3話-目的-
親父の研究室が暗いのは夜の帳につつまれているからだけじゃない。
ほの暗い念が籠っているからだろう。
「親父、デスサイズスの四天王って知ってる?」
「ああ、Aランクヴィランだな。それがどうかしたか?」
「あれでAランクなのか……これ、そいつのダスト・ハート。ここ置いとく」
「ああ」
親父の手元でマッチの灯りが点いた。
紫煙を吐き出し、その行方を親父は見届けている。
「それから白藤の細白雪も弾いたよ」
「な、大丈夫だったか? ケガはないか?」
「うん、無傷だ。凄いな、ご先祖たち」
タバコ落ちるぞ。身振りで教えてやると親父は頭を掻いた。
「……すげえのはお前だよ」
そんなことはない。ご先祖たちの遺した怪人作成手術書とそれを改良した親父こそが立役者だ。
俺は無我夢中で身体を鍛えただけだった。
「普通なら、お前はもう何回も死んでる」
「技術の進歩だな」
「……思い出すよ、十歳のお前がヴィランの亡骸持って来たあの日をさ」
「覚えてるよ、あそこから親父は凝着の技術を手に入れた」
「止めよう、気持ち悪いだろ」
そうだろうか。認め合う者同士褒め合うことに問題があるようには思えないけど。
まあでも嫌がるようなら止めよう。
「でもまだMr.には手を出すなよ?」
「うん、わかってる。あの人は別格だ」
何せ俺たちの一族はあの人に一度やられている。それに対峙すればわかる。他のどんなヒーローやヴィランよりもあの人は強い。
「ゴールは決まっているから大丈夫、Sランクヒーローになるまでの我慢だから」
Sランクヒーローに支給されるブリリアント・ハート。
あれさえ手に入れば俺たちがMr.ジャスティスに遅れを取ることはなくなるだろう。
その日が俺の本懐を遂げる時だ。だから俺は必ず主席でヒーロー学園を卒業しなければならない。
白藤は問題ない。強いしいい奴だけど、それだけだ。
水鏡も問題ない。何だかんだ面倒見がよくていい奴だけど、力不足だ。
華は勘がいいから厄介だけど、俺が大人しく学園生活を送っている限り問題ないだろう。
マサトは勘がよくて、戦闘能力も絶好調の時はかなり高い。だけどそれでも大丈夫なはずだ。
やはり気を付けなければいけないのは減点だけ。ヒーローにあるまじき行為を冒す者何てレッテルは最悪だ。
大丈夫だ。卒業まではヒーローという名の汚物に塗れてやるさ。