第六章 フレムとルミアとルミアの真実 『前編』
☆アーク☆
「・・・・で、なぜ彼、フレム・リュングベルから逃げていたんですか?」
白桃寺学園特室寮。別名『監視寮』の三階・三〇三号室。
アークの部屋だ。学都には地方から来てる学生の方が多いから、一般の家より学生寮が多い。ここ監視寮も普通の寮となんら変わりないが、白桃寺の問題児を一カ所に固めて入れられているため、ここの住民は厄介な人が多かったりする。監視寮に入れられた当初はアークも嫌がっていたが、今となっては慣れたものだ。ちなみに隣の部屋にはオウジが住んでいる。
部屋の中では、机を挟んで向かえ合うようアークとルミアが座っている。
「ジーーーーーーなノヨ」
「ジーーーーーーデスぅ」
「あ、あのぉ」
アークの隣では、リンとランがルミアを凝視している。さすがにルミアも困ったような笑顔で固まっている。それを見てアークは、はぁ、とため息をついてしまう。
「そりじゃあ話しに集中できないでしょ。ゲームやってていいから、それ、止めてください」
「わーい!やったノヨ♪」
「久しぶりにゴエ〇ンやるデスぅ」
飛び跳ねて二人は喜び、押入から箱を引っ張ってきてニンテ〇ドー64を取り出して、せっせと準備を始めた。
「なんか、うるさくてすみませんね。これだったら学校の方がよかったかな?」
「い、いえ。賑やかで楽しいのは良いことですから。話しを続けましょう。えぇーっと、『なんで私が兄に追われてたか』ですよね?」
「はい。何故お兄さんに追われてたんでーーーー」
・・・・・・・・・・え?
「お兄さんっ!?」
「え、あ、はいぃ」
「あ、ごめん。驚かせちゃって」
あまりにもアークが驚いたので、リンもランもビックリしたし、ルミアに至っては目の前で怒鳴られて若干怯えた感じになってる。
「だ、大丈夫です。でも私、説明してなかったですか?」
「うん、全然、一切、何にも聞かされてないです。・・・・・じ、じゃあ、あの時の『見つかったら殺される』って言うのは?」
「そ、それは、その、あの・・・・」
アークの質問に、ルミアは何故か赤くなり、もぞもぞし始めた。
「その・・・・・、プリン、食べちゃったから」
「あの、断片的に答えられても困るんですけど」
ルミアは独り言のようにボソボソつぶやいた。
プリン?何のことだよ。
うつむきかげんに目だけでアークを見ると、ルミアは覚悟を決めたのかちゃんとした口調で話し出してくれた。
「兄はですね、すっごい甘党なんですよ。毎日デザート買ってきて食べてるんですよ、二人で」
アークが想像したのは、あの爆弾魔の話しとは思えないくらいのほほんとしたものだった。・・・・・否、この話しのフレムが本当で、なにか理由があってやってるとしたら?
「それで昨日、兄が珍しくプリンを残して『今日のプリンは絶品だ。明日にとっておく』って、私は食べちゃったんですけどね、それがもうすごくおいしくて!・・・・・で今朝、冷蔵庫の中にあった兄の分も、その、食べちゃって・・・・、で、でも!すんごくおいしいんですよ!?知ってますか?『マボロシプリン』!」
「は、はぁ。そんなこと言われましても・・・・・」
『マボロシプリン』って、この前のテレビで紹介されてたっけ?辛口コメントで有名な司会者が。珍しくべた褒めしてたけど、確かそれってすごく高かったような・・・。
「高級なエッグベアの卵を使ってるからちょっと値は張るんですけど、そのこだわり方がすごく良いんですよ!エッグベアの卵って普通のより苦いんですけど、それを上手く使って深みのある甘さが生まれるんですよ!それが口に入れた瞬間に絶妙に広がっていって、これってもう、最高じゃないですか!?」
「『じゃないですか!?』って言われましても・・・・・」
ほら、そんなに熱弁したせいでリンもランも目をキラキラ光らせちゃってるじゃん。無理だよ、いや、マジで。高かったもん、あれ。
「・・・・ちなみにあれ、いくらするんですか?」
「たしか、一個七百円ぐらいですかね」
「高けェ!そりゃあ怒るよ・・・・・、それで今まで逃げてたと?」
小さくうなずいたルミアを見て、アークはため息をつくしかなかった。は、話しを変えよう。アークはついに粘つき始めた二つの視線を無視して続けた。
「じゃあ次に。最近フレムさん、お兄さんに変わったことはなかったですか?」
「そうですねぇ、変わったことかぁ。・・・・・変わったと言うか、最近帰ってくる時間が遅くなった気はしますけど・・・・・」
「そ、それです!いつ頃からですか?」
「ホントに最近になってからですよ。つい一週間ぐらい前かな。私に隠れてコソコソ何かやってるみたいなんです。そういえば、私が熱出して倒れた時からだったような・・・、その夜に夜間で唯一やってる中央病院までわざわざ連れて行ってくれたんです」
「・・・・・そう、ですか」
やっぱりこの子、事件については全く知らないみたいだ。その情報がなにになるかは関係ない。が、何かムズガユイ感じをアークは感じていた。騎士団やフレムの動き、学生会としてここまで調べたが、わかるようでわからないような、目の前の物をつかめないイヤな感じ。
それに、彼女を見ていると兄であるフレムが意味なく悪さをするような人には思えない。
(一体、この街では何が起ころうとしているんだ!?早く『救済』を始めないと・・・・・、)
この街は僕が守る!と主人公っぽく固く決意をした。
と、その時、
「「いっけぇぇぇえええ!!百烈パァァァアアアンチッ!!」」
奇怪な叫び声が部屋の中に響いた。・・・・もう最初のボスまで来たんだ。画面では、丸い両手足のロボットがすごい笑顔で敵キャラをボコボコにしていた。なんという鬼畜ゲー。
大人な二人はそんな様子を見て苦笑いを浮かべていた。
☆???☆
ここだ。ここだけ生命力の流れが違う。
・・・・・・・・見つけた。
早く帰ろう。お前はそこにいてはいけない。
さぁ、帰ろう。
・・・・・ッ!?なんでだ!?
