第八章 怪しすぎる呼び出しメール
☆アーク☆
「ったく、このクソ暑いなか、なんで俺達だけ補修受けなきゃなんねーんだよ」
「S組は問題児の巣窟、なにしでかすか分かったもんじゃないからね。先生達からしてみれば、なにか問題起こす前に学校に閉じこめておきたいんだろうね」
久しぶりに死ぬほどの猛暑のなか、アークとオウジは学校に向かって永遠と続いて見える通学路を、これまた永遠と歩き続けていた。電車にでも乗れればいいのだが、何の嫌がらせか監視寮から一番近い駅というのが白桃寺学園前。乗ろうにも乗れないこの悔しさ。
オウジがうだうだ愚痴っているのを、隣でアークは適当に聞き流していた。
なにも頭に入ってこない。
「・・・・・どうした、まだあの爆弾魔のことが気になんのか?メアドとかも渡してないんだろ?連絡なんてくるわけねーって」
「たしかに、そうなんだけど」
あれから二日が経った。
そろそろ天子の治療の効果が切れる頃のはずなのに、フレムからは何の連絡もない。いざとなったら家に来ることだってできるはずなのに。
ルミアの容体が気になる。フレムが今何と戦っているのか気になる。
そのせいで、最近はずっと上の空状態が続いていた。
(一人で何とかするって言ったくせに、何もできちゃいないじゃないか)
そんなことを考えながらとぼとぼと歩いていた。
と、ポケットのなかの携帯に着信があった。
「誰からだろう?」
携帯を開いた。メールが届いてる。
オウジが画面をのぞいてきたがスルー。
「見たことないアドレスです」
「すんごい怪しいな」
少しためらったが、一応見てみるか。
『フレムだ。いきなりですまない。話しがあるから、深夜二時に白桃寺駅の公園に来てくれ』
・・・・・・・・・。
(あ、怪しすぎる!)
オウジは隣で大爆笑している。
「はははっ!は、はら、腹いてぇ!ははっ!これぜってー罠だって!わざとらしー!ははははっ!」
「ち、違う!あの人はそんなことしない!」
「でも、こ、こ、これは、クククッ、ぜってー罠だって。ククッ」
頑張って笑いをこらえているが、あまりにも露骨すぎる罠にオウジは吹き出しそうになっている。正直アークもここまでバレバレだと笑ってしまうそうだ。
「ち、違うってば!」
「なにが違うってんのよ」
「「のわっ!!」」
突然後ろから渋い声の軽い言葉が聞こえた。バッ!と二人そろって振り向くと、そこには薄緑の作業服にボサボサ頭のおっさん、レグルスがいた。
「どっから沸いて来やがったんだよ、おっさん」
「教師をゴキブリ扱いってどゆこと!先生泣くよ、泣いちゃうよ?」
「はいはい、もう分かりましたから、さっさと学校に行きますよ」
「反応薄っ!それもそれで酷くない!?」
まったく、と小さくため息をついて、アークはさっさと歩きだす。レグルスが加わったことで暑い暑いの連呼が無くなった代わりに、バカな茶番が永遠と続くようになった。
結構時間が経ち、そろそろ学校に着くだろうというぐらいまで来て、突然レグルスがあっと声をあげた。
「どうしたんですか?」
「い、いや、なんでもないんよん」
返事をする声が揺れた。何かに気づいたのか。それとも何かを思い出したのか。さっきまでと明らかに声色が違う。
――――――この人、何か知ってる。
それが今アークの抱えている問題に関することではないかもしれない。しかし、それでも変な胸騒ぎがした。この人が何か関わっている気がした。
「君等には関係ないかも知らんけどね」
ふざけた口調は変えないまま、レグルスは1トーン下げて話しを続ける。
「お二人さんは知ってるかい?今日、駅前のゲームセンターでさ・・・・・・・、太鼓の〇人の最新作が出てるんだってさ♪」
「マジか!」
「ホントに関係ないじゃないですか・・・・・、」
ゲーム好きなオウジはやたらと食いついたが、期待を裏切られたアークはかなりのショックを受けていた。
「ねぇねぇ、お二人さ~ん。補習なんてめんどいこと止めて、一緒にゲーセン行こうず行こうず」
「それが教師の言うセリフか!学校だってすぐそこなんだから、さっさと行きますよ」
「「えぇ~」」
「えぇ~、じゃない!」
抵抗する二人をズルズルと引きずってアークは、もう目と鼻の先にある学校を目指す。
☆アーク☆
監視寮三階三〇三号室。
(ふぁ~~・・・・、今日は余計に疲れた気がするな。ベットに転がったらすぐに寝てしまうそうだよ)
