表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/32

第二章 『天へ往くため地を駆けて』 プロローグ


Air・Fantagista(エア・ファンタジスタ)


第二章


プロローグ




はじまりの神使が いなないた。

腐った大地は、これでまたよみがえる。


――大聖典第四章 十節 『炎の海』



ふたつの業を背負うもの。

それは誰よりもはやく空を駆け、誰よりも多く矢を射った。

 


――大聖典 第十八章 四節 『空の渦』 



大陸の中心に穴が開く。

輪に巻き込まれ、彼等は落ちた。


――大聖典 第十六章 八節 『魔窟』 




竜は待つ。

 己が動くべき時を。


――大聖典 第一章 二十節 『飛竜』






「パンリさん、パンリさん!」


 体格の良いおかみが、階段の上から叫ぶ。


 下のバルコニーで呼び止められた、赤いローブを目深に被った少年は足を止めた。



「あんたのおかげで、ウチの子、今回のテストの点数、上がったんだよ。」


 洗濯物を抱え、嬉々として降りてくるおかみ。



「ホント、悪いねェ。

 受験前だってのに、ウチの子の勉強の面倒まで見てもらって。」


「あ…いえ……。

 本試験まで、もう2週間切ってますから……もう今さら、勉強すること無いですし…。

 全然支障……ありませんから…。」


 彼女の迫力に押され、弱々しく答える少年。



「さっすが、余裕だねぇ……パンリさん。

 大学に入っても、たまに遊びにくるんだよ。」


 換気のため、開け放たれる店の入り口。


 そこから覗く、人の往来の絶えない中王都市の大学通り。

 その様子を眩しそうに見詰め、少年はさらに深くローブを被った。



「あの……合格とか…まだ分からないですし……その…」


 そんな彼の謙遜の言葉などおかまいなく、おかみはマイペースで、手にしたベッドのシーツの

しわを伸ばしにかかる。


 少年は肩をすくめて、バルコニーと繋がっている食堂に足を運んだ。



 そして、毎日の日課。

 奥に飾られた、お気に入りの神の油絵を見る彼。



 美しい女性の肢体でありながら、猫の顔を持ち、背に広げる蝶のような羽根。


 右手には果実。

 左手は……端に寄った構図上、描かれていない。



 時間を忘れ、絵に見入る。


 風が、薄地のカーテンをなびかせた。


 テーブルに置いた厚い本の頁がめくれ、瓶に挿した花が泳ぐ。



 少年は、自分が着たローブを強く握りしめた。







ここに、神は全て死んだに等しいことを記す。


――大聖典 序部 『創る者の言葉』








この物語を記す機会が存在することと、読んでくれる貴方に感謝。 筆者



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ネット小説ランキングに投票
 ↑ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