3話 彼が願うはせめて友とともに side佑樹
遥の親友 黒崎佑樹視点となりますのでご注意を!
俺は自分の顔が嫌いだった。
あ、もちろん父母からもらった顔だから嫌いというわけではない。
父さんも母さんも大好きだったし和兄は最高の兄だ。
でも俺はこの顔のせいで色んな目にあった。
なにより俺のせいで…。
何人もの大切な人達を失った。
皆が言った。
なんでこんなにもこの子に狂うのか。
この子の顔がきっと可愛いからさ。
男の子なのに女の子みたいでとても整った可愛い顔だからさ。
だからこんなにも狂うんだろう。
いいねいいね。
君はとても可愛い。
私達をとても喜ばせてくれる。
手に入れたいと願ってしまう。
狂ってしまうね。
この子の顔はとても。
とても罪深い。
誰もがそう言ったんだ。
俺の顔がとても整ってるからこそ狂うんだと。
誰もが、断言した。
母さんとよく似たこの顔は人をとても狂わせることをその時知った。
母さんも顔のせいでか性質は知らないがよく人を狂わせていたらしい。
母さんはいつもそれを嘆いていた。
だからこそただ一人、狂わなかった父を殊更愛していた。
一番に産まれた兄は父似だったから良かった。
でも俺は母に似てしまい、そしてその性質も似てしまった。
母さんはその事実に絶望していたけど。
苦しみや絶望を知っているからこそ俺が不幸にならない様身を粉にして俺を守ろうとしてくれた。
父さんと和兄もそんな母さんと俺と守ろうとしてくれた。
俺にはそんな家族ともう一人の理解者がいた。
水瀬遥。
家が隣で俺と同じ病院で同じ日、同じ時間に産まれたたった一人の親友。
俺に狂わずに共にいてくれる家族に近い存在。
家族に守られて。
遥とたまに喧嘩したりバカやったり、二人で纏わりつく女を蹴散らしたり和兄と秋姉(遥の姉)の仲を取り持ったりして。
俺は幸せに過ごしてた。
10歳のあの日までは。
今でも覚えてる。
呆然とする俺を庇い泣き叫ぶ遥と。
同じくらい泣いて謝って…………………
俺を愛してるのと叫んだ遥のお母さん。
俺の顔は人を狂わせる。
こんな顔大っ嫌いだ。
母さんは大好きだけど。
母さんの顔と俺の顔は大嫌いだ。
そしてあの日も。
やっぱり俺は人を狂わせるらしい。
遥がラブレター(俺はラブレターだと信じてる)をもらった日。
遥の恋の始まり(かもしれない)を邪魔しちゃ悪いよなー。と思って先に帰ろうと思ったが。
ふと気づく違和感。
朝はストーカーがいた。
学校は着いてこれないにしても普通はその日放課後もストーカーが現れるはず。
なのに校門を出てもストーカーの視線がなくて。
諦めたか?
一瞬考える。
そして嫌な予想が浮かぶ。
もしも。
あのラブレター?がそのストーカーからだったら。
そのストーカーが俺に狂っていたら。
息を切らして走り出す。
お願いだ。
こんなの杞憂であってくれ!
そんな願いなんて叶うはずもなく。
屋上の扉を開けた先に映るのは。
屋上から落ちていく遥とそれを嗤う一人の女の姿。
「遥っ!」
全力で走り遥を掴む。
この時ほど和兄に付き添って鍛えてた俺の脚力に感謝したことはない。
あとはフェンスを掴めばっ……………!
「なんで…?なんで佑樹君は彼女の私よりそいつを選ぶの!?私の方が佑樹を理解してるのに!ねぇ!なんで!なんでよおおおおおおおおおおお!」
女に突き飛ばされる。
おい!そこは普通突き飛ばさねぇだろ!
お前本当に俺のこと好きなのか!?
「っのクソアマ!テメェなんぞ知らねーよ!」
つい出てくる言葉に後悔はない。
落ちていく俺と遥。
結局遥を死に追いやるほどに巻き込んだ。
俺はなんだか鬱々とした気持ちになってくる。
「これ、死んだな。すまん。最後まで俺の巻き添え食らったな」
せめて謝りたかった。
謝って済むことでもねぇけど。
そんなことを言った俺に対して遥は笑う。
「んなこたーいいんだよ。それより俺らが死んだら和兄と秋姉泣くよな」
あ。
「それな」
どちゃっ。
それが俺と遥の最後の言葉だった。
なぁ神様。
俺はあんたを信じれるほど純粋じゃねぇけど。
色んな小説とかである輪廻転生がもしも本当にあるのなら。
俺はまた遥の近くに産まれてまた一緒にバカやったりしてぇなぁ……………。
そんなことあるはずもないけど。
俺は死ぬ間際ただそれだけを願った。
あ、それだけじゃねぇわ。
次は絶対まともな顔にしてくれ。
これは本気です神様。
是非とも遥みたいな顔を俺にください(切実)。