魔法のない時代④
某年某月某日 月の光で育つ樹木の森
「和音さん、ごめんなさい」目を覚まし落ち着いた私は人食い鬼と戦い取り乱したことを謝る。あのままでは共倒れになっていたかもしれないが彼女は私を見捨てなかった。結衣さんが食べられるところを私は見た。私の結界の制御が甘かったからだ。思えば私たちは3人の力量を確かめさえしなかった。今の魔法使いの中で上位という事はわかるけれど、上位の鬼には通用しなかった。
今は和音さんが結界を張っている。先ほどの事があるからわたしも周囲の警戒をしている。
「さて、ヘレンさん、これからの相談です。このまま探索を続けるのかいったん戻るのか、私も、多分結衣さんも、そしておそらくヘレンさんも今回の探索の事は信頼できる人物には話している。急にいなくなるわけにはいかないから。魔術師協会があったこところは協会が遺族との間を取り持ってくれたというけれど、今回は違います。恨まれるかもしれないからこちらから正体をばらす気はないけれど、行方不明は伝えないといけない。私たちには覚悟が足りなかった。何も成果を出せずに帰るくらいなら私は進むほうがましだと思っています。あとに続く人の事を何も考えない事と責められることですが。ついてきてくれますか」彼女は私にそう問い開ける。魔法が失われつつある時代とは言え、まだまだ大昔のように死が日常にあふれているというような時代でもない。だから死んだとは伝えない。それでも察することはできるだろう。私は弟にどのように伝えただろうか、危なくなったら逃げるからと説得をした気がする。危険があるとは知っていたけど死ぬなんて思っていない。結衣さんも和音さんもそうだ。弟と逆の立場だったらどうだっただろうか。両親はどう思うだろうか。和音さんはもう進むことを決めている。まだ月の光で育つ樹木の森のなかで伝えたのはせめてもの優しさだろう。進むことも、戻る事も現実から目をそむけた行為。けれどこんな心もちでは確実に大魔境は超えられない。「私は、戻ります。」と伝える事しかできなかった。彼女はうなずいてくれる。「それは困るなぁ」二人の座るテーブルそのふもとに1人の男があらわれる。
行き当たりばったりですいません。登場人物を一人にして話をすすめられるような力量がないのですぐに次の登場人物を登場させました。




