表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

第一章 猛暑と絶望のケーキ屋爆破



 1 ☆アーク☆


 RPGの後日談。近未来なファンタジー。


 この世界を一言でいえば、きっとそんな感じだろう。高層ビルがバンバン建っちゃうほど『科学』が発展した今でも、『魔学』として未だに魔法は重宝されていたりする。魔法陣に生命力(マナ)を注ぐだけで効果を発揮させるから、結構便利なのだ。たとえば団扇。夏季の風物詩であるこれに『空気冷却(クールブロー)』の陣を刻めばあら不思議。扇いだ風が一段と涼しくなる。

 『科学』の発展がどこよりも著しいここ、『学都』でさえもそんな感じだ。この世界は全国各地でファンタジー要素満点なのだ。


 なのだ!


 なのだからこそ!!


 アークの目の前でケーキ屋がドカンなのだ!


「えぇーー・・・、僕なにかしましたか?」


 正確には、商店街にアークが足を踏み入れた瞬間、50M先にある目的地のケーキ屋が大炎上。耳をつんざくような悲鳴は聞こえたが、その後は大きな騒ぎにはなっていない。どっちかっていうと落ち着いた感じだ。

 中にいた人もちゃんと逃げてこれたが、事態を理解できずにただ呆然と燃え上がるそれを見ている。犯人と一緒に。


 ・・・・・・・・え?なんで犯人だって分かるのかって?

 そりゃあ、そいつが炎剣持ってるからじゃん♪


 早々に騎士団が到着。それと同時に犯人と思われる人物は逃走した。


「・・・・・・な、な、な」


 何ともシュールな状況を前に、アークは口をパクパクさせるしかなかった。


「なんてっこったーーーいッ!!」






 御覧の通りアークは不幸少年だ。少し前までは、至って平凡過ぎる超普通な生活を送っていたが、『不幸』の親玉である『天子』を押しつけられてからというもの、この有り様だ。しかも、今日はその『天子』と出逢ってちょうど一年。『パーティでもしようかな』なんて思ってケーキ屋を目指している途中だったのだから、こいつの不幸も大したものだろう。


(これからどうしよう。・・・はぁ、手ぶらで帰ったら、リンもランも怒るだろうな)


 この辺りでケーキ屋っていったら・・・、とアークは携帯を取り出して、ポチポチと地図を開いた。


「・・・・・・と、遠い」


 ここ『学都』はとにかく広い。そりゃもうびっくりするぐらい。そして、普通(・・)のケーキ屋があるのは今いるところの真反対。しかも、今日は夏休み初日。+、さらに倍!な感じで今日は暑い。それも、ここ十年間で最も暑いって言われてる。『今日はべらぼうに暑いので、外出には気をつけましょう』なんて、朝のニュースでお天気お姉さんが言ってたような・・・。


「死亡フラグ、立っちゃいましたね、これ」










 2 ☆×××☆


 白桃寺学園旧校舎二階。


 学都一の大きさを誇るここ、白桃寺学園は、全国各地から通う学生がいるほどで、設備も充実していて、科学者連中にもたまに貸し出していたりするほどだ。もちろん冷房も完備している。外の尋常じゃないほどの猛暑がウソのようで、旧校舎にも関わらず廊下まで涼しかったりする。


「死ねゴルァァァァアアア!!」


 どこかの教室から、結構危な目の叫び声が漏れだした。


「何この『中年天使』とかいう名前の野郎、強すぎるんだけど。ホント死ねばいいのに」


 さらっと怖いことを言っちゃうこの子は、教室で机に腰掛けて、リモコン片手に足をぶらつかせている。


 教室の中は至って普通。等間隔に机と椅子が並べてあって、教卓が黒板の前にあって、後ろの方にロッカーがズラ~っと並んでいて。ホントに普通のThe教室だ。そんな中で、異様な雰囲気を放っているのは少女の存在だ。机もイスも高校生用に作られたものだから、小学生ぐらいの少女がいると、どれもこれも大きく見えてしまう。そして、服装はラフを通り越して水玉パジャマだ。


 少女はリモコンを握り直した。


「さぁさぁ、もいっちょやりますか!」

「ただいま帰りました、紅葉(くれは)お嬢様」

「ゴフゥッ!」


 紅葉(くれは)、というのは少女の名前だろう。思わず吹き出してしまったのは、別にやましいことをやっていたわけではない。普通の教室で、誰もいない教室で、突然後ろから声が聞こえれば誰だって驚くだろう。


「し、心臓、と、まるから、普通に入ってきてよ、キキ」

「歩くのしんどいです」

「それを(あるじ)に言うか、オイ」


 紅葉は、もういいよ、とそれ以上言うのを諦めて、もう一度ゲームを再開した。声のする方を向こうともしない。紅葉としたら、ここに来れるのはキキぐらいなもんだ、と思っているから、確認する必要もないのだろう。黒板の前に置かれている画面では、赤い帽子のヒゲ親父が、バイクにまたがりブイブイいわせている。