なんでテメェがそこにいる!?
アーク・・・・・、アーク・ルドワーぁぁァァアアアアあぁぁァァああアッ!!!!
☆アーク☆
ドォォォオオオンッ!!
と鈍く低い音と共に、部屋全体が地震にでもあったかのように大きく揺れた。
あまりの衝撃に四人は、驚きや恐怖が声にならなかった。身を守る行動すらとることすらできず、アークの体は壁に叩きつけられた。
「ッガ!アァ!!」
空気を吐く音だけが口から出た。
(じ、地震か!?)
みんながみんな、いきなりのことで思考が追い付いていない。ほんの少し遅れてから耳をつんざくような悲鳴があった。
アークは、壁に叩きつけられた時のダメージがある程度回復すると、すぐに部屋を飛び出して原因を探りにいった。部屋のドアを開け放った。
「こ、これは!?・・・・・、あいつは」
まず目に入った光景は、戦場にいるかのように広がる炎。それが監視寮の前にある小さな公園を包んでた。ブランコや滑り台はほとんど形が無く公園とは呼べないような状態で、周りの建物がほとんど無傷なのが不思議なぐらいだった。
そして、何よりもアークの目を引いたものは、そんな火の海の中に立っている一つの影だ。
フレム・リュングベルだ。
「・・・・ハァ!・・・・・ハァ!」
ここからだと熱さで視界が揺らめくので良く見えないが、彼は大きく肩を動かし呼吸を整えているようだ。炎操能力の力をフルで放出して多くの生命力が消費されたのだろう。
「アーァァァァク・ルドワァァぁぁアアアぁぁぁああアアアア!!」
獣の咆哮に近い叫びが響くと同時にフレムの周辺で激しく燃え盛っていた炎が、凄まじいスピードと圧倒的な量で押し潰すようにアークに襲いかかった。
急な戦闘シーンへの突入。
(まずい!盾の形成が間に合わない!!)
轟!!という激しい音を立ててアークに襲いかかる炎は、やがて皮膚を焼き付くし身を溶かし骨を消し灰へと換え、アークは跡形もなく消えてなくなる、
はずだった。
「アッツ!なにこれマジ死んじゃうってっ!!」
津波のように押し寄せてくる炎の塊は、アークに直撃する前に四方八方に飛び散るだけで、アークは傷ひとつ付くことはなかった。
アークの目の前には、盾になるように両手を広げたオウジがいる。
「オウジ!?」
「痛ぅ・・・・。おい、アーク!盾になってやってんだ、あいつ例の爆弾魔なんだろ!?あとで情報はたっぷり聞かせてもらうぞ!!」
魔導符の力か。
魔法の術式という幾何学模様が描かれた特殊な紙で、中に魔導器が埋め込まれているため、生命力を流すことで魔力の生成と魔法の発動を行うことができる。
オウジは回復魔法の符を体に直接張り付けて、ダメージを負う毎に肉体の回復を行っている状態だ。いわば破壊と再生を永遠と繰り返すようなものだ。そんなものが続けば並大抵の精神力では、すぐに意識がとんでしまうほどの痛みが彼を襲うはずだが、諸事情により死ぬほどの激痛は軽減されていた。
ようやくすべての炎がオウジの体を焼き終わり、終わったと同時に一瞬オウジがぐらついた。確かに『頑丈』ではあるが、相当なダメージを受けたのだから仕方はない。まぁ、彼ならすぐに回復するだろう。
「・・・・・・・・、」
アークは無言のままに下にいるはずのフレムに視線を向けた。いきなりの状況にもあまり驚いた様子もなく、ただただこっちを睨めつけている。
「(かまえて、オウジ。そろそろ来るよ)」
「(テメェ、さっき死にかけてたの見てただろうが…、ったく。)・・・・・、了解!!」
アークは十字架のストラップを、オウジは魔導符を構えた。フレムはフレムでライターを手に構えている。
腰を少し落として、三人が三人とも相手の行動を窺い、ピリピリした雰囲気が場に流れた。ようやく戦闘モノっぽく戦闘シーンが、
(始まるっ!!)
