小さな星と聖杯の秘密③
情報溢れの日が近づく、人が日常的に活動する地では情報溢れは起こらない。
我々は直前に森の中を進むことになる。草を切り分け進む道を作るためのナタ、そして身を守るための薬、
「そして男の子のあこがれ光線銃」私は光線銃を見つめ気持ち悪くニヤニヤ笑う。
彼女は全く興味がなさそうに、銃を持ち上げて私に話しかける。
「あこがれてるなら、この銃の名前くらい知ってるの?」と尋ねられたが私には知る由もない。男ならほとんど全員が目の前にすると気持ちが高揚するのだが、目の前にあるから高揚するだけであり、普段からそれを趣味として調べていたりなどはしない。彼女は光線銃を素早く構え、パルスモードで発射し、訓練用の的の真ん中にすべて命中させる。私は安全装置の 取り外しさえ苦戦する始末であった。
情報溢れ前日、森には15人で進む。我々若手男性がナタで道を開き進んでいく。観測者は私と彼女だがそんなことはかんけいない。道中ではさしたるトラブルはない。
他のメンバーは機材を設置し、テントを張ったのち、カレーを食べ帰宅する。到着してしまえば束の間のキャンプ気分を味わう。
大きな車は入らない、機材を運ぶための人員だった。
全員が大切な仲間だ。失敗は許されない。
情報溢れとは、この世界をつくったとされる女神の不具合であると信じられている。別世界との混線。
過去の科学者の言葉を思いだす。
我々の住むこの星をゴマ粒とすると、太陽は球技に使うボールくらいの大きさで2~30メートル程度先に存在する。我々の次の太陽は何千キロと離れ我が国を超え別の大陸までの距離になるという。
・・・宇宙とはなんと小さいのだろう、その大きさは有限であり、法則にしたがう事でかろうじて存在しているのだ。
いまや世界の有限性は次々と証明されてきている。時間も、空間もそれらの重なるパラレルワールドも有限でしかない。
また我々の星以外に知的生命体がいないことは僕の隣で星を眺める彼女により証明された。
「この宇宙に僕たち以外に誰も存在しない、見つめる星にはなんもない。みんな夢から覚めた。それでもやっぱり僕たちは星を眺める。有限でちっぽけな世界としってしまったけれど」私はそう言葉をつづった。
この世界を作ったものの存在が高い確証をもって示唆されつつある。ちっぽけなこの星を存続させらるために、この星と比べれば、有限ではあっても、比べることもできないほど大きな宇宙が用意された。この星の中で人の住む箇所などごく一部、そうでなければ、この星は人の住む地域や資源、水や空気さえ足りなくなる。それの宇宙版、この星に比べ宇宙がやはり大きな事が変化を和らげている。
それでもやはり有限でしかない。
彼女は僕の考えをみすかして
「森の中をちょっと進んだだけで、ひーひー言ってたのに?」といって大笑いした。
僕も足を揉みながらもつられて笑ってしまう。
僕は隣に座る彼女を抱き寄せる。ともに来た皆はもう帰った、あたりには誰もいない。潤んだ瞳で僕を見つめる彼女にそっと口づけをした。