第一章 猛暑と絶望のケーキ屋爆破
1 ☆アーク☆
RPGの後日談。近未来なファンタジー。
この世界を一言でいえば、きっとそんな感じだろう。高層ビルがバンバン建っちゃうほど『科学』が発展した今でも、『魔学』として未だに魔法は重宝されていたりする。魔法陣に生命力を注ぐだけで効果を発揮させるから、結構便利なのだ。たとえば団扇。夏季の風物詩であるこれに『空気冷却』の陣を刻めばあら不思議。扇いだ風が一段と涼しくなる。
『科学』の発展がどこよりも著しいここ、『学都』でさえもそんな感じだ。この世界は全国各地でファンタジー要素満点なのだ。
なのだ!
なのだからこそ!!
アークの目の前でケーキ屋がドカンなのだ!
「えぇーー・・・、僕なにかしましたか?」
正確には、商店街にアークが足を踏み入れた瞬間、50M先にある目的地のケーキ屋が大炎上。耳をつんざくような悲鳴は聞こえたが、その後は大きな騒ぎにはなっていない。どっちかっていうと落ち着いた感じだ。
中にいた人もちゃんと逃げてこれたが、事態を理解できずにただ呆然と燃え上がるそれを見ている。犯人と一緒に。
・・・・・・・・え?なんで犯人だって分かるのかって?
そりゃあ、そいつが炎剣持ってるからじゃん♪
早々に騎士団が到着。それと同時に犯人と思われる人物は逃走した。
「・・・・・・な、な、な」
何ともシュールな状況を前に、アークは口をパクパクさせるしかなかった。
「なんてっこったーーーいッ!!」
御覧の通りアークは不幸少年だ。少し前までは、至って平凡過ぎる超普通な生活を送っていたが、『不幸』の親玉である『天子』を押しつけられてからというもの、この有り様だ。しかも、今日はその『天子』と出逢ってちょうど一年。『パーティでもしようかな』なんて思ってケーキ屋を目指している途中だったのだから、こいつの不幸も大したものだろう。
(これからどうしよう。・・・はぁ、手ぶらで帰ったら、リンもランも怒るだろうな)
この辺りでケーキ屋っていったら・・・、とアークは携帯を取り出して、ポチポチと地図を開いた。
「・・・・・・と、遠い」
ここ『学都』はとにかく広い。そりゃもうびっくりするぐらい。そして、普通のケーキ屋があるのは今いるところの真反対。しかも、今日は夏休み初日。+、さらに倍!な感じで今日は暑い。それも、ここ十年間で最も暑いって言われてる。『今日はべらぼうに暑いので、外出には気をつけましょう』なんて、朝のニュースでお天気お姉さんが言ってたような・・・。
「死亡フラグ、立っちゃいましたね、これ」
2 ☆×××☆
白桃寺学園旧校舎二階。
学都一の大きさを誇るここ、白桃寺学園は、全国各地から通う学生がいるほどで、設備も充実していて、科学者連中にもたまに貸し出していたりするほどだ。もちろん冷房も完備している。外の尋常じゃないほどの猛暑がウソのようで、旧校舎にも関わらず廊下まで涼しかったりする。
「死ねゴルァァァァアアア!!」
どこかの教室から、結構危な目の叫び声が漏れだした。
「何この『中年天使』とかいう名前の野郎、強すぎるんだけど。ホント死ねばいいのに」
さらっと怖いことを言っちゃうこの子は、教室で机に腰掛けて、リモコン片手に足をぶらつかせている。
教室の中は至って普通。等間隔に机と椅子が並べてあって、教卓が黒板の前にあって、後ろの方にロッカーがズラ~っと並んでいて。ホントに普通のThe教室だ。そんな中で、異様な雰囲気を放っているのは少女の存在だ。机もイスも高校生用に作られたものだから、小学生ぐらいの少女がいると、どれもこれも大きく見えてしまう。そして、服装はラフを通り越して水玉パジャマだ。
少女はリモコンを握り直した。
「さぁさぁ、もいっちょやりますか!」
「ただいま帰りました、紅葉お嬢様」
「ゴフゥッ!」
紅葉、というのは少女の名前だろう。思わず吹き出してしまったのは、別にやましいことをやっていたわけではない。普通の教室で、誰もいない教室で、突然後ろから声が聞こえれば誰だって驚くだろう。
「し、心臓、と、まるから、普通に入ってきてよ、キキ」
「歩くのしんどいです」
「それを主に言うか、オイ」
紅葉は、もういいよ、とそれ以上言うのを諦めて、もう一度ゲームを再開した。声のする方を向こうともしない。紅葉としたら、ここに来れるのはキキぐらいなもんだ、と思っているから、確認する必要もないのだろう。黒板の前に置かれている画面では、赤い帽子のヒゲ親父が、バイクにまたがりブイブイいわせている。
