表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

第一話

始まりは僕が高校2年だったときの8月の終わり頃。

もう何年も前のことだから記憶は正確ではないのかもしれないけど多分あっていると思う。

始まりと言ってもそんな大層なものではない。

運命的だなんて訳もなくどこにでも転がっている普通の出会い

その日、僕は友人とゲーセンに居た。

特に理由はない。

ただ、誘われたから着いてきただけ。

「なぁ、これ取れそうじゃないか?」

僕は目の前にあったクレーンゲームを指差す。

なんのアニメかは知らないが、フィギアが置いてあり、それを落とすやつだ

「そいつは絶対落ちないやつ。無理ゲーだ。少なくとも俺には無理」

ふーん、そうは見えないけどな

「取れそうで取れないってのがクレーンだからな」

そういうもんなのか

まぁ、そういうもんなんだろう

「おぃ!見ろよ!これヤバくね!?めっちゃ欲しいんだけど!」

友人は金髪の幼女のフィギアを指差してテンション高めだ。

なんのキャラだ?

ていうか、改めて気持ち悪いな、こいつ

ロリコンか

できるだけ、僕の近くで喚かないで欲しい。

「うし!取ろう。もう取るしかないだろ!」

「じゃあ、取れば?」

いまいちどうリアクションすればいいのかわからなかったから、シンプルに

「見てろよ。俺にかかればこんなん容易いぜ!」

いいから早くやれよ。

苦節何年と言うが、どうやらこいつにはそんな言葉は不要だったらしい。

見事と言うべきか、三回で取った。

まぁ、偶然に偶然が重なっただけだが。

「ちょっ!?俺の運凄くね!?」

「そうだな。羨ましいよ」「ならもっと羨ましそうにしろよ~」

「羨ましすぎて殺意が湧く」

「そんなに!?」

「あぁ。湧き出る温泉並みに殺意が湧く」「そんな親の仇を見るような目で見るなよ。照れるだろ」

「照れるなよ。てか、そんな凶悪な目付きしてないから」

「え?」

なに首傾げてんだよ、可愛くないし。

むしろキモい。

男がやってもキモいだけだからな、それ

「まぁ、いいや。目付きとかどうでもいいからさ」

ぶっちゃけ人にどう思われようと関係ない

学校生活で必要最低限の友人関係を築いた今となっては心底そう思う。

「で、それ鞄に仕舞わないの?家に帰るまで抱き抱えてるわけ?」

友人が取ったフィギアを大事そうに抱えているのを見て、尋ねる

「ん、そうだな。このままじゃ社会的に死ねる」

「もうクラス内ではオタクキャラで認知されてるけどな」

「マジかっ!?」

「うん」

「俺の薔薇色の青春プランが崩れ去ってしまうじゃん!どうしてくれんだよ!」

「僕に言うな」

「じゃあ、誰に言えと!?」

自業自得っていう言葉をこの男は知っているだろうか?

知らないのかもしれない。

今度、気が向いたら教えてあげるようにしよう。

「薔薇色を目指すならあそこに居る他校の女子に愚痴って来たら?」

もちろん冗談。

「見ず知らずの人にそんなことできるか!やられたら迷惑だろうが」

「迷惑だと自覚してるのかよ」

じゃあ、僕に迷惑をかけようとするな

「もちろん自覚してる。別にお前になら迷惑かけてもいいだろ?」

「いや、勘弁してくれ。僕は面倒事と疲れる事は嫌いなんだ」

「愚痴くらい聞いてくれてもよくね!?」

「疲れる」

「わずか一言!?それだけの理由かよ!?」

「とりあえず、声でかい。耳に響くから黙ってくれないか?できれば一生」

「なんか、さっきから俺に対して冷たくない!?」

「気のせい」

「そうか。ならいいんだ」

さっきからじゃなくて、ずっとだからね。

だから、気のせいだよ。

「んじゃ、ちょっとトイレ行ってくる」

実はなのだが、さっきから我慢してた。

それに少しばかり吐き気がする。

やっぱりゲーセンは決していい空気ではないと思う。

教室よりはましだけど。

エアコン付けてるからって窓を締め切り、空気の循環がない。

そのせいで空気が非常に悪く、気持ち悪さを覚える。

だから、教室にはあまり居ない。

または人に何を言われようが関係ないと窓を全開にする。

あんなところに篭っていられない。なんでみんな耐えられるんだ。

わからない。

小便を済ませ、手を洗い。

洗い終えてもしばらく手を水に晒す。

冷たい水が気持ちいい。

水に触れていると徐々に吐き気がなくなっていく。

「あぁ、体が怠い……」

いつもの事だけれど。

手足に重りが付いているんじゃないかって位に重い。

寝不足が原因なのか、はたまた単に疲れが抜けないだけか。

どっちにしろ自分自身に原因がある。

人に責任があれば楽なのにね。

誰かを責めて治るのだったら話は簡単なのだ。

……そういえば、僕はやる気がなさそうだとか積極性に欠けると言われる。

要するに僕を怠惰だと言いたいのだろう。

よく机に突っ伏しているし、行動が遅いからそう取られるのだろう。

あながち間違いでもないと思うけど。

でも、それは治るものではないし、治そうとも思わない。

作家のゲーテは

『われわれの本性は怠惰へ傾いている。だが、われわれは活動へと心をはげます限り、その活動に真の悦びを感ずる。』

と本の中で語っているが、僕は活動への心を励ましはしない。

活動してなんになるというのだ。

それが結果として何かを生み出すのであれば、僕は活動しよう。

だが、実際活動が結果に繋がることは学校生活では多くない。

さらにその中から意味ある結果に繋がるものはまた絞られる。

こういうことを言うのは馬鹿だと思われるかもしれないけど、実際そう思っているのだから仕方ない。

勉強してなんになるんだ、意義は?と聞くと大学進学の為やら努力の習慣を身につけるやらの答えは返ってくるが僕は納得できない。

っと、話が脱線しているね。

戻そうか。

トイレを出た僕は横、つまり女子トイレから全く同じタイミングで出てきた少女(何歳まで少女と呼ぶのか正確には知らないが成人してないので少女と呼ぶ事にした)と目が合った。

黒い髪の気の強そうな少女だ。長い髪を後ろで束ねている。

外見も非常に人の視線を惹きつけるものだったが、僕は彼女の表情が気になった。

退屈。

その色が強く現れた表情をしていた。

僕を鏡に写したようだった。

何をしていても心の底からは楽しくない。

表面上では楽しいと思うのだけれど、深いところでは冷めている僕に。

彼女は似ていた。

「…………」

彼女も同じような事を考えたのかは知らないが、僕を見て不思議そうに小さく首を傾げ、そのまま立ち去って行った。

彼女に見惚れていた僕も人を待たせているので、足早に友人が待つ場所へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