第四話 二人の男と謎の少女
今まで本編のおまけだったASに一つのシナリオが追加されました。
世界観は本編と同じ。まさに、AnotherStoryというべきもの。
ちゃんと連載していく予定なのでこちらもよろしくお願いします。
「ほう、なかなかやるな」
このコロシアムの制御室。映し出されているのは勝利した挑戦者の二人。
「思ったとおりの腕前だ。よし、ここからはコイツらでいくか」
そう言って映し出されたのは見たことのない魔物たち。
「どうなるか楽しみだ」
そういって男はほくそ笑む。
コンコン
誰かが来たようだ。だが、ここは誰も近づかない場所にある。よほどの理由がないと来ないくらいだ。
「なんだ?」
「例の『ミヤ』が逃げ出しました。現在、ここ、コロシアムに来ていた男とともに行方がわからなくなってしまいました。捜索に何人か出しましたがいかがいたしましょう?」
あいつか・・・まあ、あいつがいなくなってもたいした問題ではないしどっちでもいいな。だが、人間と一緒か・・・面白くなりそうだ。
「しばらく様子を見だ」
「わかりました」
「こっちも楽しみだ」
その頃、街の宿の中、何かに隠れるように逃げ込んできた男と少女の二人。
「はぁ、はぁ・・・最悪だ」
男は頭を抱え込むようにストンと床に座り込み呟く。窓の外には追ってきたのか黒い服の男たちが走り回っていた。そんなやつらに追われる原因は目の前にいる少女だ。
「・・・」
目の前にいる少女は安心したのかベッドで眠っている。
この少女と会ったのは数十分前、そう、コロシアムの中。
「よっしゃーーーー!!」
隣で騒いでいるのは一応俺の相棒であるクド・クルハルト。ハンターとしての才能はあるが馬鹿なところがハンターとして致命的でもある。
「これでもとの二十倍だぜぇ!よし!次賭けてくるからそこで待ってろよ、アルト」
そういって、行ってしまった。だが、
「なんか、飲み物でも買ってくるかな」
そういって、さっき言われたことを無視して買いにいく。別にずっとそこに居なくてはいけないわけではないからいいだろう。と売店のほうに歩き出す。すると、
ドンッ
横から何かがぶつかってきた。
「ん?」
何かと見てみるとそれは少女であった。
「おい、大丈夫か?」
ぶつかって転んだのか床に座っている少女に手を差し出す。
「あっ、はいっ、大丈夫です」
そう言って少女は俺の手をつかみ立ち上がる。
「あの、すみませんでした」
「いや、いいよ。こっちはなんともなかったし」
「で、でも―――」
「いたぞ!こっちだ!」
少女の言葉をさえぎるように男の声が聞こえてきた。少女はそれに反応するようにビクッと振るえ俺の後ろに隠れた。
「お、おい―――」
「さあおとなしくするんだ」
少女に声をかけようとすると目の前から男の声が、そして、周りを囲むように同じようなやつが立っていた。
「さあ、こっちにくるんだ」
少女は俺の背中にくっつき首を横に振る。少女に近づこうとする男をさえぎるように腕を横に伸ばす。
「やめろ。嫌がってるだろ」
強引に連れて行こうとするやつらが気に食わない。どんな理由があろうとも許せない。
「何だおまえは?邪魔だ!どけ!」
男は俺に向かって手を伸ばす。俺はその手をつかみ手前に引く。すると、男は前に傾き一歩前に足を出す。だが、その足は横に払われ重心が傾き男はそのまま倒れた。
「おっと、わりぃ。手が滑っちまったぜ」
「てめぇ・・・」
男はそう言って起き上がった。ただ倒しただけだからダメージもないに等しい。ただ怒らせてしまっただけのようだ。
「やっちまえ!」
周りを囲んでいた男たちがいっせいに襲ってくる。
(これはちょっとヤバイな・・・仕方ない)
ポケットの中からあるものを取り出す。そして、
ボンッ!!
それを床に投げつけると軽い爆発音とともに大量の煙が出てきた。
「ほら、行くぞ!」
そういって少女の手を握り走った。
そして今に至る。
「この子はいったい何者なんだか」
ここまで連れてきてしまったがこの子について何も知らない。追われているからには何かあるのだろうが・・・これからどうするか。
「ふぅ〜・・・」
いろいろと悩んでいたら眠気がきた。
一時間後
「ったく、アルトのやつ急に消えやがって・・・結局俺一人で賭けることになったし・・・ぶつぶつ」
ガチャ
そういって部屋の扉を開けると・・・
「ん?こんなとこに居たのかよ、アルト。しかも寝てやがる。ちょっと悪戯してやるか」
近くにあったペンの蓋を開けアルトに近づく。そしてあることに気づいた。
「ふっふっふっふっ・・・ん?・・・は?・・・え?・・・お、お前!?とうとうやらかしてしまったのか・・・誘拐とは、しかも、少女―――」
ゴツンッ!!
