番外編 K〇6の使い方
短編で先に書いた魔法の薬です。
用語などの関係で細部に多少の違いがあります。
錬金術を研究する私はある薬を開発する。
錬金術が本当に魔法だった時代の書物。
『大錬金術師ルカによる小さな星と聖杯の秘密』
世界中の人間の心の中にある、難解な暗号で書かれた書物。世界中の人間の心の中に暗号を解く鍵があるけれど、自分の本とは鍵があわない。
だから人々は運命の人を探している。
運命をつかんだものだけが読むことの出来る奥義書
私は半ばまで読むことができたが以降のページを開く事ができない。まだまだ人生の途中だからだ。
けれど人生を最後まで終えてしまえば、奥義を得ることはできない。死ななければ読めない本。錬金術師としては胸がおどる。
真の力を得る為には復活せねばならない。
私は錬金術の奥義を得るため、奥義書に書かれたとおりに世界を抜け出す薬を造った。それは無味無臭の液体だった。私には作り方しかわからない。
そこまでしか見えない。
正しい使用法は私が見た以降に書かれている。
試しに水に混ぜ飲んだものは、3時間とたたず意識を失い、二度と目をさまさなかった。
何かがたりない。二度と目を覚まさなかった女が私の運命の相手であり、私は彼女を失う事になった。私には『大錬金術師ルカによる小さな星と聖杯の秘密』は表紙さえも見えなくなっていた。K〇6には飲んだものの鍵と書物を破壊する力があった。
私は何を間違ったのだ、私の中で、運命の人を失った怒りと世界の小ささに対する怒りが混濁し始める。
私は書物が読めない事が悲しみから怒りに変わった。
私はこの薬を世界中に格安でばらまく。製作費はただ同然。無味無臭、症状が出る時にはもう治療も間に合わない。
どんな科学検査も通る。なぜなら本当にただの水なのだ。
魔法の世界つまり我々の住む世界の外の世界の水。カップに何も注がずに湧き出す水。
その薬を使われた者の情報が集まってくる。
私はサンプル集めの為にたくさんの人を犠牲にした。
けれど何もわからない。世界は無味無臭の水により混乱する。
そんな中運命の人が息を引き取る。目を覚まさなかったが息をし心臓は動いていた。それが今終わった。
私は魔法の薬を口にする。自然にそうした。
何の苦悩もない。少しの迷いもない。
こことは違う世界の人間の心が私の中に入って来る。
水の一滴がその世界の全ての人間だった。
その世界が生まれてから消えてしまうまでに存在する全ての人間の心だった。
私の心はそれに押しつぶされ薄まり、やがて消えてしまった。もう目を覚ます事は出来ない。
ようやくすこしだけ分かり始める。
きっとこれは世界の全てを知る事が出来る薬、全て知るという事は世界の外に存在する事、私はそれを誰にも伝えられなかった。