「んで、外どうだった?」


 世間話程度にと、紅葉はキキに喋りかけた。


「暑かったです」

「だろうね・・・、じゃなくて、変わったことでもあった?って聞いてんの」


 怒りを通り越してあきれてしまった。



 紅葉のラフな服装に対して、キキはシャキッとスーツを着こなしている。が、それは、決して高校生が背伸びしてる感じではなく、大人より大人なオーラが漂っている。

 まぁ、それはそれで教室の雰囲気に合っていないのだが。


「失礼しました」


 そういいながらもキキは、頭を下げようとしなければ、表情一つ変えない。


「そうですね、変わったこと、変わったこと・・・・・、白桃寺周辺の自販機で『つめた~い』がすべて売り切れていました」

「へー、そりゃすごいね・・・・・、まじで?」


 紅葉はその言葉に気を取られ、見事に画面上では髭のオッサンがバナナを踏んでクルクルしてる。そして、その一瞬の隙に緑の恐竜がオッサンを抜き去っていった。


「・・・な、な、な」


 しばらく愕然としていた紅葉だが、『一位 中年天使』の文字を見て、リモコンを画面に投げつけた。パシッとキキに受け止められたのが気に食わなかったのか、紅葉はぶーっと頬っぺたを膨らましていた。



「それはそうと紅葉お嬢様、そろそろ〆切が迫っています。夏休みも始まったわけですので、しっかりと書きあげてくもらわないと」


 その後に、キキは真剣な声が真隣(・・)から聞こえた。・・・まぁ、さっきまでと表情も声色も変わってないけど。


「わーってるって。ちゃんと考えてるからさぁ」

「考えてるだけじゃ何も進みませんよ。『計画』だって、中途半端になってしまえば『バランス』が崩れてしまいます」


 分かってるってばぁ、と紅葉はあしらうように手を振る。『いつの間にかキキが真隣に』なんて不思議現象を無視して、二人とも会話を続ける。


「それと、次の計画なんですが―――――」

「あぁ、あれね。二年ぶりのデカイ仕事だからね。気合い入れないとね」


 キキは少しためた後に、


「―――騎士団が動きはじめました」


 一瞬、ほんの一瞬紅葉の肩がピクッと揺れた。その後、若干の沈黙が流れた。


「正確には、世界樹の異変に気付いた騎士団は、生命力(マナ)に変わる代替エネルギーの開発を進めているとか」

「・・・まぁ、分かってたけどね。早いか遅いかの話だったわけだし。でも、ちょっと早すぎるなぁ。・・・代替エネルギーの開発ねぇ。出る杭は、根元からへし折っておこうか」


 机から降りた紅葉は、その中から廃れた表紙の手帳を取り出した。




 さっきから変なことは起きていた。

 キキは、まるで映画のフィルムが途切れたかのように、不自然な移動をしていたり。


 しかし次の瞬間、そんな事よりも圧倒的に謎な現象が起きた。


 文字が生み出され(・・・・・・・・)宙を舞っている(・・・・・・・)


「これって結構しんどいんよ?」


 どこからか出現し、紅葉を中心にクルクルと舞い続ける『文字列』。比喩とかではなく、本当に文字が宙をフワフワと舞っている。ジブリなビックヘッドバァさんみたいな感じだ。順におって読みば意味を読み取れるだろうその『文字列』は、数を増していきどんどんと膨れ上がっていく。

 紅葉はそんなことお構いなしに、手帳のページをぺらぺらとめくっていき、白紙のページに来るとその手を止めた。


「ったく・・・・・、メンドクサイことさせんなってのっ!!」


 誰かを怒鳴りつけるように独り言を言う紅葉。そして、その言葉を合図に、教室を埋め尽くすまでに数を増やした『文字列』が、ズゴゴォォォオオ!!と手帳に吸い込まれていく。



 凄まじい音と共に手帳に『文字列』が吸い込まれていく。そんな様子を見つめるキキ。いや、彼女の視線は紅葉にあった。主人の起こした現象には見向きもしない。


「・・・・・・・・・、」


 この空間があまりにも違和感だらけだったから、少しも目立っていなかったが、キキが来てからも、そしてキキが来る前からも、紅葉(くれは)は一度も目を開いていない。まぶたは閉じたままだった。


「・・・・・・・・・・、」


 年中無表情が取り柄のキキの、紅葉を見守るその表情だけは、どこか悲しみを含んでいた。








どうもどうも♪

体育会でする『組体操』なるものに、若干の楽しさを感じ始めた

多趣味アキオと申します。



明日は体育会!


・・・何やってんだろ俺。



まぁそれは置いといて、

本編はちょっと進んだ感じですかね。キャラも登場。

紅葉(くれは)とキキ。 ファンタジー感ゼロな人がいるのは気にしない。


これからの活躍をどうか見てやってくんなせぇ。


ではでは またまた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