12話
かなり短め
アリサ視点
「起爆しろ」
「了解、起爆」
隊長の命令で瓦礫で塞がれたバンカーの出入り口に設置した爆薬の起爆スイッチをマイヤー准尉がカチカチと鳴らす。
ボフンっと少なめの炸薬が頼りない爆発音を上げた出入り口はその音とは対照的に出入り口を豪快に吹き飛ばした。
土煙で視界の悪い出入り口付近を慎重に出たところで、少し離れたところで爆発音、聞こえた方向を見るとヘリが地上に向けて大量のミサイルと銃弾を吐き出していた。
「今日は爆発音をよく聴く日ですね…嫌になっちゃいます」
私がぼそりと呟いたところで街の見取り図でヘリが降りれる場所を探していた隊長が顔を上げる。
「あのショッピングモールの屋上の駐車場が使えそうだ、ランディングゾーンを確保した後他の部隊と合流する」
「「「了解」」」」
全員が同時に返事をしたところで背後で爆発とは違う爆音、振り返ると
「は?」
岩がヘリに突き刺さってその勢いのまま背の高い建物にぶっ刺さった。
全員が固まっていたのは数秒だろうか数十秒だっただろうか、その静寂を破ったのは一発の銃声。
その音の発生源は丁度私の見ていた方向のカフェらしき建物の屋根の上から一直線に伸びる閃光、おそらく雛鳥少尉のガウスライフルのもの。
そこで一人だけ冷静だった隊長が指示を飛ばす。
「マイヤー准尉、アマレット軍曹は偵察へ行け、私とアリサ少尉でランディングゾーンを確保しておく」
「りょ…了解」
マイヤー准尉だけがなんとか返答をして全員が動き出そうとしたとき雛鳥少尉から無線が入る。
「こちら雛鳥、要救護者1名確保、現在苹果少尉がタイタンと交戦中」
「な…了解今すぐ支援へ向かう」
「いえ、支援は必要ないかと、それより要救護者の容体が思わしくありません、そちらの位置は?」
「タイタン相手に支援が必要ないわけ」
「むしろ、邪魔になるかと…」
「わ、わかった…ショッピングモールの屋上にヘリを呼ぶ、こちらで確保してからこちらから連絡する」
「了解」
他の隊員が困惑したまま雛鳥少尉との通信が終了する。
「偵察は中止、ランディングゾーンの確保急ぐぞ」
「「了解」」
「へっ?…り、了解」
どうやら一番困惑していたのは私のようだ。
移動を開始したときカフェの屋上から人を抱えた雛鳥少尉らしき人影が隣の建物の屋根へピョンっと跳ぶのが見えた、それによってさらに困惑しそうになった私は考えるのをやめた。
数分後魔物と遭遇することも無くランディングゾーンを確保した私たちは、雛鳥少尉と合流した。
要救護者の少女は一時的に心肺停止状態にまでなったが投与したナノマシンのAEDによって何とか持ち直して今のところ問題はなさそうだ。
気になるのはその少女を守るように寄り添っている真っ白な犬(というより狼?)なのだがそれも問題はないだろう。
それより問題なのは私がいま双眼鏡越しに見ている光景
それは間違いなく岩の巨人タイタンと鬼、どちらも危険種指定されている魔物の中でもかなり上位の物
だが私の視線の先でタイタンの左腕を両腕を斬り飛ばした鬼の持っているロングソードは苹果少尉の装備だ。
「あの鬼が苹果少尉…」
あまりに突飛すぎる出来事に軽い眩暈を感じつつ突然爆ぜたタイタンと吹き飛んでいく苹果少尉を眺めるのだった。