「オマエナァ〜・・・」
振り返ると怒り顔のアルトが拳を握ってメラメラと・・・
「アラ、オキチャッタノネ・・・」
完全に目が覚めたアルトはボロ雑巾のようになった相棒を部屋の隅に投げ捨てる。
「ちょっ、扱いひどくねぇ!」
「当たり前だ!俺をそんな風に見るやつは生きる価値はねえ!」
そう言って睨みつける。
「いや、さっきのは冗談だからさ。そ、それよりさ、この子誰?」
何とか話を変えようとベッドで寝ている少女を指す。
「さぁ、誰だろな」
「って、おい!!知らないやつを部屋に入れてるのかよ!それとも連れてきたのか?・・・やっぱり、誘拐―――」
ドゴッ!!
「い、いや・・・それで殴るのはなしでしょ・・・バタリ」
アルトが持っているのは鞘に納まっている剣。それで殴られたクドは床に倒れている。まあこれはいつものこと。バタリといえるくらい余裕がある。だから大丈夫だろう。もし死んでしまったらこのまま立ち去るかな。
「いや、置いてくなよ!せめて墓くらい立ててくれてもいいだろ!」
クドは何事もなかったかのようにむくっと起き上がった。まあ、それよりも
「何で考えていたことがわかったんだ?」
「そりゃぁ、おめぇ、長年の付き合いだからさ」
キランと効果音が付くようににこっと笑い、親指を立てている。
「いや、一ヶ月しかたってないし」
「なんだよ。水差すなよ。他人がせっかくかっこよく決めてるのによ」
いや、かっこよくなかったから・・・まあそんなことよりこれからどうするかだ。
「この子はいったい何者なんだろう」
「そうだな・・・姫様とかだったりして・・・いや、貴族っていうほうが確率が高い・・・いやいや、特別能力者って言うのもいいかも・・・ぶつぶつ」
クドはなんだか知らないが一人の世界に入り込んでしまったようだ。まあ、放って置くか。
あの状況から見ると、あの組織に関係していることは確かだが、あの組織も謎が多いからな・・・まあ、本人に直接訊けばいいか。
そう考え、少女の使っているベッドに寄りかかるように剣を抱え床に座る。
いまは、ゆっくりと休んでおくとしよう。
目を閉じ、また眠ろうとしたところにクドが話しかけてきた。
「アルト!わかったぞ。この子はどこかの国の姫様だ」
「・・・はあ?」
その根拠は何だと問う気にもなれない。なぜなら・・・
「そして、特別の力を持っているんだ。そう、その力によって狙われているんだよ。ということは護衛が必要。そして俺が、その護衛をするんだ。いろいろな者から姫を守るナイト。そんな二人の距離は近づき、やがて、恋をする。そして告白!愛し合う二人は国に戻り、裕福ら暮らしを・・・いい・・・すげぇーいい・・・これは一生に一度とないチャンスだ!」
そう、クドの願望だからだ。しかも、作り話の世界みたくそんなうまくいくはずもない。だから・・・
「どうせまた外れるだろ、あたっていたとしてもそんなチャンスつかめないだろし。考えるだけ無駄だぞ」
そう、まえにも何度かあったのだ。そして全てはずしている。だが、クドはそんなこと気にしていないようだった。というより・・・
「なにいってんだ?俺がはずすことなんかないだろ?」
都合よく忘れているのかも知れない。本当に自信たっぷりに少女に近づいていくクド。
おい、今実行するのかよ。寝かしておいてやれよ。と思うが疲れていて動く気にもなれない。まあ、ただ、起こすぐらいならいいだろ。
「姫様。もう起きる時間ですよ〜」
クドはそういって少女に触れた瞬間。
バシッ!
そのクドの手が少女の手によって払われていた。そして
「さわんじゃねぇよ!この変体妄想男が!」
とクドに向かって言った。
「・・・えっ?」
払われたクドはそういってそのままの状態で固まっている。俺も驚いていて動けずにいる。確か、俺の記憶ではおしとやかというかおとなしいような感じでもっと丁寧な言葉を使っていた印象があるのだが・・・あれ?記憶違いかな?そう考えていると
「・・・お姫様が・・・俺の、お姫様が・・・」
さっきまで固まっていたクドがなにやらつぶやきだした。
「姫とラブラブ計画が・・・ウハウハ生活が・・・うわあああああ〜」
突然騒ぎ出す。
「何だよこれ!何処が姫だよ!ぜんぜん違うじゃん!誰だよそんなこといったの?これじゃ、姫じゃなくて悪魔だよ!めっちゃ性悪の悪魔だよ!こんなやつさっさと追い出しちまえ・・・よ、うっ!・・・」
バタッ!
突然倒れるクド。よく見ると少女の脚が伸びていた。
「黙れ!このクズ!」
少女の態度でわかった。そう、クドが倒れたのは少女が蹴ったからだ。しかも
「おれは・・・クズじゃない、クドだ・・・」
そういってクドは気を失った。
「クド・・・おまえ、嫌われてるな」
そういてクドと少女を見る。
これからどうなっていくことやら。
どうでしたか?
気づいた人もいると思いますがキャラは本編と似ています。特に性格が。
まあ、話の内容はこっちのほうが決まっている感じですよね。でも、本編と最終的に交じり合うような感じにしていきたいと思っています。
今後を期待!