今日、いやもう昨日の話しだが、補習が終わった後にオウジとレグルスに連れられて、何時間もぶっ通しでばちを握らされていたから、想像以上に疲れたし財布も軽くなった。びっくりびっくり。
「・・・・・そろそろ出た方がいいかな?」
壁掛けの時計をちらっと確認した。時刻は一時半過ぎ。ここから駅前の公園までの距離を考えるとまだ少し早いきもするが、今は動いていないともう寝てしまいそうだ。
ふと、絶対罠だ、というオウジの言葉を思い出した。
(オウジはあぁ言ってたけど、かといって無視するわけにもいかないし、・・・・・それになにより―――――)
ルミアが心配だ。別に気にすることもないのだが、右腕が変形したり、背中から翼が突き出てきたり、あんな光景を見せられて無視するなんてできない。
しかし、オウジの言葉が耳から離れない。
「ふぁ~、あれ?アーク、どこ行くノヨ?」
「あ、ごめん、起こしちゃったかな?」
と、準備をしていた物音を聞いて、リンが目覚めてしまった。眠い目をこすりながらアークの姿を捉えたようだ。・・・・・ここで、本当のことを言うわけにはいかない。きっと二人のことだから一緒に行くと言い出してしまうかもしれないからだ。
「大丈夫だよ。朝のパン買い忘れたから、コンビニ行くだけだよ」
「そっか。いってらっしゃいなノヨ。ふぁ~」
「・・・・・・いってきます」
リンが眠るのを確認してから、ゆっくりと外に出て扉を閉める。
フレムを信じたい気持ちもある。が、アーク自身あのメールが罠だと思ってるところもある。
新未解原子の話が嘘なんじゃないか、と。
爆破事件にも他の理由があってアークを騙してるんじゃないか、と。
でも、フレムを信じたい。
でも、リンもランも危険にさらすわけにはいかない。
そんな心の葛藤の中、何かを振り切ろうと小走りで目的地に急いだ。
☆×××☆
アークが監視寮から出ていくのを確認して、ふぅと息づく男が一人いた。
「ったく、どんだけ疲れさせても、結局あいつん所に行きやがんのかよ」
アークの部屋の真上、四〇三号室の前で、オウジは息を潜めていた。
絶対にあれは罠だ。オウジの考えが正しければ、きっと誰かがアークの部屋の前で立ち止まるはず。今日は、運良く監視寮には誰もいない。戦闘にでも持ち込んで、確実に追い返してやる気でいた。・・・・・というよりもオウジとしては、助けてやったんだから金寄越せ、とアークに集る気でいた。
(ほ~ら、きたきた♪)
いろいろな都合が重なって今日は誰も帰ってこないはずの監視寮に、真っ直ぐ入ってくる人影があった。
「・・・・・・・・・・、」
警戒心をMAXにしていたオウジは、その影の口元が不気味な弧を描いたことに気付かなかった。
(下に・・・・・、いるな)
寮に隠れて影が見えなくなってから、しばらくして真下に異様な雰囲気が近づいたのを感じた。
オウジは、真下に意識を集中させてじっと待つ。
気配を感じてからしばらくの沈黙。人通りの少ない監視寮ではほとんど何の音もしない。遠くの方で車が通る音が小さく聞こえる。
そして影は、たっぷりと溜めてから三〇三号室のドアノブを掴んで、
(回したッ!!)
瞬間。
影の身体はグン!と後方に引っ張られ、廊下の塀を突き破って空に投げ出された。
ドダンッ!と派手に地面叩きつけられた影の目の前に、オウジは四階から飛び降りてきれいに着地する。
「ワリーな、目には目を、歯には歯を、罠には罠を、だ」
罠。誰かが外からドアノブを回したと同時に起動。圧倒的な生命力が衝撃波を生み、敵を吹き飛ばす魔導符を仕掛けていたのだ。今の不意打ちで相当なダメージ量を稼げたはず。オウジの問いかけにも影は反応する事はできない。
「・・・・・クククッ」
はずだった。
影はのっそりと起きあがり、真夜中の月の光に照らされて、その姿が、その顔が、
見えた。
「・・・・・やっぱりあんただったか。随分と探し回ったんだぜ?」
☆アーク☆
「遅いなぁ・・・・」
携帯を開いて時間を確認した。2時13分。
少し早く来すぎたので、かれこれ20分ぐらいは待っているのだが、フレムが来る気配は全くしない。
メールを確認した。
「ちゃんと『2時に待ってる』って書いてあるよな?というより、どうやってアドレス調べたんだろ?」
アークからは教えた覚えはないが、電子図書館にハッキングしたこともあるとか言ってたし、個人情報は筒抜けなのかもしれない。
一応それも問題だが、今はそんなことどうでもいい。
(なんで来ない・・・・・?)
