第一章 『愛すべき犠牲より』 プロローグ
この物語を記す機会が存在することと、読んでくれる貴方に感謝。 筆者
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Air・Fantagista( エア・ファンタジスタ)
第一章
プロローグ
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最後の大天使ペルテシノが放つ心で、大陸の汚れは浄化された。
天には源が満ち、海には生が満ち、大地には花が満ちた。
――大教典最終章 第四十一節 『果ての言葉』
「その者は二人で一つの兄妹である。」
誤解される賢人は言った。
――大聖典 第二十章 十四節 『血の契約』
『創る者』が800の神を背負い、異形の物を追い払う。
さだめは そこから生まれ始めた。
――大聖典 第三章 六節 『聖戦』
竜達は孤高の聖域を求めて旅立った。
大陸に もはや安寧の場所は無い、と。
――大聖典 第一章 十八節 『尊い嘆き』
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「難儀だねェ……坊や。」
婆はブ厚い本を開き、中の頁を至近距離で眺めると、青白く光る小さな輪が
浮かび上がった 俺の右手の中指の付け根を強く握った。
「―――天命第五位『犠牲の月獣』。」
暖炉の炎に照らされて浮かび上がる、しわくちゃな婆の顔は迫力のある陰影を描く。
「この天命の輪を授かった人間は、それはそれはロクな人生を送らないよ…。
あぁ、難儀だ。」
婆は繰り返し、言った。
「難儀だねェ……。」
婆は その道では高名な占い師だった。
真っ暗な部屋にある髑髏の置き物。
人の手の平ほどもある巨大な水晶玉。
香の匂い。
それらは子供ながらに恐かった印象があるが、視覚的な記憶は もう定かじゃない。
ただ、俺がしっかりと憶えていることは、自分には逃れられない生き方があるという『通告』だった。
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制作・著作
RYUU
ここに、神は全て死んだに等しいことを記す。
――大聖典 序部 『創る者の言葉』
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