第四章 『飛翔艦時代到来』 プロローグ
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Air・Fantagista
第四章
プロローグ
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真の女神は、ためらわずに嘆きの腕を振るう。
―――大聖典 第四章 三節 『コゥリース』
対の鈴が一つ落ちると、
その片割れは、地を大きく鳴動させた。
―――大聖典 第十五章 一節 『葬礼』
群は舞い踊り、狂宴が開かれる。
笛を吹く羊飼いは何処だ。
―――大聖典 第十四章 九節 『界』
空気のように軽く。
だが、重く大地を凪ぎ払う。
―――大聖典 第八章 一二節 『架の風』
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雑林を歩き通して、もう何日か経つ。
薄手の修道服を身に纏った男は、しゃがんだままの姿勢で、上から聴こえる野生の咆哮へと顔を向けた。
―――崖に沿って、野犬が一列に連なって歩いている。
それらが特に危険が無さそうなのを確認してから、男は足元の植物を根元から摘んで、肩に提げた鞄に丁寧に仕舞い込む。
すると、遠くで、自分に対して怒る声がした。
途中、目に付いた薬草をことごとく採取するのを、二人の娘は快く思ってないらしい。
彼は汗を拭い、それに向かって苦笑すると。
細身の槍を背に、彼女達も微笑み返した。
良く見れば、その後ろの風景には、街並みが広がっている。
あと少しこの獣道を我慢すれば、中王都市の国境に差し掛かるだろう。
ぎらぎらとした陽の光を左手で遮り。
首に下げた赤い十字架を右手に取る。
男は足を上げ、地に落ちた枝葉を踏み潰した。
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ここに、神は全て死んだに等しいことを記す。
―――大聖典 序部 『創る者の言葉』
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この物語を記す機会が存在することと、読んでくれる貴方に感謝。 筆者