そんな出てる?
(葵)めっちゃ出てる
(飛鳥)楓も気付いてる?
(葵)う~ん…
多分気付いてるでしょっ
(飛鳥)マジかぁ~ぁー…
複雑な気持ちを持つ葵
(葵)それで?
どーするの?
あんた結構本気っぽいじゃんっ
(飛鳥)ん~…
でも今回は確かに
俺本気なんだよな…
(葵)……
キス…
しちゃいなよっ
(飛鳥)…はっ?
んな事できるかよ!
(葵)そうなの?
いつもの告白みたいな
ノリでしてみたらいいじゃんっ
美岬先輩だって女の子だし
絶対喜ぶと思うよ?
(飛鳥)バカかよお前っ
コクるのとキスは全然違うだろっ!
てゆーか美岬先輩も喜ばねーよ
やっぱ好きな人に
されるから嬉しいんだろ?
…
また、以前言われた
美岬の言葉を思い出した葵
(葵) …鈍感くん …
好きとか関係なく
やっぱり
きゅんってくると思うよっ
多分たけどね…
貴重な女子からの意見だよっ?
(飛鳥)だとしても
そんな事できねーよっ
まあ…でも…
この気持ちは伝えるよ!
…シーン…
(葵) …
バシッ
背中を強く叩いた葵
っ! いってぇっ!
(飛鳥)なにすんだよっっ!
(葵) …
がんばってよっ
私は… あんたを応援してるから
ニコッ
悲しそうに笑う葵
(飛鳥)…?
…ああっ!
…
(葵)よっこいしょっ
立ち上がった葵
(飛鳥)葵もなんか
あったんじゃねーのか?
今日のお前なんか様子変だぞ?
(葵)…そう?
そんな事ないよっ!
もう部屋に戻るよっ
ガチャ
玄関に入って行く葵
おいっ!
ガシッ
(葵)…えっ?
(飛鳥)なんか
あったんなら言えよ
お前がおかしいの
見てて分かんだよっ
玄関で手を握られる葵
少し顔を赤くして下を向いていた
(葵)しつこいよ…
なんにもないって
言ってるでしょっ!
バッ
手を振り払った葵
(飛鳥)こっわっ
なに怒ってんだよ…?
自分の部屋に戻ろうとした葵
…おいっ
(飛鳥)これやるよっ
ポケットから綺麗な石を
取り出して葵の手のひらに乗せた
(飛鳥)唯にやるつもりだったけど
また時間ある時砂浜で探すし
これやるから元気出せよっ
…石?
(葵)石で元気出すって
私は何歳よ…
でも… ありがとう
(飛鳥)部屋戻ろうぜっ?
…グッ
もらった石を握り混んだ
どこか悲しそうだか覚悟を
決めたような顔をしていた葵
(葵)…うんっ
もう眠いし
戻ろっ
これであんたの記録
また更新かな?
10連敗だっけ?♪
(飛鳥)8だよっ!
ってか、なんで
フラれる前提なんだよ…
部屋に戻った2人
ガチャ
(飛鳥)ふぁ~…
眠たっ
(楓) くーくーくーzzz
(飛鳥)寝てるし…
まあいいや、
明日になれば楓も機嫌治すだろ
俺ももう寝よっと…