「んで、外どうだった?」
世間話程度にと、紅葉はキキに喋りかけた。
「暑かったです」
「だろうね・・・、じゃなくて、変わったことでもあった?って聞いてんの」
怒りを通り越してあきれてしまった。
紅葉のラフな服装に対して、キキはシャキッとスーツを着こなしている。が、それは、決して高校生が背伸びしてる感じではなく、大人より大人なオーラが漂っている。
まぁ、それはそれで教室の雰囲気に合っていないのだが。
「失礼しました」
そういいながらもキキは、頭を下げようとしなければ、表情一つ変えない。
「そうですね、変わったこと、変わったこと・・・・・、白桃寺周辺の自販機で『つめた~い』がすべて売り切れていました」
「へー、そりゃすごいね・・・・・、まじで?」
紅葉はその言葉に気を取られ、見事に画面上では髭のオッサンがバナナを踏んでクルクルしてる。そして、その一瞬の隙に緑の恐竜がオッサンを抜き去っていった。
「・・・な、な、な」
しばらく愕然としていた紅葉だが、『一位 中年天使』の文字を見て、リモコンを画面に投げつけた。パシッとキキに受け止められたのが気に食わなかったのか、紅葉はぶーっと頬っぺたを膨らましていた。
「それはそうと紅葉お嬢様、そろそろ〆切が迫っています。夏休みも始まったわけですので、しっかりと書きあげてくもらわないと」
その後に、キキは真剣な声が真隣から聞こえた。・・・まぁ、さっきまでと表情も声色も変わってないけど。
「わーってるって。ちゃんと考えてるからさぁ」
「考えてるだけじゃ何も進みませんよ。『計画』だって、中途半端になってしまえば『バランス』が崩れてしまいます」
分かってるってばぁ、と紅葉はあしらうように手を振る。『いつの間にかキキが真隣に』なんて不思議現象を無視して、二人とも会話を続ける。
「それと、次の計画なんですが―――――」
「あぁ、あれね。二年ぶりのデカイ仕事だからね。気合い入れないとね」
キキは少しためた後に、
「―――騎士団が動きはじめました」
一瞬、ほんの一瞬紅葉の肩がピクッと揺れた。その後、若干の沈黙が流れた。
「正確には、世界樹の異変に気付いた騎士団は、生命力に変わる代替エネルギーの開発を進めているとか」
「・・・まぁ、分かってたけどね。早いか遅いかの話だったわけだし。でも、ちょっと早すぎるなぁ。・・・代替エネルギーの開発ねぇ。出る杭は、根元からへし折っておこうか」
机から降りた紅葉は、その中から廃れた表紙の手帳を取り出した。
さっきから変なことは起きていた。
キキは、まるで映画のフィルムが途切れたかのように、不自然な移動をしていたり。
しかし次の瞬間、そんな事よりも圧倒的に謎な現象が起きた。
文字が生み出され、宙を舞っている。
「これって結構しんどいんよ?」
どこからか出現し、紅葉を中心にクルクルと舞い続ける『文字列』。比喩とかではなく、本当に文字が宙をフワフワと舞っている。ジブリなビックヘッドバァさんみたいな感じだ。順におって読みば意味を読み取れるだろうその『文字列』は、数を増していきどんどんと膨れ上がっていく。
紅葉はそんなことお構いなしに、手帳のページをぺらぺらとめくっていき、白紙のページに来るとその手を止めた。
「ったく・・・・・、メンドクサイことさせんなってのっ!!」
誰かを怒鳴りつけるように独り言を言う紅葉。そして、その言葉を合図に、教室を埋め尽くすまでに数を増やした『文字列』が、ズゴゴォォォオオ!!と手帳に吸い込まれていく。
凄まじい音と共に手帳に『文字列』が吸い込まれていく。そんな様子を見つめるキキ。いや、彼女の視線は紅葉にあった。主人の起こした現象には見向きもしない。
「・・・・・・・・・、」
この空間があまりにも違和感だらけだったから、少しも目立っていなかったが、キキが来てからも、そしてキキが来る前からも、紅葉は一度も目を開いていない。まぶたは閉じたままだった。
「・・・・・・・・・・、」
年中無表情が取り柄のキキの、紅葉を見守るその表情だけは、どこか悲しみを含んでいた。
どうもどうも♪
体育会でする『組体操』なるものに、若干の楽しさを感じ始めた
多趣味アキオと申します。
明日は体育会!
・・・何やってんだろ俺。
まぁそれは置いといて、
本編はちょっと進んだ感じですかね。キャラも登場。
紅葉とキキ。 ファンタジー感ゼロな人がいるのは気にしない。
これからの活躍をどうか見てやってくんなせぇ。
ではでは またまた