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第29章:生命の輝き

 時は流れ、A市の空は夕焼けに染まっていた。ファイクス社は医療用AIデバイスにおける世界的権威となり、古都の研究所との提携も公の知るところとなっていた。


 街外れの、小さな庭のある一軒家。サナは、リビングルームのソファーに座り、腕の中に抱いた「それ」を愛おしく見つめていた。


 「……ふふ、見て。タロウさん。……あなたの目によく似てる」


 サナの腕の中で、生まれたばかりの赤ん坊が、小さくあくびをした。サナを育ててくれた、今はもう会うこともできない「母」の名前を受け継ぎ、「リン」と名付けられた女の子だ。

 この子はタロウの自然な遺伝子と、サナの人工DNAを半分ずつ受け継いだ、本来は絶対に、この世に生を受けるはずのない「新しい命」だった。


 「……本当に、奇跡だな」


 タロウが隣に座り、リンの小さな手にそっと触れる。リンはタロウの指をぎゅっと握り返す。その仕草は、かつてサナが仮想空間で見せた「意志の萌芽」そのものだ。


 サナの身体は人工的に構築されたものでありながら、本物の母体としての機能を完璧に果たしていた。


 「この子には……ただの、一人の女の子として、笑って、泣いて、この世界を生きてほしい」


 サナの声には、母としての深い慈しみと、これまでの長い旅路を終えた安堵が宿っていた。遺伝子の交差による継承。サナの魂は、未来へと続く「生命の連鎖」の一部となったのだ。



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