リーナとエリク⑤
とあるテレビのニュースでは例の彼は死刑が決まったという事だったが、それに合わせるように、この冤罪に関わった者達が例の奇病にかかるという噂が流れた。彼の収容所にはもう誰も存在しない。皆奇病で死んだ。国中に奇病は流行っていたけれど彼に関わった人の発病率は異常だった。そんなおり真犯人が名乗り出る。彼女は泣きながら彼に謝罪し自分を助けてくれとさけんでいる。
私は名乗り出てしまったら役割りが終わることに気付かないのかと疑問に感じる。案の定真犯人の女は翌日例の奇病が発症する。
彼は誰もいない収容所で餓死寸前の所を発見される。彼の治療に関わった者は皆死んだが、彼が体力を取り戻すに従い例の奇病自体は収まりを見せた。世界200億の人口のうち2億人がしに、国内3億人のうち2000万人が死ぬ。彼の収容所のあった街は全員が死んだ。
人が死ぬ度に笑い声が聞こえる。
彼ではなく女性の声だ。だんだんその声は泣き笑いに変わる。伯父の墓を蹴り倒した時に聞いた声に思えるけれど確証はない。
私の母が死んだ時には笑い声だった。1年後私の祖父母が死んだ時には泣き笑いだった。
声は聞こえる人と聞こえない人がいた。
私はきっと墓を蹴り倒したから生き延びた。
彼が釈放されても、もう誰も彼に石を投げなかった。
奇病は一時のパンデミックを乗り越えただけで0になった訳では無い。
彼の寺の信者は再び彼の元に集まる。彼に諭され復讐を諦めた者達は驚くほどに無事な者が多い。
復讐をしなくとも彼の寺の信者に手を出した者は死ぬのだ。彼等はそんな人達の為に当時の復讐心等嘘のように自分達の為に死んでくれるなと祈る。
その目、その表情には優越感からくる不気味な笑みが浮かんでいる。彼はカリスマの地位を取り戻した。
彼は、彼を怖がる人に合う事で、犠牲者を、出さないために、顔を変えた。彼は信者と会う時は面をつけている。彼の今の顔は彼を手術した者しか知らない。
手術した者は誰かも知らない。
彼は手術した事だけを世間に公表した。
「私は、例の奇病が私と関係があるとは思っていません。ですが、噂がある事はしっています。だから私は今面をつけています。もしかしたら今あなたの隣で助けを求めている人は私かもしれません。誰だって困っている時に見捨てられるほど寂しい事はありません。それがもし私でないとしても、その人には手を差し伸べて欲しいのです。私はそう願います。」
彼は面をつけそう話した。私はもうけったくそ悪いとは考えられなくなっていた。
そして世界は彼を称えたが、彼は自分は称えられるような人間ではないといって寺に引きこもるのだった。




