9話
展開を少し変えたので前話の一部を少し改編します申し訳ないです
「何かこの辺で他に要救助者が隠れていそうな場所とかは?」
「そうだなぁ…ここら一帯だとシェルターはここしかないからなぁ」
私は叫び声を聞いた後声のした辺りを調べてみたが特に成果はなく、その場所から少し東にあるもとも救難信号の発信されていた簡易シェルターに来ていた。
叫び声のことが気になってシェルターに居た人たちに聞いて回ってみたものの、大した情報は得られなかった。
私がもう一度声のした場所を調べてみようかと考え始めると4,5歳くらいの小さな男の子が私の服の袖をぐいぐいとひっぱてきた。
「どうしたの?」
「隣のお家のお姉ちゃんがいないの…」
「そのお姉ちゃんの家族はここに居る?」
私が聞くと男の子は首をブンブンと横に振って否定した。
私は情報端末に航空写真を表示させて家の場所を男の子に教えてもらうと
男の子にお礼を言って直ぐにシェルターを出た。
入り口で待機していた雛鳥と合流して先を急ぐ
「雛鳥行くぞ、西の倒壊していた家に生存者が居るかもしれない」
「了解」
??視点
真っ暗な場所で私は目を覚ました、何も思い出せない、ひどく右腕が痛むがおかしな事に右腕の感覚がない、下半身も動かせないが感覚はある、何かに挟まれているようだ。
とりあえず左腕は動かせるようなので自分の目の前を押してみると意外なほどあっさりと視界が開けた。
「家…?」
崩れていることをのぞけば普通の家だ、ひどく懐かしいような違和感を感じるような…。
「考えるのは後で良いか…」
ズキズキと痛む頭が考えること拒絶しているような気がした。
「持ち上げれるかな…ふっぐぬぁあ!!んーぎぎ!!」
このままではどうしようもないので、私の下半身を押さえつけている家の柱らしき物からどうにかこうにか片腕で隙間を開けて抜け出す。
そして抜け出して
「ふぅって右腕ないじゃん…どうりでくらくらするわけだ…」
自分の右腕を見ると肩から少し下の所からが千切れたようで、ついさっきまで自分が倒れていた場所を見ると血だまりと私の腕らしき肉片が瓦礫の下で潰れている。
どこか冷静すぎる自分に違和感を抱きながらも私は何か止血するものはと家の崩れていない部分を散策して救急箱を発見して自分に応急手当をする。
腕にスプレーになっているキャップを外して消毒液をドパドパとかけて粉末状の止血剤を腕の断面に豪快に振りかける。
「んがぁああああああああ!!いったぁ…」
止血剤で出血は大分ましになったもののあまりの痛みに声を上げる。
涙目になりながら包帯を苦戦しつつ腕に巻いてから使えそうなものはないかと救急箱をあさって見ると治療用のナノマシンが入った簡易注射器5本を見つける。
「これがあるなら止血剤使わなくてもよかったじゃん…てか治療用ナノマシンなんて馬鹿高い物が5セットも救急箱に入ってるってこの家ブルジョワか…?ウッ…」
そんな悪態を吐きながら自分の首筋に注射器を当ててインジェクションボタンを押してナノマシンを注入する、痛みに顔をしかめナノマシンの注入が終わったのを確認して注射器を投げ捨てると私は周囲の状況を確認するために立ち上がった。
私は五分ほど家の中を調べていくつかの物を見つけた、まず魔物と思われる氷で出来た獣の顔の様な物、顔を見つけた周辺にも氷の破片が散乱していたので私と同じように運悪く崩れた家に挟まれたのだろう。
そして2体の人間の死体、男と女、どちらも同じ指輪を嵌めているので夫婦かもしれない。
女の方は胸の真ん中に直径3cmほどの穴が空いている。
男は氷で出来た杭のような物で壁に貼り付けになっていた、右手にはハンドガン逆側の手にはたぶん車の鍵、ポケットを調べると予備のマガジンが2つ、魔物に襲われたことは明らかだ。
とりあえずハンドガンとマガジン、車の鍵を拝借して他に役に立つ物はと辺りを探した。
そしてキッチンで冷蔵庫を見つけたとき。
ぎゅーぎゅるる
おなかが鳴った…、まぁおそらく家の主が死んでいるのだから食べても問題はないかと私は冷蔵庫をあさることにした。
チーズとハムをパンに乗せてそれをもきゅもきゅと頬張り牛乳で流し込む、食べ終わって少し物足りなさを感じつつそういえば自分は何者なのかと考えてる。
自分の着ている血まみれの服のコートにポケットを発見して手を突っ込むと携帯端末と財布があったのでまず端末の方を確認する。
「パスワード…?わからん」
画面のパスワード入力で早速行き詰ってまぁいいかとぽいっと投げ捨てる。
財布を確認すると写真1枚と保険証とパーソナルカードが入っていて当然のことだがどちらにも同じ名前。
「ミーゼル・リフォセラウェ…私が持ってたんだから私の名前なんだよね…?」
そして財布の中に入っていた写真を見て驚愕に目を見開く。
「あの二人は…私の親…?」
呟いたところで頭痛がひどくなった気がして考えるのを止める。
「とりあえず…安全なところに逃げよう」
ナノマシンによって腕の傷口がふさがったのを確認して出口を探す、開いたままの勝手口から出るとそこはガレージになっていて車があったのだが…。
「なんでぶっ刺さってんですかカーネ○さん…」
どこから飛んできたのだろうか有名なフライドチキンチェーン店のイメージキャラクターの白いスーツに白いひげを生やした優しそうな顔をしたお爺さんの置物がボンネットにぶっ刺さっている、腰の辺りまで刺さっているのを見るに完全にエンジンを貫通している、硬すぎだろサン○ース…。
ボンネットに刺さっても笑顔を絶やさない白いお爺さんに軽い怒りを覚えつつ、車は諦めて徒歩で行くことにした。
ガレージのシャッターを開けた瞬間魔物に襲われるということもなく無事に家から出た私は見覚えのない懐かしい街をとぼとぼと歩く、魔物に襲われたようで辺りはまるでゴーストタウンみたいな雰囲気だ、そこで私は目が覚めて初めて生きている物に出会った。
「ハッハッハッハッ」
犬だ
「ハッハッハッ」
白い、白すぎて少し青みがかった毛色の犬、瞳は赤く宝石のような輝きをしていてつい見とれてしまう。
「っとそんなことより逃げないと…街ならどこか避難用のシェルターかバンカーがあるはず…って君怪我してるのか」
見とれていた視線を外して歩き出そうとしたところで真っ白の犬の後ろ足に真っ赤な血がついているのが目に入る。
「しょうがないなぁ…ちょっとちくっとするよー」
私は犬に近寄って頭をなでながら、犬の首に注射器を当ててインジェクションボタンを押す。
「クゥーン」
犬は注射の痛みで怯えたような鳴き声をあげたものの言葉の意味を理解していたのか驚く事はなかった。
「よしよし、これで少ししたら足の傷なんてすぐふさがるからね」
そうして私は数分間犬の傷口が塞がるのを待ってから、シェルターを探すために再び歩き出した。




