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第11章:キャンパスの聖域

 新幹線が目的地に滑り込み、ホームに降り立った瞬間、サナを包んだのはA市とは異なる「空気の重み」だった。タクシーに揺られて西へ。山を遠くに望む丘陵地帯を登っていくと、そこには赤茶色のタイルが夕日に映える、荘厳なビル群が姿を現した。


 「ここが大学キャンパス?」


 ミカが窓に張り付いて声を上げた。


 丘の上に築かれたそのキャンパスは、知性の要塞のようだった。モダンなデザインの校舎が連なり、古都の街並みが一望できる。


 「ここは……なんというか、空気が透き通っているな」


 ハヤトが感嘆の声を漏らす。


 彼らを出迎えたのは、メールの送り主であるミナカタ研究員だった。ウェブ会議での鋭利な印象そのままに、彼は白衣のポケットに手を突っ込み、不敵な笑みを浮かべて一行を案内した。


 「ようこそ、ファイクス社の皆さん。そして……美しきデジタルソウルたち」


 ミナカタがサナとミカに視線を向ける。その目には、彼女たちを「完成された検体」として愛でるような、科学者特有の純粋さがあった。


 案内された施設の内部は、最新インフラが整った異空間だった。壁や天井には複雑なパイプが這い、恒温恒湿室や無響室といった高度な実験設備が並んでいる。


 「ミナカタ先生。……ここで、何が行われているのですか?」


 サナの問いに、ミナカタは足を止め、窓の外の濃青に染まり始めた空を見上げた。


 「ここでは『命』の定義を書き換えている。……君たちアンドロイドとは違う、生物学的な『命』をだ」


 サナは、自分の胸の奥にある「しこり」が、期待と恐怖で微かに震えるのを感じた。



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