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たった一人のヒーロー  作者: ちゅん
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26話-神峰島・出発前-

「そっか、じゃあ大地は改造人間になっちゃったんだね。その、大丈夫なの? 子供とか。雫ちゃんと結婚したいんでしょ?」

「俺は生身だよ?」

「…………はぁ~……大地、自分のこと全然話してくれないな~って思ってたんだけどもしかして話すのが下手なだけ?」

 そんなことはないと思う。単純にこの前までの俺は自分の話を異世界人にしたくなかっただけだ。

 もちろんおもしろくない話だからというのもあるけど。

「今の話からは大地の力の秘密が全く出てこなかったんだけど?」

「出たよ。指立て伏せと拳立て伏せ。もちろんそれ以外にも神峰島を走り回ったり肉食獣と戦ったりもしたけど」

「そもそもただの人間が種のるつぼで生きていける訳ないじゃん。異世界人ならともかく現界人がそんなちょっと筋トレしたくらいで肉食獣倒せないでしょ」

「食事だよ、白藤ちゃん」

 助け舟だ。親父が近付いて来ていた。

「異界人と現界人の力の差は食事から生まれる。それが大地を研究して俺が出した結論だ。現界人は異界の物を食べることで異世界人並の能力を手に入れられる。細かく言うと鮮度やその他いろんな要素が加わるから単純に食べれば強くなるってもんじゃないけどな」

「それはつまり――」

「そうだ。こいつが種のるつぼにいた当初は手当たり次第食えそうなものを口に入れてたからな」

「仕方ないだろ。狩りも出来ないし腹が減ってたんだから」

 我ながらかなり惨めな生活だった。戻すし下すし腹は減るわ喉は乾くわ、親父の気付薬がなかったら何回も脱水やら何やらで死んでいただろう。

 あまりにカッコ悪い話だからだろうか、白藤は俺から顔を背けていた。

「あの、じゃああのヴィラン化はどういう?」

「こいつが倒したヴィランを俺が研究してスーツを作った。それからそのスーツに怪人化手術を施した」

 白藤の気持ちはわかる。

 目をぱちぱちと瞬きを繰り返し、呆けたように口を開く。

「ご先祖の遺産だよ」

「うちの一族には数百年に一度天才が生まれるんだって。今代のそれが親父だよ。ちなみに先代は黒装一味の総帥、怪人化手術を編み出した人」

「あの、頭が痛くなってきました」

「先に休んでてもらってもいいよ。次に行く場所の話をこいつにしておく」

「いえ、そういう話なら私も聞きます」

 親父は肩を竦めると煙草に火を点けた。

 酒は十年前から一滴も飲んでいない。

「種のるつぼ、神峰島には地下遺跡がある」

「そうなんですか?」

「物語染みた立派な物ではないけれどね。ご先祖が作った遺跡で黒装一味の秘密基地だ。そして、移動式空中要塞でもある」

「空中? 空を飛べるんですか!?」

「飛べるよ。元々この世界にあった飛行機って知ってる?」

 白藤が肯く。

 実物は見たことないはずだ。もっとも知識としてでも知っていれば上出来だ。

「あれが今の世の中にないのは未だにご先祖が打ち上げた人工衛星が機能しているからだ」

「天災、じゃなかったんですね」

「うん。戦争ばかりする人類に嫌気が差したご先祖は人類から空を奪ったんだよ」

「あの、二人のご先祖さまって何者なんですか? 無敵ですね」

 そんなことはない。

 それを歴史が証明している。

「いや、そこまで進んだ科学でもオカルトには一歩遅れを取ったよ。異世界人が召喚され、ジャスティス・ワンに刃鬼殿。その二人にご先祖たちは敗北した」

「お爺ちゃんが……え? お爺ちゃん八十歳……」

 そっか、そこからか。

 白藤に話すことはまだまだたくさんある。

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