1話 告白から始まる朝
「え」
フェンスが崩れふわりと浮かび学校の屋上から落ちていこうとする俺の身体。
目の前には俺を呼び出した女子が歪んだ笑顔を浮かべていた。
あ、これ死んだなーと能天気に思っていると。
「遥っ!」
誰かが俺の手を掴んだ。
それは、ただ一人の大切な親友だった――……
その日はいつもと違う始まりの朝だった。
とある朝のこと。
俺は普通に玄関を開けた。
が、即座に閉めるはめとなった。
ちょっと目の前の光景を信じたくなかった故である。
いや、きっと気のせいだったのだろう。
もしくは幻。
俺は一度呼吸してからまた開けた。
「ずっと好きでした!付き合ってください!」
うん。
目の前の出来事が幻じゃなかったぜチクショウ‼
俺ん家の玄関前で行われる朝からの告白現場。
告られている男は切ないことに俺ではなく俺の親友であった。
俺の家の前なのにな!
「断る。そもそもなんで遥の家の前で告ってるんだ」
そうだよね!
何故俺ん家の玄関前でしてんのかな!
親友の家は隣なのに!
隣だぞ!
告るならそこじゃね!?
何故親友が俺ん家前で待ってる所で告る!
え、俺普通のこと言ってるよね!?
そうと言ってほしい(切実)
「だって祐樹くん、家出た瞬間如月くんの所に行くから!毎朝毎朝毎朝!なんかおかしいよ‼」
「え、意味分かんねぇんだけど。なんで親友で隣に住んでる遥を待つだけでおかしいとか言われなきゃなんねぇの。つか毎朝見てたのかよ」
かつてない程のドン引きの声で返事をする親友。
うん。
俺もドン引きだよ。
誕生から今日までずっと仲良しで家隣同士なら普通一緒に登校するよな?
え?
そんなの俺らだけ?
いやいやいやいやいやいや!
そんなこはないはず!
「なんでおかしいんだか。俺らただ親友同士だから一緒に登校してんじゃん。つかなんでわざわざ朝に告ってきたし。しかも遥が出てきてから。おかしいのはお前だろ」
「っ…!ひどい、一生懸命告白したのに!最っ低!」
バシンッと言う音が鳴る。
頬を叩かれた。
俺がな!
何故だ!?
普通場所的に親友だよね!?
なんでわざわざ敷地内入って数歩先の俺の方へ来たんだよ!
走り去る女子を茫然と見送る親友(と俺)。
そして親友は俺に振り向いた。
「えっと。なんかすまん…」
「いや、お前が謝ることじゃねぇだろ。だが何故俺が叩かれたし…」
やばい。
良く分からねぇ。
俺が何をした。
ただ見たくもないものを見せられてただけなんだが。
頬がじんじん痛いし俺はなんだか釈然としない気持ちになる。
その間親友は一度家に戻り保冷剤をくるんだタオルを渡してきた。
「とりあえずこれ当てて登校だな」
「おうふ。とても目立つぜ」
「うん。なんかすまん。俺の代わりに叩かれたようなものだからな」
しょんぼりとした声で俯く親友。
ちなみにここまで全て完全無表情でお送りされています。
本人も頑張っているがこいつの表情筋は仕事してくれない。
感情は声で判断可能だけどな。
これを言うとクラスメイトの女子達にニヨニヨされるので控えている。
二人で少し憂鬱になりつつ俺達はやっと学校に向かうことができるのだった。
…今日は朝からなんか縁起悪いわぁ(遠い目)
今思えばこの時から俺の不運は始まってたのかもしれない。
朝から親友の告白を目撃し、その相手に何故か俺が頬を叩かれる。
そんな朝から縁起悪い出来事に遭ったばかりの俺は知るはめになる。
今日が縁起悪いどころか俺の命日になることを。
そして。
ありえないと思っていた異世界転生をすることを。
俺はこれからそんな目にあうことなんか知らずに朝から遠い目をしながら頬を冷やして登校していたのだった。
お読みくださりありがとうございます‼
豆腐メンタルの上文才もないですかよろしくお願いいたします。