と、そのとき、玄関から勢いよくルミアが飛び出してきた。
急なことで拍子抜けをしてしまったが、ルミアは寮の焼け焦げた壁や公園を見て小さく悲鳴をあげると、ようやく視界にフレムを捉えた。
「・・・・・・ルミア、」
フレムは男の部屋から出てきた妹の姿をとらえると、フルフルと肩を震わせて込み上げてくる怒りを沈めている。
その妹から言葉が発せられる。
「に、兄さん?・・・こんな所で何をやってるんですか!?」
「・・・・・・お前こそ、ここでなにをやっていた?」
「アークさんと話をしてただけです。ただそれだけなのにこんな・・・・・」
まさか!とフレムが初めて焦りの様子を見せた。再度アークを掴みかかりそうな勢いで睨みつけた。
「こんな・・・・・、犯罪者みたいなこと、もうしないでください!」
フレムの怒りが止まった。
視線はアークとルミアをいったり来たりを繰り返している。
(・・・・・・・ん?どうなってるんですか?)
「ルミア、帰るぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください!!話があるんですっ!!」
アークは、くるりときびすを返して歩きだしたフレムを止めた。なんとか足を止めてくれたフレムを逃がしてしまう前に、
「すみませんが、二人とも部屋に戻ってもらえませんか?オウジには、後で話しますから」
アークは、無言のままで反応を見せないフレムの態度を『承諾』と受け取り、二人にそう伝え席をはずしてもらった。
どうしても二人で話す必要がある。
階段を降りて公園にでると、フレムが先に話し出した。
「何でルミアに事件の話をしなかった」
「あなたが隠していたものを、部外者の僕がバラすのはどうかと思いまして」
少しの沈黙があと、フン、と鼻をならした。
「話しだけなら聞いてやる。答えるかどうかは内容次第だ」
その言葉を聞いてアークは、軽く一礼してから口を開いた。
「僕の勘違いでルミアさんを連れ回してしまい、すみません。彼女からも少しあなたについて聞かせてもらいました。それで僕、思ったんです。何か理由があるんじゃないか、って」
「・・・・・理由があったらなんだ?こんな情けねー俺に同情でもしてくれんのか?」
「もちろんです。あなたに手を貸そうと思っています」
「・・・・・・・・・、」
予想もしてなかったバカな答えが返ってきて、フレムの言葉が詰まった。
またも二人の間に沈黙が流れ、フレムはそのまま何も言わずに、場から離れていくためにゆっくりと歩きだした。
「・・・・・ルミアには、先に帰ったと伝えてくれ」
「ッ!!ちょっと待ってください!」
アークが制止を呼びかけるも、今度は止まってくれすらしなかった。
フレムの決意がさっきの沈黙で十分にアークにも伝わった。それでもそれを隠すように、内なる気持ちが漏れださないようにと、出来るだけ冷静に、出来る限り冷酷に、普段のフレムのキャラではないはずなのに、静かに深く、ボソッと呟くように去り言葉を残すように喋った。
「俺は学生会の力は借りない。俺一人で何とかしてみせる。・・・・・・、じゃあな」
「違いますっ!僕は、・・・僕はッ!!」
なんとかして話を聞いて貰わないと、止まってもらわないと。
何か言わなきゃ。止めないとっ!僕の話を聞いてもらわないと。
止めないと、何か言わなきゃっ!!
「僕、ホモなんですッ!!」
・・・・・・・・、思惑通りフレムの動くが止まった。
今まで守ってきた何かを失って。
無意識で口から出た言葉を、自らの声で聞いたアークは、その意味を理解して汗をだらだらと流して、動揺した。
「・・・・・・・・ッ!」
「いやっ、違うんですって!嘘ですって!!だから、お願いだから全力で逃げないでぇぇェェエエエぇぇ!!」
太陽が西に沈みかかった頃、全力で走る青年の後ろを追いかける変態が、学都の至る所で確認されたという。
どもども、テストの点が崖っぷちに下がっていった、
多趣味アキオさんでございますよ~♪
・・・・・はぁ、
テンション上がんねーよ、ばかやろー!!
ってことでまた今度早めに投稿するので
今回はこの辺で・・・
またねぇ・・・・・、はぁ