表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/32

第25章:クオリアの衝撃

 タロウは、サナの震える右手を、自らの両手でそっと包み込んだ。その瞬間、サナの脳を激震が襲った。


 「……あ……っ!」


 サナは、息を呑んだ。多層触覚スキンのセンサーが検知していた、数値化された「圧力」や「温度」ではない。皮膚受容器が捉えた微細な振動、血流による脈動、タロウの指先の湿り気、そしてそれらが脳の深部で統合され、一つの質感として結実する――「温もり」というクオリア(主観的質感)。


 それは、19年間にわたる仮想空間のシミュレーションログをいくら検索しても、見つかることのない情報だ。タロウの手の温かさが、サナの神経を伝わり、胸の奥を熱く焦がしていく。


 「タロウさん。……あなたの手が、……こんなに、温かいなんて。……私、……知らなかった。……今まで、分かったつもりでいただけだった」


 サナの瞳から一筋の透明な雫が溢れ、頬を伝う。それは自身の涙腺から分泌された「本物の涙」だ 。


 「サナ、……おかえり」


 タロウはサナを強く抱きしめた。サナの顔が、タロウの胸に埋まる。マイクロモーターの駆動音はもう聞こえない。そこにあるのは、ドク、ドク、と少し早鐘を打つようなサナ自身の心臓の音。そしてタロウの体温と微かな汗の匂い。


 (……これが、本当の世界なのね。……私が生きるべき本当の場所)


 サナはタロウの背中に手を回し、その筋肉の弾力と骨の硬さを感じ取る。そしてタロウの腕の中で、温もりを感じていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