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小さな星と聖杯の秘密⑧

聖杯はみている。


二度と目を覚まさない彼女は妊娠している事が分かる。そんなはずはない。世紀の実験がきまった半年前からはそうならないよう十分気をつけてきた。

彼女がさらに別の実験の為に誰かと?


先程の彼女の妹の言葉が気になってしまう。

才能のない僕に嫌気が差したのだろうか。

冗談でいっているのだと思いたくそう思っていた気持ちが少し揺らぐ


そうではなく実験の何らかの影響であってほしい。

僕はこの街で二度と目覚めない彼女と暮らす事をきめる。結果をこの目で確かめねばならない。


大富豪である彼女の両親は10年分の金を病院に支払う。目を覚まさない彼女が10年は生きられない事はみんな心では知っている。僕に払えない事はないけれど、僕は辞退をしなかった。


8ヶ月後、僕には娘が出来る、僕にも彼女にもそっくりだった。僕の心には彼女をこんなにした相手への復讐も彼女の為の無為の研究も頭から消えている。 

僕はこの娘を幸せにするために生きようと思えた。


彼女の両親、そして彼女の妹とは彼女の子が生まれた時と彼女の葬儀の時にしか会っていない。 娘の誕生日に過剰なプレゼントが届くばかりだ。

彼女は7年生きた後、静かに息を引き取った。


娘はお転婆に育っている。

僕は研究所を辞め家でできる仕事をしている。

一応小さな星と聖杯の秘密の研究はしているが趣味といえるレベルだ。


娘はあまりわがままも言わず。かけっこでは一番になり、テストは100点ばかり、絵を描けば金賞を撮る。

僕が娘を褒めると娘は嬉しそうにする。

甘いものが好きで小さい頃は暗い所が怖くて。

僕が「日曜日に遊園地に行こう」と言ってもあまり喜ばなかったのに雨で中止になると

「絶対行くって約束したのに、パパのウソつき」と言って泣く。代わりにアニメ映画に連れて行き次の週には遊園地に連れて行く事になった。

そんな娘だった。そして検査結果では僕とは血の繋がりは無かった。


14歳で彼女は妊娠する。

父親はいない。これは呪いなのだ。僕は目の前が真っ暗になる。きっと母も同じだった。実験の影響だ。別世界の過去がこちらの世界と混線した。


真っ暗の僕の前に僕にしか見えない真っ暗な書物として再び小さな星と聖杯の秘密が再び現れる。


僕にはすべてが分かるようになっている。この世界の事、外の世界の事。頭の中だけが擬似的に2次魔法使いになった。2次魔法使い等この世界の誰も知らない。あちらの世界の言葉。


娘はこれから呪われた子を産む。いや僕が呪いを植え付ける。そうしなければ死ぬ事がわかるからだ。呪いと加護は裏表。世界は滅ぶ。聖杯がその役目を終える。その時にすべての世界が終わる。

本当の世界の住人だけが外に出されるが、この世界はパラレルワールドの一つに過ぎない。消滅するだけ。

僕が天を睨みつけると、聖杯がビクリと震え数億の世界が壊れた。聖杯は僕の彼女と同じ状態だが魔術師だからそうなったままいきつづける。


僕はこれから生まれる孫の為に選択肢を用意するしかできない。

僕の孫が世界を滅ぼせば孫は助かる。

僕は孫が世界を滅ぼす事を祈る、娘も分かっている。我々だけが未来がみえている。


我々の住むこの星をゴマ粒とすると、太陽は球技に使うボールくらいの大きさで2~30メートル程度先に存在する。

我々の次の太陽は何千キロと離れ我が国を超え別の大陸までの距離になるという。

・・・宇宙とはなんと小さいのだろう、

その大きさは有限であり、法則にしたがう事でかろうじて存在しているのだ。

力を持たぬ神により作られた有限で不完全な我々の宇宙から抜け出さねばならい


孫が生まれて100日目、孫にはせめてもの願いを込めてかつての英雄と同じエリクと名付けた。

娘エリーと僕は聖杯が自らの中に世界を造った方法を使い孫の体に入る、孫は魔術師ではない、そこに世界はない。僕とエリーは消滅する。いや、呪いとしてのみ存在する。

聖杯が涙を流しているのがわかる。僕はすべてはお前のせいだとなじる。娘は聖杯を踏みつける。

聖杯が苦悶の表情を浮かべていることが見える。またたくさんの世界がそこに住む人々もろとも消滅したことだろう。

僕は満足して消えていった。娘はこんなことはしたくなかったが僕の為に演技をしていることくらいは当然気づいていた。




同じタイトルでほぼ同じ話が後半でてきます。

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