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たった一人のヒーロー  作者: ちゅん
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2話-Mr.ジャスティス-

 突発的に生じたヴィラン退治を終え、ライセンスを持ったヒーローたちに引継ぎをして来た俺たちが学園に辿り着くと、とっくに始業式は終わっていた。そんなヒーロー学園Sランク候補生クラス。たった五人のためだけの教室に、今はその五人の他に一人の教員がいる。

「ハッハー! 素晴らしい。君たちは実に素晴らしい。まさかSランク候補生クラス始業式の日にBランクヴィランを倒してから登校してくるなんて」

 筋骨隆々、齢80を超えて現役最強のヒーローが笑っている。

「あの~、Mr.報告させて貰っても?」

 Mr.ジャスティス。その男が白い歯を輝かせた。

「何だい白藤君! 逃げ遅れた市民の救助ご苦労だったね、流石№2は伊達じゃないな!」

「はあ、どうも。で報告なんですけど、変なヴィランに出会いました」

「ふむ、変とな。どんな奴だ」

「ヴィランのスーツって何か生物チックじゃないですか、それがその人のスーツは無機物っぽかったんですよ。それに、私の細白雪が弾かれたんです」

「な、細白雪がだって? それは白藤の家に伝わる三神刀の一本なのだろう?」

 水鏡の話は俺も聞いたことがあった。だけど、過去にそれを防いだ怪人がいたことも俺は知っている。

「あたしみたいな力の持ち主だったんじゃねえの?」

「ううん、力の波動は全くなかったから」

「マジかよ、俺以上の筋肉してたとかか?」

「バカだな。スーツだと白藤が言っていただろう」

「ふうむ、細白雪が。どうだい、大地君。君の意見は」

 どう答えたものか。あまりにつまらない解答をして評価を落とすのも避けたい。だけど。

「実際に目にして見ないことには何とも言えないです」

「なるほど。実に君らしい。君の観察眼は先入観という物を持たないがゆえに優れているのかもしれんな! 結構、その力大事にしたまえ! ハッハー!」

「あ、Mr.~」

 呵呵大笑しながら去っていくMr.ジャスティスの背中に白藤が手を伸ばすが、彼はそのまま消えていった。


「あの爺、なんも指示しないで行っちまったけどもうあたしら帰っていいのか?」

「元々今日は始業式だけの予定だっただろう。いいんじゃないか?」

 水鏡の言葉に各々帰り支度を始めた。


 思ったよりも早く帰れそうだ。Sランク候補だなんて言うから初日からハードな訓練や合宿が行われるかとも思ったがそんなことはなかった。

 ひょっとしたら主席卒業生に贈られるというアレも見られるかとも思ったけどお預けみたいだ。


「大地、また明日ね~」

「うん。部活頑張って」

 ひらひらと手を振りながら、初めに白藤が教室を出た。

「んじゃどっかで買い食いして帰るか」

「バカ野郎。おばさんが今日は早く帰れと言っていただろう」

 マサトと水鏡が次いで帰路につく。

「じゃああたしも帰るから」

「うん、また明日な」

 最後に華が出て行った。


 ひとまず減点はなかっただろう。観察眼云々で済ませて貰えたみたいだし。

 今日のヴィラン退治に関しても俺が役立たずだと報告するあいつらでもない。

 一安心だ。


「やあ大地君」

「どうかしましたか、Mr.」

 一息ついたその瞬間、かすかに気配を感じることが出来た。

「ふむ、驚かせようと思ったのだが私の気配に気づいたか、流石だな№1!」

「たまたまですよ」

「謙虚だな! ハッハー! まあ言いたいことは多々あるのだが割愛しておこう。最重要事項だけ伝えておく。大地君、先ほどの白藤君の話に出てきたヴィランだがね」

 落ち着け。何度もそう心の中で唱える。

「若かりし頃、私が戦った相手に細白雪の通らぬ相手がいた。ちなみにヴィランではない。彼は怪人と自称していた。そして彼の言う怪人とそれ以降も何度か戦ったよ。皆とても強かった。今の老いた私では勝てないかもしれない」

 冗談じゃない。確かにうちの怪人たちは強かったみたいだ。だが、Mr.ジャスティスの前身であるジャスティス・ワンには遠く及ばなかったと残されたデータが物語っている。

「もしも復活したというのなら、おそらく君の同期で彼らに対抗できるのは君だけだろう。万一の時は君が時間を稼いでくれ。約束しよう、必ず駆けつける。私を信じて誰も死なせないよう指揮を取ってくれ」

「出来るかどうかはわかりませんけど、やってみます」

「うむ、ありがとう。頼んだぞ№1!」

 この約束が嘘だとわかった時がきっと最終決戦だ。

 Mr.ジャスティスが倒れればヒーロー業界は終わる。強すぎた男に、ヒーローたちは頼り過ぎた。

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