ルミアの容体が悪化したから呼んだんじゃないのか?
何か報告するようなことがあったから呼んだんじゃないのか?
まさか!
(罠っ!?)
「遅くなった。悪いな」
バッ!と帰り道を戻ろうとした瞬間、後ろから声がかけられた。
「ん?どこに行こうとしていたんだ?」
「い、いや。フレムさんが遅れたから、一度帰ろうと思って」
「・・・・・そうか。待たせて悪かったな」
フレムは、少し俯いた状態でゆっくりと近づいてきた。
暗いのはいつも通りだが、雰囲気がなにか違う。
「ところで、話しって何ですか?」
「・・・・・ルミアの容体が悪化した」
「なッ!?」
そ、そんなばかな!
あまりの驚きに、夜中にも関わらず大きな声を出してしまった。
「左腕まで変形しはじめて、翼の巨大化が止まらなくなって・・・・・、」
「何でもっと早く言ってくれないんですか!?」
「・・・・・・・・・・クッ!」
アークの言葉に返事はなく、フレムはただ、奥歯を噛み砕く勢いで食いしばるだけだった。
しばらくの沈黙。
「家、何処ですか?」
それを破ったのはアークだった。
「なにをするつもりだ?」
「一度、家に帰ってリンとランを連れてきます。そこからフレムさんの家に行ってルミアさんの応急処置をするんですよ!ほっとくわけにはいかない!」
ここで待っていてくださいすぐ戻ってきますから、とそれだけを言って走りだそうとした。
その時、
「ちょっと待ってくれ!!」
「へ?」
ここへ来てはじめて、フレムが感情をむき出しにした。思わずアークも変な声をあげてしまう。フレムは右拳をきつく固めて話し出す。
「お前に全てを話した日、あの日の帰り道。一人の男に会ったんだ」
何の話しだ。なにが言いたいんだ。
でも、不思議と聞き入ってしまう。
嫌な予感がした。
「男が言うんだよ。『ある対象』を入手できれば、あいつを、ルミアを助けてやるって」
「『ある対象』って・・・・?」
そこで、タイミングを計ったように携帯に着信があった。
慌ててアークが取り出して確認する。オウジからだ。
急いで電話に出た。
「ど、どうしたんですか、オウジ?」
『おっそいぞ、オイ!さっさと戻ってこい!!』
「ど、どう言―――――」
言いきる前に、ドンっ!と携帯越しに激しい爆発音が聞こえた。
「ちょ、え?何がどうなってんですか!?」
『るっせぇよ!リンとランが狙われてる』
「そ、そんな・・・・・、」
『だから言ったろ罠だって。本人はそっちにいるだろうけど、そっちは囮だ。さっさと戻って来いっての!!』
会話の最中でも爆発音が続いていた。
あっちでは激しい戦いが繰り広げられているのだろう。
いや、そんなのは今はどうでもいい。
(リンとランが狙われてる・・・・・・?)
後ろにゆっくりと振り返ると、フレムが全てを悟ったのか俯き加減にフルフルと震えていた。
『ある対象』。たぶんそういうことだろう。
フレムの口が少し動いた気がした。
「―――――まはさせない」
「・・・・・・・・・、」
そして、バッ!と顔を上げた。
「邪魔はさせない!どんな手を使ってでもルミアを助ケる。絶対に邪魔はさセナい!!」
目に揺らぎはない。
本気だ。
なにがなんでも助けるという気持ちがひしひしと伝わってきた。
でも、
「・・・・残念ですが。僕だってここだけは譲れません。絶対に帰って見せます!」
家族を守るため、どんな手でも使う男二人の戦いが、始まる。
[゜д゜]<インフィニッティー な状態の多趣味アキオでございます♪
いやぁ、二週間以上建っちゃったよ。あははははー
にしてもあれですね
インフィニティはおもろいですね
トライアルライセンス取ってから、ずっとオンラインで遊んでますわ(笑)
そのせいで更新遅れちゃいました
あ、そうそう
これを見てくれた上に、インフィニティやってるよーってかたは
ユニバース2で『レグルス』って名前で遊んでるんで
よかったら声かけてください
で、そろそろ今回・次回について
またまた僕の駄文のせいで、いつも通り雰囲気伝わらなくなってるけど
どうでした?だいたいわかってくれました?
次回はいよいよ戦闘シーン
RPGの世界観でやってるのに、全くしてこなかった戦闘
丸まる一つ戦い枠で使っちゃいます
んじゃ、そろそろこのへんで
活動報告もやるつもりだから
また確認してね♪